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純生
しおりを挟む「…抑制剤、飲んでないの?」
自制心を保つのに、精一杯。
純生は努めて冷静を装って聞いたが、内心切羽詰まっている。
こんな兄の匂いは知らないし、物心ついてからはこんなに間近に兄の裸体を見る事も無かった。
兄は高校の半ばくらいからはこの離れに住むようになっていたし、たまに家族で食事を取ろうと集合をかける時か用事がある時くらいしか、母屋には来ない。
家族仲が悪い訳では無い。
棲み分けが出来ているだけだ。
冬弥は学生ながらに多忙で活動時間も家族とは異なる事もあるし、気を使っているのだと皆思っている。
幼い頃から冬弥は純生の憧れの存在だ。それは冬弥がΩである事がわかっても揺るがなかった。
バース性がどうであろうと、冬弥という個の性質が優れている事は変わらない。
美しく、強く、優秀な冬弥は、αである純生から見ても男としてこうなりたいという理想そのものだった。
両親に言われた事より、兄である冬弥の言葉の方が素直に聞けた。
それは神格化に近かった。
冬弥の崇拝者はこの世に掃いて捨てるほどいるが、弟である自分は只の有象無象の崇拝者ではない。冬弥にとっても特別なのだと、純生は優越感さえ抱いている。 そして実際、そうなのだ。
只、それらの有象無象よりも自分が引けを取るとするならば、そいつらは兄と寝られて、自分は出来ないと言う事。
だって、兄弟だから。
純生は冬弥の性癖が男性に偏っている事をとうに知っていたのだ。
誇らしい筈の血の繋がり。それに対して成長と共に忌々しさを感じ始めた事に、純生は困惑していた。
純生は冬弥と寝たいのだ。
だが兄弟と寝る事がモラルに反すると純生だって知っている。
冬弥の身内に生まれた事が幸運なのか不運なのか、最近の純生にはわからなくなっていた。
冷たい水ににどれほどの間打たれていたのか。
シャワーを止めて抱え上げた冬弥の体は冷えていた。
なのにバスタオルに包んで水気を取ると、みるみる体温が上がっていく。
風邪でも引いての熱なら未だ良かったのに、これは 違う。
「熱い…、暑い…」
濡れ髪のままでいるのは不味いだろうと、髪の滴を拭おうとするのに、冬弥はイヤイヤと子供のような幼げな仕草で頭を振って、全く聞かない。
そしてあろう事か、ベッドに体を投げ出して悶える。
体の熱が戻っていくと匂いも発散されていくようで、どんどん濃厚になる。純生はクラクラするそれに、何とか耐えていた。
なのに皺の寄ったシーツの上の兄は扇情的過ぎて目眩がする。
下半身に血流が集まり過ぎて、はちきれそうな股間が痛い。
でも、こんな兄を襲う訳にはいかないではないか。
そんなのはケダモノのやる事だ…。
良くも悪くも、純生は純粋だった。
だが、Ωの匂いに呼応するように、純生自身のαの匂いも発散されてくる。
朦朧となっている冬弥は、それに反応した。
のそりと動き、純生に近づき、しなだれかかるようにその首に両腕を回した。
兄の熱い唇が唇に触れた瞬間、目の前が真っ白になる。
熱い、柔い、それなのに弾力がある。
冬弥の吐息は甘く濡れていた。
酔うほどに濃い冬弥の匂いが部屋中に充満している。
純生は兄に、好き放題唇を吸われ、舐め回された。
悦過ぎて張り詰めたモノがイきそうだ。
そしてその怒張がパンツ越しに冬弥の手にやわやわと撫でられた。
「…純生、これが欲しい…。」
「……。」
拒否するには、兄は美しく、魅惑的過ぎる。
抗える者がいるのなら、ソイツはきっとインポか神だ、と純生は冬弥に求められるまま、ベッドに押し倒された。
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