ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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僕の繊細な心はリンゴチップスで辛うじて修復されて、小一時間で人型に戻れた。でもその間、みずき君は見るからに大変そうだった。外から部屋の戸を叩いて開けようとするお姉さんとおじさんとの攻防で…。
僕はクッションに座って無限リンゴチップスしながらそれを眺めてたんだけど、何度も聞こえてきた『いいじゃないのケチ!』というお姉さんの大声より、合間に聞こえてくる『せめてひと目…せめてひと目…』っていうおじさんの弱々しい声が印象的だったな。
テレビの画面と、頑張って戸を押さえてるみずき君を眺めながらパリポリ食べてる内にポンッと戻ったんだけど…そうすると真っ裸だから、ありゃりゃ~って慌てた。獣化した時に体のサイズが変わるから服が全部脱げ落ちちゃって、散らばった服をみずき君が急いで拾い集めててくれたんだよね。で、それを壁際のハンガーに掛けてくれてたから、僕は立ち上がってもそもそパンツから順に着ていった。するとみずき君が着替えてる僕に気づいて2度見してびっくりした顔になったと思ったら、途端に戸が開いてお姉さんとおじさんがなだれ込んできた。みずき君、僕が戻った事に動揺して力抜けちゃったんだろうな。なんかかごめんね、急に。
まだパンツ履いてチノパンに右足を通したばっかりだったんだけど、既に人型に戻ってる僕を見て、お姉さんとおじさんはちょっとガッカリしたような顔をした。みずき君は固まって顔が真っ赤だった。攻防で力込めてたからな~。

「ら、ラン…戻ってたのか」

「うん、ついさっき。なんかごめんね」

「レッサー見たかった…」

「せめてひと目…」

お姉さんとおじさんの後ろからお兄さんと、おばさんに抱っこされたエル君が見える。

「ホントにもう。2人ともいい加減にしないと吉田君に嫌われるわよ」

「そうだぞ。父さんも美森もみっともない。
すまないな、瑞希、吉田君。…乳首かわ」

「いえ…えっ?」

「兄貴、ちょっとこっち」

おばさんが呆れたようにお姉さん達を嗜めて、お兄さんも同じように言ってくれたんだけど、最後に早口でちょっと聞き取りにくい事を言われて聞き返したら、みずき君がお兄さんの襟首を掴んで廊下に引き摺り出した。どうしたんだろうね?

「?」

「ほら、お父さんもお姉ちゃんも出て出て。吉田君、ごめんねえ、騒々しい家で。
もう邪魔させないからゆっくりしてってね」

「はい」

おばさんにシッシッて感じで部屋から出されるお姉さんとおじさん。しょんぼりしてる。おばさんに抱っこされてるエル君がバイバイと手を振ってくれたから、僕もTシャツを着ながら手を振り返した。おばさんは笑顔で部屋から出ていって、引き戸を閉めてくれた。パーカーまで着てすっかり元通りの姿になった僕は、さっきみずき君と居たクッションに戻って座る。この大きなクッション、すごく気持ちよき。
それにしても、みずき君まで一体どこに行っちゃったんだろ?

リンゴジュースを飲んでリンゴチップスを食べるという最強ループを再開しながら待ってしばらくすると、みずき君がムッとした顔で戻ってきた。何だかちょっと怒ってるみたいだ。

「おかえり。どこ行ってたの?」

聞いてみると、みずき君は僕の前に屈んで、はぁっと息を吐いた。

「ごめん。ランが獣化したのを姉貴達に漏らしたの、兄貴だ。言うなよって口止めしたのに…」

「まあ、エル君はまだ喋れないみたいだもんね」

僕もそうだったんだけど、獣人の子供が人型取れるようになるには早い子で4、5歳。個人差はあるけど、まあ平均的にはそれくらいって話を聞いたよ。それで、だんだん人型でいられる時間が長くなって、小学校卒業の頃にはみんなちゃんと人型で定着してる感じ。自由意志で獣の姿に戻る事も出来るけど、ストレスやショックで獣の姿に戻っちゃう事もある。いや、僕はショックで戻ったのは今日初めてだったけど。
まあ、つまりそんな訳で、まだ人型の取れないエル君は、言葉が話せないって事。
だからエル君が僕の事をお姉さん達に言える筈がない。という事はお兄さんだろうなってのはわかってたけど。

「でもお兄さん、何で言っちゃったのかな?」

「悪気は無かったみたいで、可愛かったからつい言っちまったんだと」

「悪気無かったなら仕方ないよね」
 
僕は納得して頷いたんだけど、みずき君はまだ怒ってるみたいだった。

「ちゃんと腹にグーパンしといたから」

「別に良いのに」

別にパンツも履いてたし、男だし、そんなに気にしてないんだけどなあ…と思ってたら、みずき君はすごく眉を吊り上げて言った。

「ランの乳首を見た罪は重い」

「ちくび」

なんとみずき君は、僕のつるぺたーんな胸にポツンと付いてるだけの乳首を見たという事だけでお兄さんに腹パンをキメて来てしまったらしい。

まさかある事すら気にした事も無かった僕の乳首が、熊兄弟間にそんなにも亀裂を入れてしまうなんて思わなかった。

「なんかごめんね、僕の乳首が傾国で」

「…(傾国…)俺、ランのそーゆーポジティブなとこ、すごく好き。でも兄貴は許さない。俺のランを邪な目で見た奴は殺す」

「……」

「くそっ。ランの乳首を初めて見るのも舐めるのも俺じゃなきゃいけなかったのに…」

「…………」


…みずき君、ホントにオメガなんだよね?
あと、別に乳首は舐められてない。



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