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僕が不思議に思ってCクラスの教室内を見渡すと、数人と目が合った。目が合うとびっくりされて、戸惑ったようにニコッとされる。中には手を振ってくれる人もいるから振り返すと、更に笑顔になってくれる。でも、近づいてはこない。
…?
普通、気まずかったら目を逸らすだろうにそうはしないし、初めての僕にも遠巻きながらもこんなにフレンドリー。壱与君によそよそしいと思ったのは気のせいだったかな…?
と思って、ハッと気づいた。
もしかして壱与君の獣性を恐れられているのか?!
だってグリズリーだし!!
僕は心配になって壱与君に質問した。
「壱与君、友達いる?!」
言っちゃってからしまったと思う。なんて失礼な質問なんだ。僕のばか。もっと違う聞き方があったじゃん!
でもそんな僕の反省をよそに、壱与君はン?と首を傾げて答えてくれた。
「友達?いないよ?」
「いないの?!」
綺麗な笑顔と答えのギャップがあり過ぎてびっくりして反射で返しちゃったけど、当の壱与君は何でもない事みたいにキョトンとしてる。
「俺、高校上がる前くらいから体調崩してるんだけど、それが安定しないからまだたまにしかガッコ来られないの。初日と2日目に頑張って来てから、その後はまだ2、3日かな。来れても保健室登校だったりだから、あんま教室いなかったし。だから友達、いないよ」
「そうだったんだ…」
そうか、じゃああの日はその2、3日の内の1日だったんだ。
だからこの漂うアウェイ感なんだね…。
僕は壱与君が気の毒でちょっぴり目頭が熱くなった。こんなにカッコいいんだから普通なら友達たくさんできそうなのに、よりによってこんな時期に体調崩すなんて…!
僕が箸箱を持ったまま目頭を押さえてると、壱与君が言った。
「でも吉田がなってくれたから、正しくは1人、だな」
ぱっと目を上げて壱与君を見ると、僕を見てにっこり笑ってる。
…え、何このときめき。
ドキドキする胸を誤魔化すように、パカッとお弁当箱の蓋を開ける。
「あ、やったあ」
「すげぇ」
上の段はおかずがみっちりってのはいつもの事なんだけど、今日は大好きなソーセージとアスパラ入りの花の形の卵焼きが入ってる!それから豚の角煮、いんげんとニンジンとチーズの肉巻き、ミニトマト。しかも別の小さい容器にはデザート用にカットされたリンゴ!!
僕はうきうきしながらそれを眺めて、壱与君に向かって言った。
「壱与君、卵焼き好き?」
壱与君は目をぱちくりしながら答える。
「あ、うん。好き」
「良かった!じゃあ食べて!」
僕はお弁当箱の蓋を取り皿代わりに渡そうとして、ハッと重要な事に気づいた。
…壱与君の…お箸が無いよ…。
少しフリーズして、震える唇で
「…おはしが…」
と呟いたら、何故か周囲が一瞬ザワつくのが聞こえて、次には横からにゅっと割り箸を持った手が伸びてきた。
「え?」
「箸だろ、ほら、使えよ」
コンビニで貰える割り箸を渡してくれたのは、多分ヒョウの獣人の男子。何かすごい慌てた表情してる。ありがたいけど、どうしたんだろ?
「…ありがとう」
受け取ると、ヒョウ男子はホッとしたような顔になって、僕の頭を撫でた。でもすぐにビクッとして、そそくさと自分の席に戻っていく。…なに?もしかして僕がアルファだって気づいて恐れをなしたのか…?ごめんね、僕がつよつよアルファなばっかりに!!
…それはそうとして、ラッキーにもお箸が手に入ったので、僕はさっそく壱与君に渡そうと彼の方に向き直って言った。でも…
「壱与君…」
まで言った時、口が止まっちゃった。
壱与君はお箸をくれたヒョウ君の方を無表情でじいっと見ていた。…どういう感情?お礼言いそびれたって感じかなあと見てたら、壱与君は僕の視線に気がついたみたいで、ニコッと笑った。それから壱与君はヒョウ君に向かって、
「お箸、ありがとな」
とお礼を言って、ヒョウ君はこくこく頷いてた。やっぱりお礼言いたかったんだな。良かったね、壱与君。クラスメイト達と一歩前進だね。こうして少しづつ壱与君とCクラスのみんなが仲良くなれると良いなー。
僕は能天気にそんな事を思いながら、壱与君にお弁当箱の蓋を渡した。
「取り皿にしてね」
「ん…ありがと」
蓋を受け取りながらアンニュイに微笑む壱与君、めちゃくそ色気~。憧れる。僕もいずれは壱与君をお手本にしてそうなるからね!
割り箸を割って、壱与君は僕がおすすめした卵焼きを摘んだ。皿代わりの蓋の上、箸先でそれを割って口に運ぶ仕草も品が良い。
「……うん、美味い。お母さん、料理上手だな」
ひとくち食べた後、壱与君は感心したみたいにそう言って、残りも食べてる。僕は自分が褒められたみたいに嬉しくなった。
「で、でしょー?
お母さん、何の料理でも得意なんだ。角煮なんか特にね、冷めたって柔らかいしね!ポテサラとかもめちゃくちゃ美味しいんだよ。今度入れてもらうね!」
「…楽しみ」
壱与君は僕を見て、目を細めて笑った。僕も嬉しくなって笑った。
楽しいお昼休みだった。
でも自分の教室に戻った後、純人アルファの相模君っていう男子が寄ってきて、
「…吉田、大丈夫?」
って聞かれたんだよね。
「なにが?」
って聞き返したんだけど、相模君は一瞬黙って、
「いや、大丈夫なら良い。」
って自分の席に戻っちゃった。
……なんなの??
そう言えば、歯磨きしたのにデザートに食べたリンゴの香り、まだ鼻に残ってるなぁ。
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