元・公立高生徒会副会長は王道学園に馴染めない

Q矢(Q.➽)

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4 元副会長、食堂イベントに遭遇。

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2人は僕の何を見てそんな事を思ったのかを聞いてみる。
とても気は進まないが、後学の為に。
その上で、改善出来そうな事ならしたい。


「何か唇がいやらしい。」

「チラ見えする舌が誘ってくる。」

「何か伏し目が切なげで良い。」

「視線の動かし方が股間に来る。」

「何か手つきというか、指がえろい。」

「それを言うなら腰つきの話にもなってくるぞ。」

「…………。」


聞くに絶えない。

早速暗礁に乗り上げてしまった。
自力で何とか出来そうな事がひとつも無い。
単なる食事シーンでそこ迄言われたら、僕はもう隠れて食事するしかなくなる。
事態はことの他深刻だったようだ。
何故だ。
僕は一昨日迄、そんな事を言われた事は無かった。
此処に来たら何故急にそうなるのか。


「君達は…同性愛者なのか?」

失礼かもしれないが、ハッキリ聞いておく方が良いと思った。
だが2人はふるふると首を振る。

「いや、俺らは元々は異性愛者だよ。だけどまあ……何ていうのかな。
この学園の校風というか、悪習というか、そういうのにアテられて、つい…?」

「そうなんだよね。
男しかいないからってのもあるのかなあ。
男でも良いかなって気になって来るんだよね。
実際、カップルも多いし。」

「期間限定って感じで楽しんでる連中もいるしな。」

「実際、自分でするより相手がいる方が気持ち良いしねぇ。」

「……そうか。」


…まあ、僕だって偉そうに他人のセクシュアリティにとやかく言える立場ではないし、言う気も更々無いが、自分に降りかかる可能性があるというなら話は別だ。
今すごく頭を抱えたい。

伯父さん、貴方はこの生徒間の性事情を知っていて僕を呼んだんでしょうか。
今度会えたら問い質さねば。
因みに伯父は、ヨーロッパに行っていて明後日迄来ないらしい。
独身貴族は優雅で良いですね、と思った時、ふとある考えが頭を過ぎった。


…待てよ?独身貴族…。
要伯父さん、40台のイケオジ、婚姻歴無し…学園出身…。

まさか。

突如降って沸いた疑惑と、次々符号していってしまいそうな点と点。

…………いや、みなまで言うまい。
そこは人それぞれだ。

問題は、セクシュアリティはおそらくヘテロであろう僕、性格的にも割り切った遊びは出来そうにない自分に、その悪習が振りかからないか否かだ。

昨日みたいに無理矢理迫って来たりする輩が他にもいたら、僕は詰むのでは?

鯖をつつきながら頭の中は忙しない。

そんな僕を眺めながら2人は言い放った。


「特に外から来た、まっさら真面目そうな子って美味しそうに見えがちだからさ。」

「平凡だったり地味系だと余計に処女っぽくてすぐ誰かのお手付きになっちゃうよな。」

「編入生なんてレアだから大体生徒会の誰かが手を付けるって聞いた。」

「…………。」



ーーーーー詰んだ。



編入2日目で早くも詰んだ。

いや、何なら昨日神薙副会長に出会った瞬間には詰んでいたのかもしれん。
何かもう鯖の味もわからない。


その時、ずっと心地良いBGMと化していた生徒達のざわめきの質が変わった。


「生徒会だ…。」

「獅子神会長迄もが姿を現すなんて…。」

「御子柴様も真面目に授業出たんだな。」

「副会長、相変わらず綺麗だなあ。」

「犬飼様、いつ見ても惚れ惚れするお体だな。」


ざわめきの中から聞こえてくるそんな説明的なセリフで大体の生徒会構成メンバーはご想像いただけただろうか。

僕が昨夜の電話で叔母に聞いていた内訳とはちょっと違うな…と思っていたら、その高身長メンバー達の後ろから、少し小柄な双子が着いてきていた。

「庶務の双子ちゃんも一緒だ!」


なるほどな。

これで叔母の言葉は寸分違わず的中したという事になる。
恐るべし。

これがそろそろ天然記念物になると言われる王道生徒会というやつか。

となると、その先の予言じみた言葉も…。




「やあ、佐藤君。昨日ぶりだね、会いたかったよ。」



来たか、腹黒副会長。



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