9 / 86
9
しおりを挟む僕が不思議に思ってCクラスの教室内を見渡すと、数人と目が合った。目が合うとびっくりされて、戸惑ったようにニコッとされる。中には手を振ってくれる人もいるから振り返すと、更に笑顔になってくれる。でも、近づいてはこない。
…?
普通、気まずかったら目を逸らすだろうにそうはしないし、初めての僕にも遠巻きながらもこんなにフレンドリー。壱与君によそよそしいと思ったのは気のせいだったかな…?
と思って、ハッと気づいた。
もしかして壱与君の獣性を恐れられているのか?!
だってグリズリーだし!!
僕は心配になって壱与君に質問した。
「壱与君、友達いる?!」
言っちゃってからしまったと思う。なんて失礼な質問なんだ。僕のばか。もっと違う聞き方があったじゃん!
でもそんな僕の反省をよそに、壱与君はン?と首を傾げて答えてくれた。
「友達?いないよ?」
「いないの?!」
綺麗な笑顔と答えのギャップがあり過ぎてびっくりして反射で返しちゃったけど、当の壱与君は何でもない事みたいにキョトンとしてる。
「俺、高校上がる前くらいから体調崩してるんだけど、それが安定しないからまだたまにしかガッコ来られないの。初日と2日目に頑張って来てから、その後はまだ2、3日かな。来れても保健室登校だったりだから、あんま教室いなかったし。だから友達、いないよ」
「そうだったんだ…」
そうか、じゃああの日はその2、3日の内の1日だったんだ。
だからこの漂うアウェイ感なんだね…。
僕は壱与君が気の毒でちょっぴり目頭が熱くなった。こんなにカッコいいんだから普通なら友達たくさんできそうなのに、よりによってこんな時期に体調崩すなんて…!
僕が箸箱を持ったまま目頭を押さえてると、壱与君が言った。
「でも吉田がなってくれたから、正しくは1人、だな」
ぱっと目を上げて壱与君を見ると、僕を見てにっこり笑ってる。
…え、何このときめき。
ドキドキする胸を誤魔化すように、パカッとお弁当箱の蓋を開ける。
「あ、やったあ」
「すげぇ」
上の段はおかずがみっちりってのはいつもの事なんだけど、今日は大好きなソーセージとアスパラ入りの花の形の卵焼きが入ってる!それから豚の角煮、いんげんとニンジンとチーズの肉巻き、ミニトマト。しかも別の小さい容器にはデザート用にカットされたリンゴ!!
僕はうきうきしながらそれを眺めて、壱与君に向かって言った。
「壱与君、卵焼き好き?」
壱与君は目をぱちくりしながら答える。
「あ、うん。好き」
「良かった!じゃあ食べて!」
僕はお弁当箱の蓋を取り皿代わりに渡そうとして、ハッと重要な事に気づいた。
…壱与君の…お箸が無いよ…。
少しフリーズして、震える唇で
「…おはしが…」
と呟いたら、何故か周囲が一瞬ザワつくのが聞こえて、次には横からにゅっと割り箸を持った手が伸びてきた。
「え?」
「箸だろ、ほら、使えよ」
コンビニで貰える割り箸を渡してくれたのは、多分ヒョウの獣人の男子。何かすごい慌てた表情してる。ありがたいけど、どうしたんだろ?
「…ありがとう」
受け取ると、ヒョウ男子はホッとしたような顔になって、僕の頭を撫でた。でもすぐにビクッとして、そそくさと自分の席に戻っていく。…なに?もしかして僕がアルファだって気づいて恐れをなしたのか…?ごめんね、僕がつよつよアルファなばっかりに!!
…それはそうとして、ラッキーにもお箸が手に入ったので、僕はさっそく壱与君に渡そうと彼の方に向き直って言った。でも…
「壱与君…」
まで言った時、口が止まっちゃった。
壱与君はお箸をくれたヒョウ君の方を無表情でじいっと見ていた。…どういう感情?お礼言いそびれたって感じかなあと見てたら、壱与君は僕の視線に気がついたみたいで、ニコッと笑った。それから壱与君はヒョウ君に向かって、
「お箸、ありがとな」
とお礼を言って、ヒョウ君はこくこく頷いてた。やっぱりお礼言いたかったんだな。良かったね、壱与君。クラスメイト達と一歩前進だね。こうして少しづつ壱与君とCクラスのみんなが仲良くなれると良いなー。
僕は能天気にそんな事を思いながら、壱与君にお弁当箱の蓋を渡した。
「取り皿にしてね」
「ん…ありがと」
蓋を受け取りながらアンニュイに微笑む壱与君、めちゃくそ色気~。憧れる。僕もいずれは壱与君をお手本にしてそうなるからね!
割り箸を割って、壱与君は僕がおすすめした卵焼きを摘んだ。皿代わりの蓋の上、箸先でそれを割って口に運ぶ仕草も品が良い。
「……うん、美味い。お母さん、料理上手だな」
ひとくち食べた後、壱与君は感心したみたいにそう言って、残りも食べてる。僕は自分が褒められたみたいに嬉しくなった。
「で、でしょー?
お母さん、何の料理でも得意なんだ。角煮なんか特にね、冷めたって柔らかいしね!ポテサラとかもめちゃくちゃ美味しいんだよ。今度入れてもらうね!」
「…楽しみ」
壱与君は僕を見て、目を細めて笑った。僕も嬉しくなって笑った。
楽しいお昼休みだった。
でも自分の教室に戻った後、純人アルファの相模君っていう男子が寄ってきて、
「…吉田、大丈夫?」
って聞かれたんだよね。
「なにが?」
って聞き返したんだけど、相模君は一瞬黙って、
「いや、大丈夫なら良い。」
って自分の席に戻っちゃった。
……なんなの??
そう言えば、歯磨きしたのにデザートに食べたリンゴの香り、まだ鼻に残ってるなぁ。
144
あなたにおすすめの小説
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる