ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

文字の大きさ
44 / 86

44


「あいたた…ちょっと座って良い?」

猫先輩は左足を痛そうにして、チラッと僕を見た。

「あっ、どうぞ!」

足、捻挫してたってみずき君が言ってたのを思い出して、僕は頷いた。怪我人は労らないとね。

「ありがと」

猫先輩はニッコリ笑って、何故かみずき君の隣に座った。
……???
何かモヤッとする。
何だかどこからか、僕の苦手な竹の匂いがした。野生のレッサーパンダは笹とか竹が好きな事が多いらしいけど、獣人になったレッサーはそれらを苦手に思ってる人もいるらしい。僕の竹嫌いもお父さん譲りなんだよね。 だって、緑臭いじゃん。
何でも美味しくいただく僕だけど、苦手なものもあるんです。

それはそうと、猫先輩とみずき君の距離が近過ぎるなぁ。僕はチキンを齧りながら2人をじっと見守った。初めて間近に見る猫先輩は、艶々の黒髪にやっぱり艶々の黒い耳と細長いしっぽを持った美人さんだった。
そんで首には鈴の付いた首輪。

そう言えば、2年に美人の猫獣人のオメガがいるって誰かが言ってたっけ…と思い出した。でも、オメガの人って服装にひびかないように幅広薄手のネックガードを着けてる人が多いのに、この先輩の首輪は覆える面積も小さそうな細い首輪だよ、珍しいよね。しかも鈴付けてる。猫だから?
ちなみにみずき君はネックガード派だよ。薄手のオシャレな黒いの着けてる。

「壱与君ってイケメンなのに力あるよね。腕も意外とがっしりしてて…」

猫先輩はジャージ姿のみずき君の上腕部に指先をツツーッと滑らせて、みずき君にスッと体を引かれてた。それでもめげない先輩、今度はみずき君のジャージの裾を掴んだ。

「壱与君、照れなくて良いのに。俺、全部わかってるよ?」

「……なんスか?」

明らかにみずき君が不機嫌な顔をしてるのに、全然めげない猫先輩すごい。というか、わかってるって何だろ?僕はモヤモヤしながらも成り行きを見守ってた。猫先輩が何をしたいのかわからなかったからだ。
すると、僕の視線に気づいた猫先輩は僕に顔を向けて、ちょっとムッとした顔をしながら言った。

「あのさ。君、ちょっと気を利かせるとか、ないの?」

気を利かせるって、どういう事だろ?と、僕は首を傾げた。気を利かせるも何も、僕とみずき君がご飯食べてるとこに後から来たのは猫先輩なんだけど…。
僕はちょっと困って、先輩とみずき君を見た。
そして、あっ、ヤバいと思った。みずき君の目から光が消えてる!!ブワッと体中の毛が逆立つ感じがした。先輩があぶなーい!!

「あの、先輩…」

危機に気づいてもらって迅速にお引き取りいただこうと思って話しかけたんだけど、先輩はフイッとみずき君に向き直ってまた話し始めてしまった。

「コレ、お題の紙落としてったでしょ?」

ジャージの上着のポケットから4つに畳まれた小さな紙を取り出して広げる先輩。そこには、

       "好きな人"

と、雑な字で書いてある。

「…すきな、ひと…?」

僕が呟くようにそのベタなお題を読み上げると、みずき君がその紙を先輩からひったくって凝視した。

「いや、これ…」

みずき君が何か言おうとしてるのにまた被せてく先輩、ほんとにメンタル強すぎる。

「良いんだよ、君の気持ちわかっちゃったし。あれでしょ?このチビは告白避けで付き合ってるだけなんでしょ?」

「……は?」
 
「だって明らかにモテるもんね。言ってくれたら全然OKだったのに。壱与君、熊なんだよね?俺、強い人好きなんだ」

すごいぞ。この先輩、全然人の話聞けないタイプの人だってドン引きしてたら、先輩は身を乗り出して、チュッとみずき君の…みずき君の、く、唇に…キスをした…。

ガーン…。

目の前が真っ暗になる僕。キレて先輩を突き飛ばすみずき君。立ち上がって、めちゃめちゃジャージの袖で唇ゴシゴシ拭ってる。

「足怪我してるっつーし先輩だからって気ィ使ってたらてめぇ…。何してくれてんだよ…」

怒りのこもった低い声と、先輩の小さい悲鳴が聞こえたけど、ショックでそれどころじゃない。みずき君の唇が…僕だけの唇が…!!

「だ、だってこのお題…!」

みずき君を見上げながら言う先輩に、みずき君は吐き捨てるように言った。

「俺のお題はこれじゃない」

「誤魔化さなくても…」

「俺のはこれ!」

しつこく食い下がる先輩に、みずき君はジャージのズボンのポケットから同じような紙片を出して、それをずいっと先輩の目の前に突き出した。

「……黒猫…無機物可?」

「無機物可…」

少しショックから立ち直った僕は、思わず先輩の後から覗き込んで、同じように呟いてしまった。無機物可って、一応の譲歩の跡は見られるけど、難しすぎない?別のお題にしてくれた方が親切だったんじゃないかなあ。みずき君はハァ、と息を吐きながら先輩に言う。

「ぬいぐるみとか、キーホルダーとかそういうのは周りに無さそうだったからアンタに頼んだだけだ。アンタ、黒猫だろ」

「……そんな…」

呆然としてる先輩に、みずき君はダメ押しに言った。

「知ってるよな?俺はオメガ。アンタと同じオメガ。このランは俺の運命のアルファ。
例え勘違いでもさ、普通、カップルの間に割り込もうとする?」

先輩は目をうるうるさせてる。

「そんな…こんなチビが君の運命とか、嘘でしょ…?」

「俺のアルファを馬鹿にしてんの?」

「ひっ」

みずき君が、とうとう本気で怒った。圧が違うよ…みずき君、そんなのオメガの出す圧じゃないよね。チートオメガってこんな感じなの?
並のアルファより断然怖い…。

熊圧を掛けられてるのは猫先輩なのに、僕もちょっとチビりそうになった。みずき君は先輩に凄んだまま、言った。

「確かにランは今はまだチビだけどな、デカくなる為に頑張ってんだよ。チビだからって馬鹿にするな。チビでもランは可愛くて最高なんだよ。〆んぞ」


うん、わかってる。僕を庇ってくれてのセリフなんだよね、みずき君。

でもね、僕、思った。


みずき君、1回のセリフの中で僕の事チビって何回言うんだろうなって。



感想 173

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。