67 / 86
67
しおりを挟む始業式を明日に控えた春休み最後の日。4月5日。
僕は17歳になった。
その日は夜中、日付けが変わった時にみずき君がメッセージをくれてたんだけど、僕がそれに気づいたのは朝起きてからだった。迂闊。すっかり寝落ちてた。でもね、寝る前までメッセージやり取りしてたから仕方なくない?僕、いつも22時には寝るんだもん。みずき君のお誕生日の日は張り切って起きたけどさ。
そんな訳で朝になっておめでとうメッセージに気づいた僕は、嬉しいけど申し訳ない気持ちでみずき君に返信した。
『ありがとう!!すぐ返せなくてごめんね!』
すぐに既読がついて、返事が来る。
『寝てると思ってたから大丈夫。気にしないで』
みずき君、オトナ。
『予定通り昼に行くから待ってて』
『わかった!待ってるね!』
みずき君は今日、お昼にウチに来る。夜は家族で誕生日のお祝いしてくれるんだけど、昼間は2人っきりでパーティーするんだ。お母さんもパートで夕方までは居ないから、僕が飲み物とか用意しなきゃ。
僕は布団に潜ったままポチポチ打ってたスマホを置いて、ベッドから起き上がった。
ようこそ、17歳の僕よ!
洗面所に顔を洗いに行って、顔を上げた時に見た自分の顔は、何となく昨日よりもシュッとしたみたい…でもないか。そう変わんないか。
顔を洗ってから、お腹空いたな~と思いながらキッチンに行ったら、お母さんが何か料理中だった。何かお鍋をぐるぐるお玉で掻き回してる。
「あら、おそよう。そんなんで明日からちゃんと起きられるの?」
むっ。確かにもう9時過ぎてるけどさ。
「大丈夫だってば。今日が最後だから良いじゃん」
「ほんとかしら~?
まあ、起きなきゃ瑞希君に担いでってもらえばいっか」
「……起きるもん。朝トレもあるし」
「まあ、それもそっか。あ、17歳おめでとう」
「ありがとう」
そうだよ。17と言えば、来年は成人。大人の階段待ったナシ。子供でいられるのもあと1年だと思ったら感慨深いなー。
「朝ご飯、早く食べちゃいなさい。食べたら食器は食洗機に入れといてね。お母さん、もう少ししたら仕事行くから」
「りょーかーい」
ダイニングテーブルの上にはハムエッグとサラダ、クロワッサンが10個くらい入った籠が並んでる。パンならやっぱり牛乳かなーと、僕は冷蔵庫を開けて牛乳を出そうとしたら無かった。
「お母さん、牛乳無い…」
「あっ、ごめん。今使っちゃったんだわ。リンゴジュース飲んでて」
「牛乳、使ったの?」
リンゴジュースのパックを手に取って冷蔵庫を閉めてから、お母さんの手元を覗きに行く。
「わあ、いい匂い!」
「グラタン作ってくから、みずき君と一緒に温め直して食べてね」
「ありがとう!!」
掻き回してたのは、グラタンの具材が入ったホワイトソースだった。グラタン大好き。お母さんのグラタンは具がたくさん入ってる。マカロニやエビや玉ねぎや鶏肉、コーン、マッシュルーム、ブロッコリー、あとジャガイモ。すっごく美味しい。一年中食べたい。
お昼からグラタン食べられるなんて、流石は誕生日~!
「さっきフィッシュカツ揚げてサンドイッチも作っといたから」
「最高!!お母さんありがとう!!」
僕はうきうきしながら朝食のテーブルに戻った。
お母さんのグラタンとフィッシュサンドイッチ、楽しみ。
昼になって、みずき君が来た。玄関開けたらニコニコしたみずき君が、
「Happybirthday、ラン」
って言ってくれて、ケーキっぽい箱を渡してくれた。
「ありがとう!!」
ケーキは用意するからって聞いてたけど、受け取った袋は何のロゴも無いオレンジ色の無地の袋で、どこのお店のだろう?って僕は内心首を傾げてた。
でも、その謎はすぐに解けた。
「見て良い?」
と聞いて、良いよって言われたから、僕はケーキの箱を袋から出した。やっぱり箱も真っ白で無地。それで、横から開けて出してみたら…。
「……みずき君、これ…」
「ランの作ったレシピで応用してみたんだ。」
「すごい!みずき君が?!」
それは、チョコクリームと白いホイップクリームでレッサーパンダの顔を模したケーキだった。白い耳もきちんと再現されてて、確かに僕が作った熊さんケーキと同じ要領だろうけど、そうとは思えない完成度だよ…!さすみず!!
「ありがとう!めちゃくちゃ嬉しい!!」
「良かった。昨日の内にスポンジ作って、今日は朝からクリームを…」
「すごーい、お店で売ってるのみたい」
僕は感心してあらゆる角度からケーキを眺め、後で絶対写真を撮ろうと決めてから、注意深く箱に戻して冷蔵庫に入れた。ケーキはね、グラタンの後だから。
後から聞いたら、みずき君は、この日の為に何度かスポンジケーキを焼く練習をしてくれたらしい。それもめちゃくちゃ嬉しかった。
「お誕生日おめでとう、ラン。これプレゼント」
「ありがとう、なんだろう?!」
笑顔のみずき君から差し出されたのは、手のひらに載るサイズの黒い袋。中に見えるのは、四角くて濃い青の箱……ん?袋に印字された金色のロゴに何か見覚えがあるなあ?
と思った僕は、まじまじと箱を眺めて、思い出した。これ、僕がみずき君にあげたチャームを買ったお店の箱だ!
そっかあ、チャームが気に入ってくれたから、お店の名前から調べて行ってくれたんだ。
僕は嬉しくて、早速袋から箱を取り出した。やっぱり同じだ。濃い青の包装紙、細い銀のリボン。それを解いて箱を開けると、キラキラした白金の何かがシャラッと出てきた。1箇所だけに小さなブルーの石が付いてて、オシャレ。でも、コレ何だろう?ブレスレット?
「きれーい…でも、これ何?ブレスレット?」
手に取って見つめながら正直に聞いてみたら、みずき君は不敵な笑みを浮かべながら答えてくれた。
「それはね、アンクレットだよ。足首に付けるアクセ」
「これがアンクレット…!!」
オシャレ番長なクラスメイトが休みの日に付けてるのは見た事あるけど、こんなに間近で見たのは初めて。
僕はじいっと見入った。カッコいいなあ、綺麗だなあ。でも、こんなの僕に似合わないんじゃないかな。
そんな僕に、みずき君は言った。
「これは絶対、左側に付けてね。」
「左?決まってるの?」
「そう、決まってるんだよ。」
そう言ったみずき君がニコニコしてるから、僕もつられてニコニコした。
「ありがとう!絶対絶対、左に付けるね!!」
「うん。…よろしくね?」
その後食べたレッサーケーキも美味しくて、最高の誕生日だった。勿論、夜の家族での誕生日にも、お父さんが買ってきてくれたホールケーキでお祝いした。
その晩、僕は寝る前に左足首のアンクレットの意味を検索して、なるほどと納得した。
恋人がいるって意味なんだね。お守りの意味もあるんだね。
今度のデートからは八分丈のパンツ履くようにしようかな。
102
あなたにおすすめの小説
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる