あの記憶が告げる

名谷葛

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プロローグ

高校生になって感じたことは中学生となんら変わりは無いことだ。
皆サーカスの劇団員のように高校生らしい演技をしているんだ。
だから周囲と変わりはなく同族だと認識する。
それでいて僕は幼いと劣等感を感じる。
その劣等感が僕を悪夢とも吉夢とも言えない夢へ誘う。
誘われた後に目が覚めた。
「おはよう。」
彼女が柔和な微笑を含みながら言う。
彼女の瞳を見て挨拶を交わす。
それとなく血色の悪い彼女の手に僕の平凡な手を重ねようとするがすり抜けてしまう。
自分の記憶に齟齬が生まれすぐさま現実に引き戻される。
現実には此処に彼女は居ないと記憶が告げる。
陰鬱な気分で閉め切った窓を開けると潮の匂いと乾ききった風が僕を打ち付ける。
「朝だね。」
誰も居ない無彩色な部屋で呟く。
その呟きは何かに跳ね返るでもなく風向に逆らい、波に逆らいどこか遠くへ流れて行く。
この言葉がきっと、何処かへ行ってしまった彼女に届けば良いと願ってしまう。
願わずには要られない。
 
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