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非常識なΩ (佐古視点)
しおりを挟む「…ええ~…」
目を覚ますと、真っ白い天井。
…えーと、…?
状況把握できなくてぼんやりと薄目のままでその天井を眺めていたら、不意に視界に影がさす。
「目ぇ覚めた?大丈夫?」
「…あづさ…?」
弟の梓と家政婦の木田さんが覗き込んできたがその表情は曇っている。
「んー…」
なんだろ…現実味が無い。
実はまだ目が覚めてないのかも。
たまに見る、夢の中で目が覚めたってやつかも。
ふわふわした気分でまた目が閉じそう。
「気分悪くない?」
梓の声に遠のきかけた意識を引き戻される。
あ、やっぱ現実か、これ。
「うん…悪くはない…。ここ、病院?」
「そーだよ。じいちゃんセンセのとこ。倒れたって連絡が来た時はビックリしたよ。近くにいた人達が直ぐに救急車呼んでくれたから良かったものの…。
先刻までじいちゃんセンセいたんだよ。
特に異常は無さそうだけど、気になるようなら精密検査受けたらどうかって言ってた。」
「大袈裟。
じいちゃんセンセが大丈夫って言うなら大丈夫でしょ。帰るワ。」
「…呑気だな~。」
じいちゃんセンセ、とはウチの主治医の葛城医師である。
結構大きなこの病院の元院長で現在は名誉院長。
要するに息子に病院継がせて悠々自適に暇を持て余している御年寄だ。
ただまあ、腐っても名医なので診断は信用して良いだろ。
だからやんわり検査は拒否したのに、弟は納得いかないって顔。
ついでに木田さんも心配顔。
でも気分は本当に悪くない。寧ろちょっと何かよくわからない甘い余韻がある。なんだっけ、何で倒れたんだっけ…何かしてたっけ…?
ーーーと、記憶を手繰る作業に入ったところで急に覚醒した。
そうだよ!僕、宗像と話してて、…えーと…
ヒート中だから寄るなって…。
ハッ、と思い出す。
(ヒート中って割には宗像、殆ど匂いがしなかった…けど…)
そうだ、本人はヒートだって言ってた。
だから俺は、何故自分に感知出来ないのかと匂いを確認しようとして…。
宗像が振り返って、ちょっと唇の端が上がってて、綺麗だなって思って…ゾクッとして…
途端に何処からか、すごい“香り”が…
そこからの記憶は途切れているから、そこで何かあった…のか?
はっきり思い出せない。
もどかしくて目を閉じる。
宗像はΩだ。
でも言われなきゃ本当にわからない。
何なら、前情報無しで100人に聞けば100人がαだと答えるような、α以上にαっぽい奴だ。
身長はあるし体型もすんなりした細身のように見えて、しっかり筋肉質だし、顔立ちなんか、美形αを見慣れた俺でさえ3度見したくらいの整いよう。
高校の頃に親が見合いを申し込んでは断られていたから画像で顔は知ってはいたけど大学で実物を初めて見た時は魂を抜かれるかと思った。
リアル宗像は、そりゃもう…。
何せ、肌から違う。マジの陶器よ。宗像は陶器で出来てる。
だってどんだけ至近距離でも、真珠色の肌には毛穴ひとつ見えないもん。
髪は明るめのアッシュブラウン。瞳の色も蜂蜜のようにとろりと柔らかい色で陽に透けると金色に見えて神々しい。
大天使なんじゃない?人間じゃなくない?もう。
声は…低くて柔らかいトーン。冷たく返事を返して来る時ですら、耳に心地好い。
宗像ボイスのエンドレスアラーム作ろうかな…。
入学前は親に 番になって貰えるように口説き落とせ、項噛んで来い!ってせっつかれてたけど、リアル宗像に会ってしまった今では俺の項噛んで欲しいくらい宗像Loveだ。
もう俺が宗像家に入りたい。
親…というか、通常、αの多い一族ってのは、より優秀なα遺伝子を獲得していく確率を高める為にはΩの番が必須だと考えている。
それも、できれば、より優れたΩ。
しかしそこは只でさえ少ないΩ。
ぶっちゃけ争奪戦なところもあるから、運命の番だとかなんとか言ってられない。そんなラッキーを期待するよりは、Ωとわかれば取り敢えず口説いて番婚。それでも十分幸運なのだ。
そんな状況だから、Ωが自分のバース性を明かす事は結構危険で、Ωとわかれば隠す事も多い。隠しても、とある周期で数週間の休みを取ればバレちゃうから、高校を卒業しても大学進学を諦めたりまともな仕事につけなかったりで、家事手伝いという名のニート化していく事がザラらしい。
そんなΩ達の、結構悲惨だな…って現状の中、学生時代から色々と有名で、次世代を担うαの1人になるだろう、と期待されていた宗像のΩ発覚はセンセーショナルな事件だった。
というか…この世の常識を覆された感じ。
だって、確実にαだろ…、と言わんばかりの実績を各方面で積み上げていた天才が、まさか…まさか、Ωって。
それに宗像って、超絶美形でひれ伏したくなるほど綺麗だけど、Ω特有の中性的な感じはまるで無い。
(え…どういう事…?何かの間違いじゃないの?検査の手違いじゃないの?)
皆、そんな気持ちだったと思う。
皆がパニックに陥ってた中、宗像本人だけは飄々としてたって聞いたけど、そゆとこ流石宗像ってゆーか。
ともあれ、そんな風に宗像以外が勝手に世界的にショックを受けてた訳だけど、時が経つ毎に様子が変わっていった。
(あれ?もしかして、あの超優秀なΩをウチの息子の嫁(番)に獲得出来れば、ウチって前途洋洋なんじゃ?)
かくして、無数のα家系の一族達から求婚や見合いのオファーが宗像家に殺到したという…。
それでも流石は宗像、降るような縁談話全てを蹴った。
僕も蹴られた。
大方のΩなら、より良い環境で保護されて安泰な人生を望むもの。あれだけ財力と権力を備えた良家からの見合い話が来れば歓喜するもんなんじゃないかと思うので、目すら通さず全てを却下したところは、流石、僕の宗像だなと感嘆の極み。
しかもその後も宗像は、高校から始めたという剣道でインターハイ出場し、剣道個人優勝2連覇を果たしたし、取り敢えず皆が受けるからと受けたTOEICではSpeaking & Writing込みの1390点満点を叩き出し、その他、宗像在学中の内に学校としての実績を積んどきたい担任や教師陣から頼み込まれた数々のコンペやコンテストをシレッと総ナメにした。
そして、日本と実家から出たくないってだけの理由で、国内の国立トップ大学に当然の如く首席合格。
そして現在に至る…。
…え?宗像、もう神じゃない?
大天使どこじゃなくない?
もう僕の旦那様になってもらうしかなくない?
只ひとつ、気になっている事。
宗像は、αの僕のフェロモンに全く反応してくれない。
どれだけ全力でオトしにかかっても、成功した試しがない。
他のαに反応したという話も、聞かない。
逆に宗像からは、ごくたまに仄かに良い匂いがする事はある。
ぼおっと心地好くなってしまうような…。でも、殆ど気にならない程度の…。
でも、僕が知ってるΩ達の匂いとは、全然違う種類のような…気がするんだよなあ…?
そこまでつらつらと考えて、ふと気づいた。
(宗像、抑制剤飲んでないって言ってた。)
ヒート中に抑制剤無しで、平気で出歩けるΩなんて聞いた事が無い。
やっぱり宗像は、この世界の常識が通用しない非常識なΩなのだ。
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