ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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みずき君のお母さん…もうおばさんって呼ぶ。おばさんが甘いアイスティーと一緒に、お茶菓子だと言いながら出してくれたのは、20センチくらい高さのあるバウムクーヘン。

バーンって感じで。バーンって。

お茶菓子…お茶菓子ってこんな感じで出てくるっけ?もっとなんか、こう…。
まぁとにかく、それが2つ、それぞれ大きなお皿に載っけられて出てきたなと思って見てたんですよ。それをおばさんは、1つはそのまま、もう1つは6等分に切り分けてた。で、それをまず、3枚並べられたお皿にIN。…4人なのに3人分?って不思議だったんだけど、それよりもう1つはどうすんのかなって思ってたら、おばさんはそのカットしてないバウムクーヘンの真ん中の穴に生クリームを注入して、仕上げにチョコクリームをかけた。すごーい!なにそれ!!?
僕がびっくりして見てたら、おばさんはそれをそのまま僕の前にスッと滑らせてくれた。それで、さっきのカットされたバウムクーヘンのお皿3枚はおじさん、みずき君、そしておばさんの前に。

「えっ?!」

嘘、僕の分なの、これ?
おばさんの顔とスペシャルバウムクーヘンを交互に見てると…。

「遠慮しないで食べてね。たくさんあるから」

おばさんはそう言ってニコリと笑ってくれて、僕は嬉しくなって頷いた。
さすみず。いや、さす壱与。
バウムクーヘンはしっとりしてて、甘くて美味しくて、生クリームと一緒に食べながら目を閉じると、天国で戯れる天使が見えるみたいだった。

やっぱお金持ちのおうちは出てくるオヤツからして違うね。すごい。

嬉しくなってモグモグしてたんだけど、ふと顔を上げると、みずき君をはじめとしておじさん、おばさんの3人共がずっと僕を見てる事に気がついた。

「…?」

なんですか?と首を傾げると、おじさんが後ろにバターンと倒れた。ひえっ、デジャブ!!
僕が身を乗り出しておじさんを見ると、みずき君が首を振りながら静かに言った。

「大丈夫。落ち着いたら自力で座るから」

「……そう?」

「ウチの人、小さきものを見ると情緒が忙しくなるのよ。気にしないで」

気にしないで、と言ってるおばさんもホントに気にせずバウムクーヘン食べてる。

そっか…。…ん?小さきもの??いやチビなのは知ってるけど、小さきってもっとこう、仔猫とか小鳥とか、なんかそういう小動物とかに使う表現じゃない?
流石に僕はそこまでじゃなくない?

でも僕はオトナなので、思ってもそんな事は言わない。どうせあと1、2年もしたら成長期が来てグワッと伸びるしね、グワッと。
僕はおっきくなった自分を思い浮かべて、フン、とちょっと鼻息を出した。

そうしてる間におじさんは何事も無かったように復活してバウムクーヘン食べ始めてた。和服姿の時代劇スターみたいな人が甘いの食べてるの、面白いな。


「吉田君は、アルファなんだって?」

急におじさんが僕に話しを振ってきて、僕はアイスティーで口の中のものを流し込んでから返事をした。

「はい」

「なんてミラクル…」

僕の返事を聞いたおじさんは、すごく良い発音でそう言って、何故か手で目を覆って天井を仰いだ。そんなに?

「レッサーパンダの獣人というだけでも尊いのに、レッサーには滅多に見ないアルファだなんて。おじさん、全力で吉田君を推させてもらうよ」

「え、はい…。…?」

ウチのお母さんはみずき君を推してるけど、僕もみずき君のお父さんに推されるの?
僕が横のみずき君をチラッと見たら、みずき君は曖昧に笑ってた。まあ、嫌われてるんじゃないなら良かった?

「で、2人はいつ番になる予定?」

今度はおばさんが聞いてきて、たまたまアイスティーを飲んでたみずき君がブホッと吹いた。大丈夫?

「はい、高校卒業したらなります!それまではガマンだぞって、お父さんが」

僕は、苦しそうに咳込むみずき君の背中をさすりさすりしながら、かわりに真面目な顔で答えた。

「あ、でも高校卒業したらみずき君と一緒に大学も行きたいから、子供はまだ先です!」
 
子供ってとこでみずき君がまたゴホゴホと咳込んだ。

「小さいのになんてしっかりしてるんだ…!」

そう言って感心したように言うおじさん。…褒めてくれてるのわかるけど、小さいはよけいです…。

「本当に。おばさんびっくりしちゃったわ。親御さんもしっかりしてて…。
安心してみずきをお任せできるわね。…うっ、あんなに小さかった末っ子がもう将来の伴侶を…」

…あっ。今度はおばさんが涙ぐみだした。おじさんだけじゃなかった。2人とも情緒が忙しかった。
みずき君はそんなご両親を何とも言えない表情で見てる。
楽しいお父さんとお母さんだね。
申し訳なさそうに僕を見るみずき君と目を合わせて、クスッと笑う。どうやら僕、嫌われてないみたい。良かった。
さて、オヤツを再開だ。


「おーい、レッサー君もう来てるー?」

突然、ドタドタと足音が聞こえたと思ったら、女の人の声がした。

「げっ、何で姉貴が」


騒がしい人の正体は、どうやらお姉さんのようです。




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