お姫様に、目隠しをして

Q矢(Q.➽)

文字の大きさ
9 / 19

9 今日は何の日 (伊吹)

しおりを挟む


崇くんの部屋はやっぱり今日も殺風景だ。





「ほら、いぶ。上着。」

「あ、うん。」


崇くんが左手を出して来たので、僕はブレザーを脱いで渡した。
それを崇くんはハンガーラックにかけてくれる。
崇くんといる間、僕は何もしようとしてはいけないらしいので、それをぼーっと見てるだけなんだけど、決して僕が怠け者な訳じゃない事だけはわかって欲しい。

崇くんは意外と世話好きなんだと思う。だけど一人っ子だし、動物は早く死んじゃうからもう飼いたくなくて、だから僕なのかな。
同じ人間なら、病気や事故や、何かない限り早々死なないから。

(セフレ兼ペットだもんね…。)

卑下してるんじゃなくて、事実そうなんだと思う。
崇くんの口から、そうだと聞いた事ないけど。

その後崇くんは何時ものように僕を自分の部屋着に着替えさせて、ソファに座らせた。

「いぶ、ちょっと待ってろ。」

「うん。」


崇くんがテレビをつけてから部屋を出て行って、僕は大人しくソファの上で体育座りをした。
そこからぐるりと部屋の中を見回す。
崇くんの部屋はいつ来ても片付いていて綺麗だけど、寒々しい。置いてある家具や家電は高そうなんだけど、何時迄も真新しい。


「いぶ、ちょっと開けてくれ。」

ドアの外から崇くんの声がして、僕はソファを降りてそこに駆け寄って、開けた。

「ごめんな。思ってたより持ってくるものがあったわ。」

「うん。言ってくれたら僕も手伝ったのに。。」

「良いんだ、いぶは。」

崇くんはそう言って、持っていたトレイをテーブルに置いた。
大きなオードブル料理の容器と、チキン。1.5Lのコーラとグラス、カトラリー、それからケーキ。

それをトレイから下ろしてテーブルの上に並べて、ケーキの箱を開く。
でっかいスクエア型のケーキは、生クリームじゃなくてチョコだった。

「チョコにしたんだね。」

「だっていぶ、チョコの方が好きだろ。」

「…崇くんのお誕生日なんだからさ…。」

「俺はそんなに甘いもんはすきじゃねえからなんでも良いし。」

これではまるで僕の誕生日のようだけど、ケーキの上にはちゃんと、お誕生日おめでとうそういちろうくん、と書いてある。
パティシエさんに小さい子だと思われてるのか。家政婦さんの伝達ミスか。

僕が聞くと、崇くんは少し苦々しい顔をした。

「いや、ガキの頃からずっと同じ店だからそれはない。
そこのオッサン、親父の幼馴染みだから何時もそうなんだよ。」

嫌そう。
高3なのにそういちろうくん、だもんね。そりゃ嫌か。

思わずクスッと笑った。

「いぶ。」

「ん?」

ケーキから目を上げると、崇くんが僕を凝視していた。
しまった。こんな事、笑われるの嫌だよね。怒ったのかも。

「あの、崇くん、ご…」

「いぶ、可愛い。可愛いな。」

怒られなかった。
怒られなかったけど、ぎゅっと抱き締められた。
頬をスリスリされた。
この流れは。

(…するのかな…。)

ご馳走とケーキを前にして、またセックスするのかも、と僕はちょっとガッカリした。
まあ、何時もの事だから今更なんだけど。

諦めの良い僕は、力を抜いて崇くんの肩にもたれかかった。

でも。


「ほら、いぶ。腹減ってるだろ、食え。」

「えっ、あ…うん。」

崇くんは僕をソファにちゃんと座らせてくれて、グラスにコーラを注いでくれて、お皿に数種の料理を取り分けてくれて、フォークでそれを口に運んでくれた。

(……???)

「…おいしい…。」

「そうか。もっと食え。次はどれが良い?」

「……その、黄色いの…。」


甲斐甲斐しく給餌を始められてしまった。いつもながら、僕はヒヨコか。

「今日は嬉しい。
誕生日にいぶがいる初めての年だ。」

「……?そうだね?」


崇くんは、誕生日ってずっと1人だったのかな。

「友達とか、あの…仲間の人達は?」

「アイツらをウチに呼んだ事なんかない。
俺の部屋には いぶしか入れた事はない。」

「えっ、そうだったの?!」

「?当たり前だろう。ほら、飲み物。」

流れるようにコーラを飲ませてくる崇くん。最早介護。



その日崇くんは、言ってた通り、21時には僕をバイクの後ろに乗せて送ってくれた。

そしてそれが、出会ってから初めて、僕らがセックスしなかった日だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました

天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。 そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。 はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。 優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。 「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。

処理中です...