ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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僕とみずき君がおつきあいを始めた事は、何故だか光の速さで校内に広まったみたいだった。

でも、どうしてかな。自分のクラスとみずき君のクラスに知られてるのはまだわかるんだけど、全然知らないクラスの生徒や、見ただけで上級生だってわかる人達もご存知らしいのは。
そんで、移動教室の時とか、1人の時にちょろっと声をかけられたりする。
しかも何か声のかけ方が失礼なんですけど?

『お前、アルファなの?冗談だよな?そんなちっちゃいのに?』とか、『一年の幻のオメガの彼氏ってお前?冗談だろ?そんなモコモコしっぽなのに?』とか。

僕はそんなに冗談ばっかり好きじゃありません。あと、ちびもしっぽも余計なお世話。
というか、なんで僕がアルファだと冗談なのか。
泣かすよ?日頃の僕の素振りの成果が今こそ火を噴きますよ?
…まあ、温厚な僕はアイアンクロウをぐっと堪えますけどね?

でも、そんな感じ悪い言葉をかけてくる柄の悪げな先輩達も、不思議な事にみんな一定の距離を保ちながら言ってくるのは何でだろうか。
失礼な事を言う割りに、実は僕に恐れをなしているのでは?とポジティブ思考を炸裂させていた僕でしたが、思わぬ所で疑問が氷解したのです…。



「そりゃ当たり前じゃない?」

「え?」

「だって壱与君の相手に手を出す猛者、いないでしょ。 どうせ口だけしか出せないんだから、気にしない事だよ」

湯川君は黒板消しをクリーナーにかけながらそう言った。

今週は僕の所属してる班が掃除当番で、僕は箒で床を掃いている。ホントは僕もクリーナーやりたかった。何か吸引されて綺麗になってくのが気持ちいいから。若干の嫉妬のまなざしで湯川君を見るけど、湯川君真面目で職人みたいにウィーウィー言わせながらクリーナーかけてて気づいてくれない。眉間に皺寄せながら時々綺麗になり具合いを確認しつつやってて、素人は黙っとれ…って言いそうな顔してる。
というか、黒板消し2個のクリーニングそんなにも気合い入れてやる?全力投球過ぎない?
湯川君ってそういうとこあるよね。やっぱ委員長だから完璧主義なのかな?(個人の感想です)

それは良いとして、何でみずき君、そんなに怖がられてるんだろ?まだ入学して2週間ちょっとなのに。 
僕は湯川委員長に疑念をぶつけました。

「口だけ?なんでみずき君の相手だと手を出したら猛者なの?」

そしたら湯川君は、職人の親方みたいな顔のまま、顔を上げて僕の方を見た。

「…先週、誰かが言ってた事、覚えてる?」

「こないだ?」

「吉田君が壱与君と恋人宣言ぶちか……カミングアウトした日」

「ああ!あの日ね!…何だっけ?」

クラスメイトの前で恋人になりたての事は言ったけど、誰かに何か言われたっけ?
僕は首を傾げた。浮かれてたからキス以外の事、あんまり覚えてないんだよね。
そうしたら親方は、静かに言った。

「誰かが壱与君を一年の裏ボスって言ってたでしょ?」

「あー、そう言えば?」

そんなの聞いた気もするけど…単なる噂でしょ?
だってみずき君だよ?超綺麗でイケメンで死ぬほど優しくて…あ、まあたまにすごいエロテロ仕掛けてくるけど、裏ボスは無いでしょー、裏ボスは。だって僕と出会うまですっごく体調不安定だったって話だよ?
そりゃ、背は高いし筋肉カッコいいしグリズリーだけど、か弱いオメガなんだよ?

裏ボスはないでしょ~。(2回目)

僕はナイナイと笑いながら手を振った。

「あれは単なる噂でしょ?」

「マジだよ」

「えっ?」

親方は、めちゃ深刻そうな顔で、もう一回

「マジだよ」

と言った。…え?

「というか、多分壱与君、全学年で強さランキング1位らしいよ」

「?!?!」

僕は目が点になった。強さランキングって、何?

「吉田君。日々成長促進の為に並々ならぬ努力をしている君には酷な事を言うけど、この高校には君の愛しのグリズリー壱与君以上の獣人は在籍していないんだ」

「……!!」

「まあ、ウチのクラスにも佐久間君がいるし、2年3年にもライオンやトラはいるけど…実質、熊種の中でも上位のグリズリーがトップだね」

「そうな、の?」

「そうなの」

いやまあ、獣種でいけば確かにそうだけど。そのランキング、レッサーパンダはどの辺なんだろ…?

「だからみずき君が一番強くて、僕にも誰も近寄って来ないって事?」

「それもあるけど…」

湯川君は少し言いにくそうに口ごもってから、

「獣人の生徒達は、マーキングベッタベタで寄りつけないって言ってたよ。仲睦まじいのは結構だけど、ちょっと加減してもらった方が良いんじゃない?」

「あ…」

ズバズバ言われて、一気に顔に熱が集まってしまった。ヒィ…みんなに気づかれてるのか…そりゃそうだよね。だって、嫌でも付いちゃうんだよ。

「登校通学の電車でも毎日どエロい事してるって話題だよ」

「ぴえぇ…」

僕、消沈。
そうなんだ。僕、あれから毎朝電車の中で毛づくろいされてるんだ。ちょっと加減して?とっくに言ったさ。
でも、その時のみずき君の、悲しい顔を見ちゃったら…。

『大好きなのに、ダメなの?』

なんて言われたら…。

誰だって羞恥に耐え忍ぶ選択をすると思う。そんで、ぺろぺろはみはみでマーキングされるのも、仕方ないと思うんだ。
 
「まあ、ほどほどにね」

「……うん」

 
でも、電車の中で毎日毛づくろいされてるのを全校生徒に知られてると思ったら、ちょっとの間立ち直れなかった。

そのあと、迎えに来てくれたみずき君と隣街のお肉屋さんのコロッケを食べに寄り道デートして立ち直れた。

僕のつよつよ恋人カッコいい。












 
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