αの共喰いを高みの見物してきた男子校の姫だった俺(α)がイケメン番(Ω)を得るまで。

Q矢(Q.➽)

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会いたいと思う気持ちは (弓月 )

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「嘘みたい、彼女いないの?」


しなを作りながら俺の腕に腕を搦めながら胸を押し付けてくるのは同じゼミの1年先輩の女子だ。

こんなのがいるならやっぱり来年からにしたら良かった、と後悔する。
そして今日の飲み会もやめときゃよかった。
全く来ないよこんな雑然とした大衆居酒屋なんて。

それに俺にはやっぱり、女がごちゃごちゃいる席は無理だ。
なのに何故取り囲む。 
香水と化粧と女の匂いが酒の匂いと混ざって臭くて気分が悪くなる。

それを堪えて女の腕をやんわり振り解きながら、

「そうですよ。

興味が無いので。」

と答えると、

「ええ、それは周りに良い女がいなかったからじゃない?」

と言われた。

確かに女はいなかったなあ、と思う。
でも俺に傅く男なら山程居たけどな。

「そうですねえ…。」

「やっぱり!じゃあ私が、」

「自分が俺に釣り合うと勘違いして擦り寄ってくるような身の程知らずな女性は確かにいませんでしたね。」

「……。」

にっこり微笑みながらそう言うと、今迄纏わりついていたのが嘘のようにすす~っ、と離れて大人しくなった先輩。

へぇ。空気は読めるんだ。
意外。

その場にいた女性陣は皆、波を打ったように静かになり、男連中は少しの間俺に見蕩れた。
だけどそれも一瞬なんだよなぁ。
殆どの奴は直ぐに我に返りやがる。

はぁ、面倒臭いなあ…。

帰ろっかな。
マジで場の匂いで胸がムカムカしてきて、吐きそう。

それに本人不在の方が色々陰口も言い易いだろう。

俺は幹事の先輩に金だけ払い店を出た。



店員の声に送られ外へ出る。
冷たい外気がこんなに心地良いものだとは。

俺は心底ホッとした。


雑居ビルだらけの視界から暗い空を見上げると、痩せた月が見えて、何故か切ない気持ちになる。

ああ、こんな夜は、



( 会いたい、なあ…。)


あの古い喫茶店に行って、温かいカフェモカをのみながら忠相さんの姿を眺めていたい。

でもそれをしてしまうと、きっと今度は好きになる気持ちが再燃してしまうのは目に見えてる。
歯止めが利かなくなる。


想う人がいる人の気持ちを手繰り寄せるのは大変だ。
俺は自分でも気に入った男とは軒並み寝てきたビッチの自覚はあるけど、それは俺を口説いてきた相手だけ。
相手のいる男に自分からモーションをかける程屑ではない。
既に誰かが心にいる相手にハマるような不毛な片想いなんて真っ平ごめんだ。


だからあの人の姿を見る訳にはいかない。早くこの気持ちを鎮火させて、今度は相手がいなくて俺に靡いてくれそうな人を好きになろう。

でも、親の求めるような相手は、好きになれそうに無いのがジレンマだな。



居酒屋前の歩道を駅に向かって歩く。
繁華街の中だから人が多くてこの時間は酔客もいて歩き辛い。
何かの勧誘なのか、キャッチなのかが、やたらチラ見してくるけれど、声をかけてくる事は無かった。
ああいう連中は、αと思しき人間には声をかけるのを躊躇う事が多い。
それが賢明だ。

αなんて人種は、背後に何をくっつけてるかわかりゃしないんだから。



もう直ぐ駅、という所で肩を叩かれた。

勇気あるキャッチだな、と振り返る。



「あの、お兄さん、ウチのお客さんですよね。」


何で、此処に忠相さんが…。

一瞬、ぽけっと少し背の高い忠相さんの顔をみつめてしまった。

…どれくらい振りだろう、この涼やかな目を見るのは。


「えっ、と、違いました?


おかしいな、あんな綺麗な人そんなにいるもんじゃないと思ったのに…。

人違いならすいませんでした。」


気不味そうに頭を下げて立ち去ろうとする忠相さんに、ハッと我に返る。

…どうしよう、このまま去らせる方が良いんだろうけど…。
でもわざわざ俺を見つけて呼び止めたって、何か用事があるのかもしれないし。

葛藤の末、俺は心を決めた。


「あ、すいません。覚えててくれたのが意外だっただけで…。
喫茶店のスタッフさんですよね。」

「あ、やっぱりお兄さんですよね?」


俺が本人だとわかって忠相さんは安心したように、少し表情を緩ませた。
え…可愛い。カッコ可愛い。

「後ろから見えて、お兄さん目立つから…。つい呼び止めちゃってすいません。」

「いえ、全然。
お元気でしたか?」

「はい。
俺なんかより、お兄さんの方が…。
最近、いらっしゃらないから何かあったのかと。

…余計なお世話ですよね、すいません。」

忠相さんがこんなに喋るのを初めて聞いた俺はポカンとしてしまった。

無口だと思ってたけど、意外と…。

すると忠相さんも俺の気持ちをさっしたのか、少し恥ずかしそうに

「すいません。」

と言って半歩ばかり退いた。
ヤバ、気を使わせてしまった。

「いえ、そんな。
気にしていただいてたなんて、嬉しいです。」


うん、本当に。意外だった。
この人の中で、俺って気にかける存在だったんだ。
無論、店の客としてってだけなんだろうけど。

忠相さんは俺が笑った事でほっとしたのか、釣られたように少し微笑んだ。

う、胸に刺さった…!!

だから、少し欲が出た。
ほんの少しだけだ。


「お時間大丈夫なら、そこのカフェで少し話しませんか?」



本当に、ほんの少しだけ。





    
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