ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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76 (壱与side)



今回もランの匂い付きパンツと2日替えてない枕カバーとシーツで何とかヒートを乗り切った週明け。
俺はクラスメイトの数人からショックな事を聞いてしまった。

ランが1年生に告白されてしまったと。しかも、2人に。

恐れていた事が…いや、別に恐れてはいないが。
どんな相手が来たって、俺のランがふらつく訳が無い。ランは少し幼いところがあるけど、純粋だし、人の気持ちを弄んだり浮気出来るような軽薄な人間じゃない。
だからランの気持ちを疑ってる訳じゃないのに、イライラするような、焦りにも似たこの気持ちは何だろう。ランが俺以外を見る事なんて無いって信じてるのに。
俺が妙な奴らに付き纏われていたり、他校の女子に告白されていた時、ランはこんな気持ちだったんだろうかと思ったら、拗ねるのも筋違いだとわかるのに。

それに、自分の中にそんな気持ちが生まれてる原因はわかってる。
ランが確実に成長しているからだ。身長も伸びて来て、手足もすんなり伸びて、俺との目線も随分近くなった。もう俺が屈まなくても、キスが出来るくらいに。
くりっとした目の、幼さの残る可愛い童顔に、170センチを越した身長。多分、もう少しは成長しそう。3年までずっとSクラス維持だから成績だって優秀だし、その上将来有望なアルファだ。しかも気立ても良い。今はまだあどけなくて頼りないけど、あと2、3年もすればいっぱしのアルファに成長するだろう。
流石は俺のアルファ、って言いたい所だが…それは更に余計な虫を誘引する事になるんだよな。
わかっちゃいたけど、もどかしい。自分のアルファが魅力的なのは嬉しいけど、要らない嫉妬もしてしまう。俺の男に勝手に近寄るなと威嚇してしまいそうだ。
 
余裕無くてみっともない、こんな俺。




「ホントだよ、すぐに断ったんだから。どっちの子にも、将来を約束してる恋人がいるって、ちゃんと伝えた!」

学校帰りに寄ったランの部屋。情状酌量を求めて、泣きそうな顔で俺の袖を掴んで見上げてくるランは、俺から見ればまだまだ小さくて可愛い。成長したと言ったって、華奢な少年の体だ。俺が本気になれば簡単に組み伏せてしまえる。組み伏せて、無理矢理感じさせて、勃たせて、それを俺の中に…。

ランを好きにしたい。ランに好きにされたい。めちゃくちゃに。

無邪気なランを前にそんなあさましい妄想を、もう何百何千回しただろう。

「…ホントに怒っちゃったの、みずき君…」

じわりと潤んでいく大きな茶色い瞳を見て、やり過ぎたと思った。ランが根気強く何度も謝ってくれるから、つい調子に乗ってしまった。機嫌を取られるのが嬉しいなんて、俺もまだまだガキの証拠だ。

「…別に、怒ってないし」

ランに縋られるのは、暗い歓びに似たものが込み上げてきて気分が良いけれど、泣かせたい訳ではない。拗ねるのもここらが引き時だ。

「……ホント?」

ランが泣きそうな顔で、探るように俺を見る。そういうランの表情に弱い俺は、完全にノックアウトされた。
そっぽを向いていた体をランに向けて、抱きしめる。

「ほんと。…ただまあ、ちょっと面白くなかっただけ。タダの嫉妬だ」

俺の恋人に、勝手に近寄られて腹を立てたけれど、告白されただけのランは悪くない。そして、ランを好きになったその子達も、本当は悪くないってわかってる。人の口にも心にも戸は立てられない。
告白してきた子達は、ランが断るとちゃんと潔く諦めてくれたという。俺の時のように食い下がらないのは、きっとランがキッパリと、でも誠実に断ったからなんだろう。やっぱりランは良い男だ。
それに、告白してきた2人はどちらもベータだったらしいから、俺が付けておいたオメガフェロモンが効かなかったんだ。俺がヒートで離れて3日も経っていたから、獣臭も薄まってしまっていたんだろう。ラン自身もアルファフェロモンで圧を出すタイプじゃないから、ガードはガバガバだったに違いない。

親しみ易いのだ、ランというアルファは。見た目も可愛いから、付け入る隙があると思われてしまう。オメガじゃなくたって欲しくなるだろ、こんな可愛い子。
だから俺が必死に守ってきたんだ。俺がみつけた、俺のアルファだ。俺のもの。
鳶に油揚げを攫われてたまるか。そんな気持ちで。


まだ俺の腕の中に収まってくれるサイズのランは、今度は胸元から俺を見上げて安心したみたいに笑う。

「大丈夫だよ?僕が好きになるのは前もこれからもみずき君だけだもん」

背中に回っている細い腕。前よりも込められる力が強くなった。でも、俺にくれる言葉は変わらず優しくて、一途だ。

「僕の未来には、みずき君ひとりだよ」

そう言ってくれる声も少し低くなったようで、耳がじんと痺れた。

「…そうだな。俺だって、ランだけだ。何があっても、俺にはランだけ」

熱に浮かされた睦言のように答えると、ランが笑った。俺の腕の中で、笑った。

グレープフルーツを、甘い蜂蜜にびたびたに漬けたような甘ったるい香り、蕩けるような笑顔。


ああ、愛おしい。食べてしまいたいほど。全身余さず舐め尽くして、身も心もひとつに溶けあってしまえる日が待ち遠しい。早く、早く。

こんな欲まみれの俺の、どろどろした腹の中を知っても、それでもお前は笑ってくれるの?


愛しい俺の、俺だけのアルファ。



俺が18になって、2人で高校を卒業するまで、あと11ヶ月。





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