29 / 86
29
それから僕とみずき君は寝落ちちゃって、3時のオヤツにケーキを持って来てくれたお母さんの声で起こされて目が覚めた。ドアはちょっと開けてたんだけど、声を掛けても返事がないからって部屋に入ってきたお母さんに、額をくっつけてぐーすか寝てるとこ写真に撮られた。
「可愛かったから…」
だと、その後の取り調べで動機を吐いたけど…許されないよね。年頃の息子とその恋人の危うい場面を無断で撮影。許されないよ。
…でも後から画像送ってもらったけど。だってみずき君、寝顔もイケメンなんだよ。欲しいに決まってるじゃん。
みずき君はお母さんに見られて恥ずかしそうにしてたから要らないかなって思ったけど、後からコソッと『俺にもちょーだい?』って言われたからそっと共有ボタンを押した。
そのあと、みずき君が持ってきてくれたケーキを食べた。お母さんが4個お皿に載せてきてくれて、全部違う種類だったからそれぞれ半分こずつにして食べたんだけど、マンゴーとかメロンや他のフルーツがたくさん使われててすごく美味しかった。流石だよインゴット。さすイン。
「みずき君、ケーキたくさん持ってきてくれたよね。お金たくさんかかったでしょ」
って聞いたら、
「いや、ウチ小遣い要員いっぱいいるから」
って答えてくれた。小遣い要員…。
「親父も兄貴も姉貴も仕事してるから」
「そっか、すごい!」
「末っ子だからかな、頼んだら結構くれるよ」
「いいなあ」
「だから結構金持ちだよ、俺」
そう言って笑ったみずき君はフォーク使いも優雅だ。やっぱり貴賓だな…。みずき君ちはやっぱりお金持ちなんだろうなあ、と思う。僕んちはお父さんが会社員で、お母さんはパートしてる一般的な家。お小遣いの使い途は、学校帰りのに小腹が空いたときにちょっとしたオヤツを買うくらいだよ…って考えてて気がついちゃった…。僕も今度みずき君ちに僕も何か買ってかなきゃいけないんじゃない?!
僕は口の中のメロンを飲み込んでから聞いた。
「みずき君ちは、みんな何が好きっ?!」
「え、何急に…」
僕が突然質問したからか、みずき君はキョトンとしてる。それで、首を傾げながら言う。
「好きなって、何の事?」
「お菓子とか。お土産持ってかなきゃでしょ。みずき君みたいに!」
「いや…別にいらないと思うけど」
「最初が勝負って言うじゃん!!」
「勝負?」
「みずき君の恋人として!好印象を持ってもらいたいんだよ!」
僕が力説したらみずき君は目を丸くしたけど、ちょっと笑いながら言ってくれた。
「別に特別に何か持ってかなくても、ランは元気に挨拶するだけで良い子だって思われるよ」
何も特別なものを持たずに元気に挨拶。それじゃ学校と変わらないじゃん。それじゃだめじゃん。
僕はむむぅ、と唸って腕を組んだ。そんな僕を見て、みずき君は続けて言う。
「ウチの家族はみんなそんなにケーキや菓子を食べないし…そんなに気を使わなくて大丈夫」
「そんなぁ…」
なんて事だ。甘いもの好きじゃない家族だなんて。早くも行き詰まった僕は頭を抱えそうになった。どうしたら良いんだ。持ってくもの、何も思いつかない。
悩み出した僕にみずき君は、優しい声で言う。
「そんな悩まなくても、ランは絶対ウチの家族に気に入られるよ」
「…そうかなあ?」
「そうだよ」
みずき君は僕を好きだからそう思うだけじゃないかなあ。チビのレッサーなんかウチのみずきにはふさわしくありませんっ!!って言われちゃったらどうしよう。
なんだか不安で胸がいっぱい。ケーキめちゃおいしい…。
そんなこんなでオヤツを食べ終わった僕は、みずき君のリクエストで家の近所を案内して歩く事になった。
みずき君はこの辺には来た事がないらしい。3駅って微妙だよね。近いようだけど、誰か知り合いがいるとか用があるんじゃなきゃ行く事もないし。僕もみずき君ちの最寄り駅って駅前しか知らないもん。
って事で、まずはいつも行く一番近いコンビニ。まあ全国チェーンだからどこの店舗も大体同じですけど!
次に、小さい頃からよく行ってたお菓子屋さん。お客はいつも子供が多くて、他のとこでは珍しいお店らしい。ちっちゃくてまるい純人のおばあちゃんがやってるんだけど、駄菓子っていうのかな、いろんな種類の20円とか30円とかの小さいお菓子がたくさん売ってる。クジ引きとかもあるんだけど、見た事ないようなオモチャが当たる時もあるけど、たいていは小さいガムとか小袋の甘納豆の時が多くてすごい温度差がある。お父さんが小さい頃には同じようなお店が近所にもう一軒あったんだって。
せっかくだからってみずき君とクジ引いたけど、みずき君が黄色いめちゃくちゃ跳ねる小さいボールを当てて、僕はガムだったから、相変わらず安定の仕様だなって思った。
それからいつも行くパン屋さん。夕方行くと、よくおまけにパン1個くれる。その隣りにはお母さんがパートしてるスーパー。結構広くてキレイ。それからお団子が美味しい庶民的な和菓子屋さんに、本屋さんとか色々。
たまにご挨拶する小さな神社の前を通って、何年ぶりかに通ってた小学校にも行った。僕の住んでる街をみずき君と一緒に歩くのは、とっても楽しかった。
そして、みずき君ちに持ってくお土産に悩んでた事をすっかり忘れちゃったのだった。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。