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お知らせいたします、お知らせいたします。
何と僕、春休み中に誕生日を迎えた吉田嵐太18歳。
人生初、後輩からの告白を受けておりまーす。
5月に入って数日が過ぎた、とある日の放課後。
その日はみずき君がヒート中で、僕は1人行動3日目だった。ヒートって人により来る周期に個人差があるらしいけど、みずき君はどうやら半年に1回くらいで安定中らしい。つまり、半年毎に1週間は僕はみずき君ロス生活を強いられてるって事なんだよね。まあ、みずき君も僕ロス生活なんだけど。
でもま、そんな期間は友達と帰ったりするからそんなに寂しい訳じゃないんだけどさ。
ぽつぽつメッセージも来るし、夜には短いけど電話をくれる事もあるし。
そんな感じでみずき君ロススクールライフを送っていた僕の靴箱に入れられていた茶封筒の手紙。最初、何かのお知らせのプリントかと思ったよ。それなら机に入れて欲しいなあって。靴箱に靴以外を入れるとか、不衛生じゃん。だって、靴だよ?辛うじて上履きを入れる上段に置かれてたけど、上履き側だから汚くない訳じゃないよね…。
(もう少し配慮が欲しいな~…)
なんて思いながら、僕はその茶封筒を手に取った。帰る為に昇降口に居た何人かは、普通に靴を履き替えて出て行く。誰も封筒も持ってないし、靴箱を開けた時に何か見つけた様子も無い。
どうやら茶封筒が入れられてるのは僕の靴箱だけみたいだ。
(……??)
何だろ。学校からのお知らせならわざわざ靴箱に入れないよね。……は、まさか、取り立て?!
…そういえば、と回想を始める僕。
こないだ購買前の自販機でリンゴジュースを買おうとしたら小銭が足りなくて、たまたま近くに居た同じクラスの三池君に20円借りっぱなしだったっけ…。て事は、請求書?!
そう考えが行き着いた僕は、茶封筒の中から3つ折りにされていた紙を抜き出した。
もー、三池君ってば。教室で言ってくれたら良かったのに…なんて思いながら。
チベットスナギツネ獣人の三池君の、のんびりした顔を思い浮かべながら紙を広げる。
「えーと、何なに?体育館裏で待ってます?え、嘘…」
三池君、そんなに怒ってるの?体育館裏って、不良マンガとかでよく見る治安の悪い呼び出しの時のやつじゃない?
そんなに怒ってるなんて…。
僕は慌てて財布の中の小銭を確かめて、取り出した20円を茶封筒に入れて急いで走り出した。向かう先は勿論、体育館裏。ボコられたら困るから誠心誠意謝罪しなきゃ、と思いつつ。
でも、着いた先の体育館裏で待っていたのは、今年の1年生の緑と黒のストライプのネクタイを締めた、僕よりずっと大きな耳の男子生徒だった。背は僕より5センチくらい低いけど、凛々しい顔立ち。
「……あれ?三池君の代理?」
「…誰ですか、三池って?」
僕の言葉にそう返してくる1年男子。三池君を探してキョロキョロ目線を泳がせる僕。三池君どころか、誰も居ないな。そりゃそうか、裏だし。
…この子、誰?
戸惑う僕に、その男子生徒は頭を下げて挨拶してきた。
「来てくださってありがとうございます、吉田先輩。
俺、1―Bの古峰 和弥です。獣種はフェネックギツネです」
「えっ、じゃあ、僕を呼んだのって君なの?」
僕はやっと理解した。
三池君の借金の取り立てじゃなかった事を。
古峰君はこくりと頷いてから、僕の顔をじっと見た。……まさかあの手紙って……
「…果たし合いの申し入れ?」
「違います。」
僕の推測は即座に斬り捨てられた。じゃあ、何なの?と、今度は僕が古峰君をじっと見た。そしたら、古峰君が少し赤くなって視線を逸らした。
(……??)
何だろう。 自己紹介されたって事は、初対面なんだよね?
首を傾げてたら、古峰君が真っ赤な顔のまま、僕に向かって頭を下げながら、なかなかの大声で言ったんだ。
「吉田先輩、俺、先輩の事が好きです!!お付き合いしてもらえませんか!!」
「え……」
す、き?おつきあ、い?
僕の意識は一瞬、宇宙に飛んでいたと思う。
(これって…もしかして、告白?)
初めての事で、頭も体もついて来ない。僕はポカンと古峰君を見つめてしまった。
毎年、今くらいの時期まではまだ誰と誰がカップルだとかの周知が新入生には行き渡っていない。だからみずき君に告白してくる1年生も、チラホラいるんだ。でも……、みずき君の間違いじゃなくて、僕なの?
でも、いつまでも答えない訳にはいかない。
「えっと…気持ちは嬉しいんだけど、ごめんね。僕、恋人いるんだ」
そう言った僕に、古峰君は少し黙った後、言った。
「いつも一緒に居る、あの大きい熊の人ですか?」
「うん、そう」
「…やっぱり、そうなんですね。」
古峰君は悲しいのか怒ってるのかよくわからない顔をして、顔をくしゃっと歪ませた。
「友達だから獣臭が付いてるのかと思ってましたけど、違ったんですね…」
「……将来、番になる約束してるんだ。ごめんね。でも、ありがとう」
「そう、ですか…。つがい…。それなら、敵いませんね。俺はベータだし」
そっか。ベータの人には、フェロモンマーキングはわからないから、僕とみずき君の関係性がわからなかったんだね。古峰君は泣きそうな顔になりながら、笑った。無理して笑ってるのがわかって、何だか申し訳ないような気持ちになった。
「突然だったのに来てくれて、ありがとうございました。…最初に好きになったのが先輩みたいな誠実な人で良かった。」
少しだけ俯いた後、顔を上げた古峰君は、もう最初のキリッとした顔に戻ってそう言った。
「告白して良かったです。気持ちの区切り、つきました。」
90度のお辞儀をして、古峰君は帰って行った。 その場に残された僕は、まだ少し混乱しながら古峰君の背中を見送っていた。
古峰君、すごい潔くてカッコ良かった。
でも、告白やラブレターすら書いた経験が無い僕が言うのも何だけど…告白の呼び出しで茶封筒は無いんじゃないかなって思うんだ…。
次は茶封筒はやめた方が良いよって、心の中で叫んでた。
しかし僕に告白ねえ、貴重な体験しちゃったな、なんて苦笑いしながら帰った僕だったけど、まさか翌日も違う1年生に告白されるとは思わなかった。しかも、それを見ていたクラスメイトの口から休み明けのみずき君にそれが伝わって拗ねられてしまうなんて事も、ちっとも予想していなかった。
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