31 / 45
二章 再誕の殻
大いなる時
しおりを挟む
色褪せた景色。視界の端が焼けてゆく。
そう、燃えている。私の――私達の森が。
思い出す。この頃、私達はほんの数人だ。たった三人で森を――大地と竜国を、見守っている。私は私達の最後のひとりで、そのひとりも潰えようとしている。
けれど、特筆すべき出来事だとは思わない。その運命は、私達の意識が生まれる時から定まっているものだから。
しかし、運命とはままならぬもの。
豪炎のなかから、ひとりの男が飛び出す。
彼は私の体を担ぎあげると、その冥獄の火炎をものともせず走りだす。
彼の名は、グラニッツ。
そうだ。まだ岩より生まれし者どももふたりしかいない。そのつがいの片割れ。荒岩の面構えながら、己から飛びだす感情に素直な、まさに苔むした岩のような男だ。
景色が色を取り戻す。
月のない夜。火災の火が、小川のあぶくのような空の雲を照らしだす。
彼は私が見つめていると、にっこりと笑う。
「よかったな」
そうか、と私は悟る。
私達が根を張るべきは、森ではないのだ――
私達、たった三人が永劫を生きるべきではないのだ、と。
その日、分岐した運命が私に告げる。
「私達は、あなたにこの身を捧げましょう。私の永劫を引き裂いて、新たな私達を芽吹かせましょう。あの森の草の数に、土粒の数をかけただけ芽吹かせましょう。そしてどうか、すべての新芽を、あなたの肩の上に根づかせてください」
「――なぜだ。それだけのことでもなかろう」
「私達は“大いなる時”に命じられています。森と竜をみつめ、過ちをただせと」
「なんと――! ではひとふりの枝とは、汝のことか!
……もう、あきらめかけておった。そうか。そうか、ああ――」
彼は私を抱きしめる。その肌にこすられると、私が傷つくのも構わずに。
知っている出来事なのに、ふと胸が温かくなる。
「いいだろう。汝にそれだけの覚悟があるというのなら、我もその意志にこたえなければなるまい。我らも今はたったふたつの岩に過ぎんが、今に十に、二十に、百に増やそう。その上に五百を五百回をかけた汝らを養おう」
かくして、私達の運命はともにある。
ようやくわたしは理解する。理解がわたしを覚醒させる。
わたしの幼年期はおわり、私は私達となる。
そう、燃えている。私の――私達の森が。
思い出す。この頃、私達はほんの数人だ。たった三人で森を――大地と竜国を、見守っている。私は私達の最後のひとりで、そのひとりも潰えようとしている。
けれど、特筆すべき出来事だとは思わない。その運命は、私達の意識が生まれる時から定まっているものだから。
しかし、運命とはままならぬもの。
豪炎のなかから、ひとりの男が飛び出す。
彼は私の体を担ぎあげると、その冥獄の火炎をものともせず走りだす。
彼の名は、グラニッツ。
そうだ。まだ岩より生まれし者どももふたりしかいない。そのつがいの片割れ。荒岩の面構えながら、己から飛びだす感情に素直な、まさに苔むした岩のような男だ。
景色が色を取り戻す。
月のない夜。火災の火が、小川のあぶくのような空の雲を照らしだす。
彼は私が見つめていると、にっこりと笑う。
「よかったな」
そうか、と私は悟る。
私達が根を張るべきは、森ではないのだ――
私達、たった三人が永劫を生きるべきではないのだ、と。
その日、分岐した運命が私に告げる。
「私達は、あなたにこの身を捧げましょう。私の永劫を引き裂いて、新たな私達を芽吹かせましょう。あの森の草の数に、土粒の数をかけただけ芽吹かせましょう。そしてどうか、すべての新芽を、あなたの肩の上に根づかせてください」
「――なぜだ。それだけのことでもなかろう」
「私達は“大いなる時”に命じられています。森と竜をみつめ、過ちをただせと」
「なんと――! ではひとふりの枝とは、汝のことか!
……もう、あきらめかけておった。そうか。そうか、ああ――」
彼は私を抱きしめる。その肌にこすられると、私が傷つくのも構わずに。
知っている出来事なのに、ふと胸が温かくなる。
「いいだろう。汝にそれだけの覚悟があるというのなら、我もその意志にこたえなければなるまい。我らも今はたったふたつの岩に過ぎんが、今に十に、二十に、百に増やそう。その上に五百を五百回をかけた汝らを養おう」
かくして、私達の運命はともにある。
ようやくわたしは理解する。理解がわたしを覚醒させる。
わたしの幼年期はおわり、私は私達となる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる