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後
しおりを挟むそれから時々、兄貴は俺をそのアパートに連れ込むようになった。
エアコンを付けても、冬は寒く夏は暑いそのアパートの一室で、俺は一晩中、下手すると2日2晩に渡って抱かれ倒したりした。最初は勿論、逃げていた。でも兄貴の奴、すげぇんだよ。俺が何処に居ても探し当てて来るんだ。ダチんちに居ても、幾つかある溜まり場の何処に居ても。
今にして思えば、もしかするとGPSか何か付けられてたのかなあと思うけど、当時はとにかく恐怖だったわ。会う毎に目つきもイッちゃってたから、逆らったらあれ以上何されるんだろ、って怖かった。それに…さ。こんな事言ったら変態かよとか言われるんだろうけど、何か気持ち良くなってきてたってのもある。
イキッてた割りに女の子との経験も未だの童貞だった体に、先にオトコの味を教え込まれてさ。女の子相手だと能動的に動いてサービスしなきゃなんないイメージがあったけど、男相手に受ける方だと、そのサービスを受ける側になるじゃん。全身くまなく愛撫されてさ、大事なものみたいに扱われて、舐め回されて、フェラされて、感じさせられて…まあ、最終的にはケツに兄貴のチンコ挿れられるんだけどさ。何時の間にか俺、ソレでも気持ち良くなれるようになってた。
3ヶ月も抱かれてたら、すっかり全身性感帯みたいに感度上がってさ。
何時の間にか、血の繋がった兄貴にヤられてるんだって事にも麻痺しちゃってた。快楽に溺れると脳みそバカになるんだよ。下半身でしかもの考えらんなくなって、マジであの時の俺はセックス覚えたての猿だったわ。思考を放棄っての?深く考える事を捨ててた。でも、俺をそんな風にした兄貴はそうじゃなかったみたいなんだよ。
なまじっか頭の出来が良いと、そうなっちまうのかな。
俺を初めて犯してから半年目、兄貴はあのアパートの部屋で首を吊ってた。
自筆の遺書があって、整った字で俺への謝罪がツラツラと。つか、やめてって。それで俺と兄貴の関係が親父にも後妻さんにもバレたんだからな。勿論、警察にも。
遺書もあったし、目立って不審なとこは無いって事で、兄貴はジ〇ツって事で片付いたけど、優秀な兄貴を亡くした親父達の落胆ったらなかったな。信じられない事も言われたよ。本当はお前が誘ったんじゃないのか、って。
あのさ。
気が動転してても、言っちゃいけない言葉ってあるよな。
『アンタらを避けて家に寄り付かなくなった俺をしつこく探し出したのは兄貴の方だぜ?あの部屋に俺を連れ込んだのも兄貴。大体さ、俺、彼女もできた事ない童貞だぜ?性体験一切無かった。』
そう反論したら、親父はハッとした顔になって黙った。男が自分で童貞申告した事を哀れと思ったのか、言っちゃいけない事に気づいたのかは知んね。でも、どんどん青ざめてくその顔を見てたら、何だか余計にイラついてきて、言わずにはいられなかった。
『そもそもさ、何で男の俺が兄貴を誘惑したって発想が生まれる訳?そうまでして俺らを悪者にしたいの?親父の中の俺って、どんだけなんだよ。全ての原因作ったの自分だって、未だに自覚無いんだな。』
胸の中に溜めてた気持ちをぶつけたら、止まらなくなって次々に言葉をぶつけた。本当はさ、最愛の息子を亡くした親父や後妻さんにこんな事、言いたくなかった。でも、さ。
『親父が祖父さんに逆らえてりゃ、母さんと結婚して俺が生まれる事もなかった。兄貴だって、兄弟の俺に変に拗らせて強姦する事もなかったんじゃねーの?
わかってないみたいだから言うけど、俺、被害者だからね?』
兄貴の遺書には、自分が弟の俺に何をしてきたかが綴られてるのに、真っ先に出てきたのは俺が悪いんじゃないのかって疑う言葉。気遣いの言葉じゃなかった。親父達の中では、勝手にジサツしたレイパーの兄貴の方が大事で、力づくで犯された俺は全然大事じゃなかった。
ふざけんなって思うじゃん。
そりゃな、何度も体を重ねて、最近じゃ俺も楽しんではいた。でもそれって俺が悪いのか?慣らされた俺が悪い?じゃあ、慣れて最終的に気持ち良くしてやれば最初の罪は消える訳?違うだろ。
底辺高校の学生の俺だってわかる。俺が悪くないって事くらいは。
一息に言った俺の言葉に、親父は初めて俺に痛々しそうな目を向けた。
『……すまない。そうだな、俺のせいだ。まさか晴一がお前にそんな事をしていたとは気づきもせず…本当に悪かった。』
親父はやっと謝った。
だからって、俺の気持ちが晴れる事はなかったけど。
兄貴は罪悪感で勝手に死んだ。それは俺のせいじゃない。でも、兄貴が死んだ事で俺の胸にも風穴が開いた。
別に好きじゃなかった。身勝手に俺に気持ちと体を押し付けてきて、俺が最初、どれだけ傷ついたかなんて誰にもわからない。避けても逃げても追って来て好きだと迫ってくるんだから、もう慣れるしかなかった。
だって…兄弟が相手だなんて、誰が助けてくれんの?誰に言えば良いのかわかんなかったんだ。俺が女か、それかヤンチャしてなきゃ、警察にでも駆け込めたのかな。
兄貴が死んでも、俺は葬式にも出なかった。親父も後妻さんも、金パで外聞の悪い息子が居るのも嫌だろ。それに、被害者が加害者の葬儀に出るのも変でしょ。逆ならともかくさ。正直、兄貴の遺書を読んだ後も後妻さんは俺に言葉の一つも掛けなかったし、やっぱり俺を恨んでるのかもって思ったしな。いや、もしそうなら完全に逆恨みなんだけど、大事な息子を亡くしたらそんなもんかなって思うし。
そんな訳で、兄貴の葬儀の日も俺は何時も通りに仲間と溜まり場に集まってた。もう、邪魔しに来られる事も、無理矢理手を引っ張られて連れ帰られる事も無いんだなあ、なんてぼんやり思ったりして。注意力散漫だったんだろうなって、今なら思う。
その30分後だよ、俺がバイクで事故ったのは。死んでみたものの、やっぱり寂しくなった兄貴が俺を連れて行こうとしたのかな。
搬送先の病院ので一命を取り留めて、転院した病院で目覚めた時には、俺は兄貴とは別の男に股間見られてた。実は紙オムツ替えられてる時に意識が戻ったんだよ。矢島はオムツ替えるだけじゃなく、ついでに毎回俺のチンコやケツの穴を弄ってたんだ。最初はボーッとして、何してんだろって感じだったんだけど、目覚めて数日すると少しずつ状況が把握出来てきた。
俺、意識無い間、矢島にケツに突っ込まれてたらしい。
びっくりだよね。犯罪じゃん。まあでも、言葉どころか音すら発するのが難しい俺の口じゃ、そんなツッコミも出来なくて。俺は引き続き、爽やか変態犯罪者矢島のオモチャ役を継続する事になった。矢島の方はオモチャなんて言葉は使わないし、俺を丁寧に大事に世話してくれるけど、何の抵抗も反応も出来ない人形みたいな奴を相手にしてんだから、実質オモチャと変わんなくね?って俺は思うわけ。
でもおかげ様で最近は多少の意思の疎通が出来るくらいには回復したから…ペットくらいにはなったかもな。
で、今日も矢島は俺のとこに来て、俺の体を清拭した後、頬や額にキスをしてきた。
チラッと胸ポケに付けたナースウォッチを確認して、ポケットから小さな容器を取り出す。中身はローション。それを俺の尻の穴に塗りたくって、指で解す。毎日みたいに使われてるから、柔らかくなってて解すのに時間はかからない。指が2本入るようになると、大体はもう挿れて大丈夫。矢島のは兄貴のよりは細いから楽勝。その代わり長さがあるから、イイとこ突いて来る。反応鈍ってるチンコが思わず半勃ちになるくらい。ムズムズはするんだよ。何となく、気持良いって感じはする。確実に前よりもそれがわかるようになってるって思う。
「……ふ、ん、ッ」
俺が少し鼻を鳴らすと、矢島は興奮したようにウェアのパンツを下着ごと下ろして自分のチンコを出した。すっかり完勃ちのソレを右手で扱いて、やっぱりポケットから出した四角いパッケージを歯で噛み切って取り出したゴムを装着。亀頭をつぷりと俺のアナルに当てて、押し入ってきた。
「…っ、はあっ…やっぱり晴彦君のナカは最高だなあ…」
「……ン、ン…」
ベッドに乗り上げて、俺の両足を両脇に抱えながらゆっくり前後に抽挿を始める矢島。ギッギッと鳴るベッド。個室で奥だからよほどドアに耳を当てるかしなきゃ聴こえないだろうけど、それでも昼間っから大胆だよね、この看護師。目を閉じてマジで気持ち良さそうだけど…ホントかなあ。まあ、今は意識があるから…でもまだ意識が無い時期なんか、緩くなかったのかなあ。なんて事を思ってる内に、10分くらい腰を振られてて、ゴム越しに射精したらしい矢島がチンコを引き抜いた。今日もたっぷりの量を出した矢島はご満悦で口を縛ってティッシュで包む。それから備え付けのチェストの引き出しを開けて小さな黒いポリ袋を出し、ティッシュに包んだゴムを入れて口を縛り、またポケットに入れた。何時も思うけど、それ何処で捨ててんの?
下着とウェアを直してから、俺のケツを綺麗に拭いて後始末をした矢島は、俺に紙オムツを履かせて入院着を綺麗に直した。それから、布団を掛けてくれて、お疲れ様、と言いながら俺の前髪を手で上げて額にキスをした。
その後、水を飲ませてくれてから、
「また後で見に来るね。」
と言って、ニコニコ笑いながら病室を出て行った。
それを見送ってから、俺はフゥ、と息を吐く。
テレビ台の横に置かれたカレンダーに視線をやって、曜日を確認。
(今夜は宮永先生の宿直の日だっけ……。)
うん、実はね。寝たきりに近い状態だった俺を熱烈に愛してて、一生面倒を見たいって言ってる男はもう1人居るんだ。
宮永 航っていう、この病院の医師。これまた高身長のすんげえイケメン。どうやってでも俺を助けてみせるんだってさ。宿直の日に俺の部屋に来ては、俺を抱きながらずっと愛してるって言うんだ。
俺、男にモテる何かでも出してんのかな。アハハ。
だから、ね、兄貴。
俺、まだ当分、アンタのとこには行けないみたいだよ。そんな訳だから、気長に待ってな。
ひとりぼっちのあの世でさ。
俺、アンタの事……
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