憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。

Q矢(Q.➽)

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兄と叔父


 いや待って待って待って。
 マジで待って。

 あんなにお願いしたよね?いるぜ、"彼"。何なら俺の隣で寝てるぜ。

「何でこんな事に…?」

 あの時"遣い"が了解、相性悪いしね!任せてピ!みたいに訳知り風に言ってたの、何処のの"彼"だよ…。

 俺がもう絶対に会いたくないと願った彼は、まんまと俺の双子の兄に生まれてしまった。更に言わせてもらうなら、俺は1週間前にこの世に産まれ落ち、本日退院して今生の我が家に到着したばかりである。
  産まれたてで目も開かない赤子ではあるものの、わかります。
  間違いない、隣のこれは"彼"だろ…。これは一体どういう訳だ?
神の"遣い"とやらよ、この状況収拾どうするんだ。

 既にどうとも出来る気はしないが…。

 目が開く日が怖い。成長が怖い。いや新生児だから昔の彼の姿が目に入る事は無いのはわかるけど何かヤダ。
 彼に俺みたいに記憶と自我があるとは思えないけど何かヤダ。
 何がヤダって、何時から俺を諦めてたのかとか、もしかして俺と一緒にいた時から裏切ってたのかとか、何で待っててくんなかったのかとか、よりによって何で妹だったのかとか、あらゆる負の感情がループして情緒不安定になりそうなのだ。
 いやなんならもう今ちょっとやばい。

「…ぉぎゃぁ…」
「あら~、慎ましい泣き声。
この子育てやすいかもよ~」

 目が開かない上、思わず漏れ出た泣き声に反応したのは年配の女性の声。父方か、母方の祖母ってところだろうか。

「でも、大人しすぎません?」 
「こっちの方も少し大人しいわよね。よく寝てるし。双子だから性格も似てこんな感じなのかしら?」

…そうだな。産まれたてでも自意識のある俺はともかくとして、彼は温厚で物静かな性格だった。いや赤ん坊にそれが反映されてるかはわからないが。

「まあ、良いじゃないか、どっちでも。俺はやっと我が子達に会えて嬉しいよ」
「こんな時に赴任先で足止めなんてついてなかったわよね。
結局、会えるのが今日になっちゃうなんて」

 どうやら声の主は 祖母っぽい人、母、父。
 父はどうやら仕事の事情で、今日初めて産院に来たらしく、初めて見る俺と兄を前にして若干緊張、興奮という様子。

「抱っこさせてくれ」

 今度はいやに若い男性の声が聞こえてきた。一体何人居るんだろうか。

「大丈夫かあ?可愛い甥っ子達、落とすなよ~」

 父らしき男性の声が冷やかすようにそう言っている。という事は、この若そうな男…少年?の声の主は俺達の叔父か。父か母何方の弟なんだろ。
 何となく父方のような…と思っていると、ベッドから抱き上げられた浮遊感。 温かい腕の中、真っ暗な視界、頬にあたる人の吐息。

(…あれ?)

 なんだろう、何か…あれ?
この人…って…、
 え、でも"彼"はさっき俺と一緒に…。

「やっと俺のとこに戻って来たね、〇〇」

 その呟きは小さく、多分俺にしか聞こえてはいないような音量だ。

(…えっ?)

 俺を抱いている少年は確かに前世の俺の名を呼んだまさか、この男が"彼"なのか。

 じゃあ俺、間違えた、のか?

「ずっと待ってたよ、この日を」

 どうなってるんだ。だったら俺と一緒に産まれてきたアレは、誰なんだ?











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