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みずき君の圧に黒猫美人先輩はガタガタ震え出しちゃって、腰が抜けちゃってたみたいだった。僕は別の意味で震えてて、頬っぺたも痛いくらい膨れた。
ひどい!みずき君ひどい!!
僕、こんなに頬っぺた膨らませる事になったの、幼稚園の頃に好きだった特撮ヒーローとのタイアップの食玩がオマケについたソーセージをスーパーの食品売り場でねだって買ってもらえなかった時以来だよ。いや、あの時とはくらべ物にならないくらいムッとしてるからね、今の僕は。大好きな人の口からチビチビ言われた僕の気持ち考えて?
ちょっと涙目にもなってるのが自分でもわかる。
「ら、ラン?」
僕を見て、ハッとしたらしいみずき君が口を押さえたけど、時すでに遅しだよ。僕のセンシティブ・ハートはズタズタだ。
僕は、プイッとそっぽを向いた。グラウンドだからあちこちから僕らのやり取りを見てる生徒達が居たんだよ。そんな中で僕は猫先輩にも、みずき君にまでチビって言われたんだからね…。場の空気は険悪になった。猫先輩は腰抜かしてるし、みずき君はオロオロしてるし、僕は怒ってるし、収拾がつかない状態だった。
その時だ。へたり込んでいた猫先輩とみずき君の間にスッと助けに入った人がいた。
両腕を横に広げての、かの有名アニメに出てくる使徒っぽい威嚇ポーズを取る様は凛々しく、僕のファイティングポーズにも負けてない…。
それはミナミコアリクイ獣人の剣持 篤(けんもち あつし)生徒会長、その人だった。
「コイツが悪いのは見ていたが、それ以上はやめてやってくれないか。」
剣持会長は両手を広げたままゆっくりと周りを見回しながらそう言って、最後にみずき君に向き直った。
「見てたんスか。」
「放送席の辺りから見えていて、また長瀬がオイタをしているなと急いで駆け付けたんだが…間に合わず被害を…。すまない。」
放送席はグラウンドの校舎側だ。反対側の端っこのここまで来るのに時間がかかったんだな。アリクイだから急いでも限界があったんだ…。
「長瀬、お前という奴は…。どうしてあちこちで問題を起こすんだ?」
コアリクイ会長は猫先輩に向かってのんびりした声で言った。顔は『コラッ』て感じの表情だから、会長本人は厳しく言ってるつもりなのかもって思うんだけど、なんだろう。のんびりしてる。でも猫先輩は、ちょっとだけビクッとした。…え?怖かったの?てか、猫先輩って長瀬って名前なんだね。
どうやらコアリクイ会長は、猫先輩の知り合いみたいだった。
「本当に申し訳ない。コイツは昔から、仲の良いカップルと見れば掻き回したがってな。」
コアリクイ会長はみずき君と僕に謝ってくれたけど、一体猫先輩とどういう関係なんだろ?友達なのかな?
「…何で会長が謝るんですか。謝って欲しいのはそっちの先輩なんスけど。」
みずき君は猫先輩にきつい視線を投げて、猫先輩はビクッと肩を揺らしながらコアリクイ会長の後ろに隠れた。コアリクイ会長はそんな猫先輩の様子を見ながら、ハァと息を吐いた。
「俺はコイツの保育園からの幼馴染みなんだ。ほら、長瀬。お前もちゃんと謝れ。」
幼馴染みかあ。そりゃ今までさぞ振り回されてきたんだろうなあ。さっきの様子見てた限りで言わせてもらうと、猫先輩、人の話聞かない感じだもんねぇ。コアリクイ会長、尻拭い大変だっただろうなー。僕は同情の目でコアリクイ会長を見た。
コアリクイ会長って、その人望で会長に選出されたって聞いたけど、小さい頃から面倒見が良かったのかもね。
僕が1人で納得してウンウン頷いてたら、コアリクイ会長の後ろにいた猫先輩が急に叫んだ。
「謝らないもん!大体、あっくんが鈍いから悪いんじゃん!」
僕も、みずき君もコアリクイ会長も、周りで様子を見てるギャラリーもびっくりした。コアリクイ会長は少しショックを受けたような顔で、猫先輩に言い返した。
「俺?何故そこで俺が出て来るんだ…?確かに俺の動きは鈍いだろうが、今はそれは関係ないだろう。」
コアリクイ会長の悲しい自己分析に、うんうんと頷く僕達。だけど、猫先輩はブンブン首を横に振った。
「違うよ!鈍いのは心!!」
「こころ…?」
ザワつくギャラリー。首を傾げるコアリクイ会長と僕。それを見ていてまたイライラしたのか、猫先輩は顔を真っ赤にしてコアリクイ会長に向かって叫んだ。
「そういうとこ!ほんっとニブチン!あっくんがいつまでも俺の事、放っとくからじゃん!」
「放ってないからこうして…」
冷静に対応しようとするコアリクイ会長に対して、猫先輩は更にカーッとなってる。
そして、聞いた全員がびっくりしてしまうようなセリフを言った。
「俺が言いたいのは!いつになったら俺の気持ちに気づいてくれるのってこと!!…毎回、俺が他の人とキスしてるの見ても、本当に何も感じないの?」
「…えっ」
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
「俺、悪くないもん!昔からずっとアピってるのに、全然振り向いてくれないあっくんが悪いんだもん!うみゃーーーん!!!」
…猫先輩はシートに突っ伏して、泣き出した。
猫先輩からコアリクイ会長への、大々的な告白を聞いてしまって、困惑する僕達。びっくりし過ぎて威嚇ポーズを取ってしまうコアリクイ会長。
静まり返ったグラウンドに猫先輩の泣く声だけが響く中、無常にも昼休み終了のチャイムが鳴った。
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