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しゅっ しゃっ
本日も僕は自分の部屋の姿見の前で自慢の爪を出して、敵を一発で仕留める為の必殺パンチの素振りにいそしむ。
立ち上がって歯を剥き出して、鋭い牙もアピール。精一杯背伸びして、自分の優位を示すポージングの練習も欠かさない。
これ全部、僕の幼稚園の頃からの自主トレ。
何の為かって?
決まってるだろ。
不逞のやからに遭遇した場合、おのが力で自分の身を守る為だよ。
なんたって将来的には自分だけじゃなくて、僕の大事な番も守らなくちゃいけないしね!
僕の住むこの世界には純粋な人間と、人間なんだけど様々な動物の特性を持って生まれた人間達がいる。
哺乳類を始めとして、鳥類、両生類、爬虫類、陸ではめっちゃ生き辛そうに思えて心配になっちゃう魚類。小動物から大動物まで。
そしてそれらにも当然性別がある。男と女。そしてそれぞれが更にアルファ、ベータ、オメガという第2性別を持つ。つまり、性別が6つあるって事ね。
え、ややこしい?僕もそう思う。何もここまでややこしくしなくてもね?
でも、ものっすごい大昔は、ベータの男と女しかいなかったんだって。ラクそ~。アルファとオメガってのは、何時の間にか生まれてたベータの突然変異体で、でもそれが何時ごろから存在してたのかは、偉い学者先生達にもはっきりとはわからないらしい。
アルファとオメガ。彼らは生殖可能な年齢になってくるとそれぞれに特有のフェロモンを放出してヒートと呼ばれる発情期が来るようになる。因みにオメガは男女どちらでも妊娠出産が可能で、男性オメガも殆どは出産する。
そんなアルファやオメガだったけど、やっぱ突然変異だったから、超絶数が少ない。アルファは…まあ増減あるらしいけど、今は少なくて全人口の7%くらい。オメガは更に少なくて、3%くらい。両方合わせてもやっと10%って、何だか切ないよね…。
でもアルファは突出して綺麗で賢かったから世界の頭脳として尊敬と畏怖を一身に集めてる。だから世界各国の政府は、自国にアルファをどれだけ擁するかに頭を悩ませてるんだって。将来の国力に関わってくる事だもんね~、仕方ない。
そんなアルファと反対に、オメガは見た目は綺麗な事が多いけど能力的にはベータ以下って個体が多かった。でも、それでもオメガは大切にされた。何故なら、オメガはベータよりもずっとずっと、優秀なアルファ達の子供を産む能力があったからなんだ。
生殖って点に於いて、アルファはベータよりもオメガと断トツに相性が良かったんですね!
何せ、アルファとベータ間に待望のアルファが生まれる確率なんて、統計とか見たらほぼゼロに近いもん。なのに、アルファオメガ間だと、生まれた子は90%以上の割合でアルファなんだよ?すごくない?オメガ、すごくない?
しかも、アルファとオメガの間では番(つがい)っていう、結婚よりもずっと深い契約が結ばれる。
結婚はさ、紙切れ1枚で解消出来るけど、番の解消は命に関わるかんね。簡単には解消できない。
まあ、でも滅多にいないって聞くけど。
番になると、お互いのフェロモンしかわかんなくなるって言うし、何よりよそ見なんかできないくらい想い合うらしい。アルファは最愛のオメガを隠すようにして命懸けで守るし、オメガは愛するアルファを頼って尽くす。
僕もそんな番って関係に、実はちょっと憧れてるんだよね。
…ん。
前置きが長くなったけど、要約すると、人間と各種獣人がいて、男女各々に更に3つの性別がある。おk?
オレンジに近い茶色のフサフサした毛並み、利発さを表す、くりんとしたどんぐり色の瞳。
それが僕、吉田 嵐太。
獣種はレッサーパンダ。
幼稚園頃までは上手く人型を保てなかったから、油断するとお母さんと歩いてても通りすがりの人達にすぐモフモフされたり、ペット目的でさらわれかけたりして大変だった。
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