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学校の事やみずき君のおうちの事なんかを話してる内にお鮨が来て、それを皆で囲んで和気あいあいとお昼を食べた。みずき君はやっぱりお鮨もサーモン好きだった。あと、マグロとハマチもイクラも好きだって。僕はマグロと玉子と海老が特に好き。
ウチは僕とお父さんはワサビがダメだから、お鮨を頼む時はサビ抜きで作ってもらって、別にワサビを付けてもらってる。獣人は大体はワサビやカラシ、唐辛子って刺激物が苦手だから仕方ないんだ。みずき君も苦手だって。
だから今日もお母さんだけが醤油にワサビを溶かして使ってた。
お昼を食べ終わって、そろそろ部屋に行こうかって立ち上がりかけた時、お父さんに止められた。
「少しだけ2人に話しておきたい事があるから、もう少し座っててくれるかな」
何だろう?
僕とみずき君は顔を見合わせたんだけど、とりあえずお父さんが言うから座り直した。
「壱与君は、オメガなんだね?」
「はい」
「嵐太がアルファだと知ってる上で付き合ってるんだね?」
「はい」
いつになく真剣な顔つきで静かに話すお父さんは、いつもの気弱なお父さんとは違う人みたいだった。
「嵐太君は俺の運命の番なんだと思います」
みずき君も、すごく真面目に応対してる。でも、運命の番ってとこでお父さんが訝しげな顔をした。
「運命…。私はベータだから、その辺の事はよくわからないんだけど…何故そう思ったのかな?」
お父さんの問いかけに、みずき君は少し黙って、お父さんの目を真っ直ぐに見て答えた。
「初めて会った時に、そう直感したからです。それまでずっとオメガホルモンが整わずに苦しかったのが、嵐太君に出会った途端に嘘みたいにスッキリしたんです」
「…偶然という事は?」
「それまで1年半以上、毎日苦しかったです。頭痛はするし、胃も腹も痛い。体中が怠くて、どんなアルファの匂いも臭くて俺を苦しめるだけでした」
僕とお父さん、お母さんはみずき君の言葉を黙って聞いていた。ベータのお父さんにも同じベータのお母さんにも、アルファの僕にもわからない、オメガの苦しみ。
「体調が悪い時に嗅ぐ悪臭って、ほんとにキツいんです。合わないアルファの匂いは特に。胸焼けや吐き気が止まらなくなります。遺伝子相性が悪いんでしょうね。
勿論、そんなアルファばかりじゃなくて、それなりに悪くないフェロモンの人もいました。
でも、それなりってだけです」
「石雲先生から聞いた事はあったけど、そんなに酷い症状の子がいるのねえ…」
お母さんの声は同情的。みずき君が可哀想になっちゃったみたい。お母さん、みずき君と会った時からみずき君ガチ勢だから。推しなんだって。
お父さんは、難しい顔をして黙ってるけど、眉が下がっちゃってるからあれも明らかに同情中と見た。
「まあ、俺は酷い方だとは言われてました。元々できた事もできなくなって、本当に辛かったです。人が多くて匂いがシャットアウトし切れない学校では、殆ど食事なんかとれませんでした」
「そ、そんな…!育ち盛りの男子高校生が…っ?!」
今度はお父さんがびっくりしてとうとう口を開いちゃった。日頃の僕を見てるから、食べられない男の子が信じられない様子だ。みずき君は深く頷いた。
「はい。だけど、嵐太君と保健室で初めて会って、すごく良い匂いだ…って思った瞬間、辛さが全部ピタッと止まったんです。それまであまり効果が無かった抑制剤もちゃんと効くようになりました」
これにはお父さんもお母さんも絶句してしまった。
暫くして衝撃から立ち直ったお父さんが、
「そんな事が、あるのか…」
って呟くと、みずき君はまた大きく頷いて言った。
「その時、運命の人なんだと確信したんです。なのでその翌週に、担当の医師のところに行って検査してもらいました。全ての数値が正常になってました。それで、最近、どんな人に会ったのか聞かれました」
みずき君も病院行ってたんだね。そんな事言ってなかったから、初めて聞いたよ。僕は横のみずき君をじっと見上げた。そしたらそれに気づいたのか、みずき君も僕を見てにこりと笑った。まぶちい。
「全てが心地良いと感じた相手がいた筈だと言われました。それが運命の人だと。
運命の番(つがい)に巡り会えた事に、体の方が先に安心したんだそうです」
みずき君はそう言ってから、ふふっと声を出して笑った。
お父さんとお母さんは、なるほどって顔をして頷いてた。
「そうか。話はわかった。みずき君や担当の医師が言うのなら、そうなんだろうね。嵐太は…同年代の子達より少し成長が遅いせいか、アルファとしても未発達らしい。だからまだよくわからないのかもしれないな」
失礼な!とムッとしたけど、未発達は本当の事だから異議を唱えられなくて口を尖らせるだけの僕。でもこれだけ言わせてください。
「そんな事ないもん。僕だって、最初にみずき君のいい匂いに気づいてたし、見た時だってすごい綺麗だってドキドキしたもん!」
「えっ?」
びっくりしてるみずき君。
「ラン、本当?」
「ホントだよ。手当てしてもらった時も、ドキドキしてた」
「ラン!!」
「みずき君!!」
ソファの上で固く抱き合う僕とみずき君。
一目惚れや匂い惚れしてたのは、みずき君だけじゃないんだからね!
お父さんはコホンと咳払いをしたあと、また僕達に向かって言ってきた。
「あー、うん、2人の気持ちはわかった。
じゃあ、2人が将来的に番になる事を前提として言っておきたい事がある」
「えー、まだあるの?」
「まだあると言うか、こっからが重要だ」
今日のお父さん、人生イチお父さんっぽい。
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