一般人な僕は、冒険者な親友について行く

ひまり

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121 念願のキノコダンジョン突入!

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 ダンジョン【魅惑のキノコ】は、サンドラス王国の王都から徒歩で行ける場所にあり、草原のど真ん中に佇む山のダンジョンである。
 地上五階、地下二階からなるダンジョンの内部は森になっており、生い茂る木々や倒木が行く手を塞いでいる。また、ところどころに流れる小川が土を湿らせ、足を取られることもある。
 そんなダンジョンの様子を確認した聖は納得したように頷いた。

「うん、キノコ栽培には最適な場所だよね」
「……これは生えるよな、キノコ」

 鬱陶しそうに木の枝を手で払いのけた春樹も同意して、辺りを見回す。全体的に薄暗く、じめっとしている。キノコには最適だろうが人間には鬱陶しくて仕方がない、そんな空間だった。

「もうすぐ終わりそうだな」
「あ、ほんと?」

 視線の先には、少し離れた場所でルーカスに教えられながら魔物と戦っている友康の姿がある。
 異世界仕様の動きやすい服装に身を包んだ友康の武器は、手に嵌めた革製のシンプルな手袋と、同じく革製の靴。それに魔力を纏わせて戦うのが友康の戦闘スタイルであった。

「あ、終わったな」
「え?」

 春樹の言葉と共に魔物の姿が見えなくなる。
 聖の目には、友康がしゅっと動いてしゃっと何かをしたら魔物がいなくなっているようにしか見えない。だが、春樹にはきちんと友康の動きが見えているようなので、戦闘職とそうじゃない職業の差なんだろうなと、聖は若干の諦めと共に納得していた。

「今回もドロップ品は出なかったみたいだな」
「そうだね、残念」

 今、友康が戦っていたのは巨大な椎茸姿の『シータケ』であり、先ほどは巨大ななめこ姿の『ナメナメコ』と戦っていた。巨大なだけで、見た目がそのままというのもあり緊張感は欠片もなく、友康は若干頬を引きつらせた後、無言で戦いだしていた。
 その気持ちは聖も春樹もとてもよく理解できた。
 そんな魔物だが、ドロップ品を落とすことはとても稀で、滅多に手に入らないとのこと。
 てっきりキノコはドロップ品で手に入れるのだと思っていた聖は、これじゃあキノコが食べれない……と気落ちしたが、なんとキノコは普通に生えていた。聖が知っているものよりサイズはやや大きめで、何故だか魔物と同じ名前のうえ、主夫の目によると『いつか一人前の魔物になってダンジョンデビューするかもしれない』との記載があるのが気になったが、そこをスルーすれば夢の採り放題である。
 そのため、聖と春樹は今、周りを警戒しつつもせっせとキノコ狩りに勤しんでいた。
 友康の補助のために来たんじゃないかと言われそうだが、友康もルーカスも全く気にしていない。友康は基本ルーカスに教えてもらえばいいと思っているし、ルーカスに至っては「今夜はキノコのフルコースだな!」と大歓迎状態であった。

「ヒジリ、ハルキ、移動するぞ!」
「はーい」
「今行く」

 友康の戦闘が終わり、さらに奥へと進んでいくためルーカスの声に二人は手を止め駆け寄る。

「友康、魔力は平気? 何か食べる?」
「そう、だな。頼む」

 聖の言葉に何かを確認するように視線を彷徨わせた友康は、頷く。

「はい、とりあえず串肉ね」
「助かる」

 受け取った串肉を、友康は歩きながらもぐもぐと食べ始める。
 ちなみに今は昼を少し過ぎたところであり、一時間ほど前に早めの昼食を取ったばかりのため、友康以外は誰も食べない。だが友康は食べる。
 何故こんな状態になっているのかというと、原因は友康の体質にあった。


 昨日、昼には戻って来ると言っていた友康とルーカスは一向に戻ってこず、夕方戻ってきたと思ったら何故だか友康はルーカスに肩で支えられた状態であった。
 顔色は悪く、動くのもやっとな様子に驚き駆け寄った二人の届いたのはルーカスの苦笑と盛大な腹の虫の音。

「「……は?」」

 そんな意味不明の中ルーカスから言われたのが「とりあえず何でもいいから食べさせてやってくれ」との言葉だった。
 さらに疑問符が頭の中を駆け巡る聖だったが、言われた通り居間のテーブルの上に作り置きしておいた料理を出していき、友康の食べる量を見て、さらに追加で作って出していく。
 その間、ルーカスから説明を受けたのだが、原因は魔力切れにあった。
 友康の症状はお腹がすくこと。
 特に珍しい症状というわけではない。珍しかったのは、魔力回復薬が効きにくいという体質にあった。
 どのくらい効きにくいのかというと、焼け石に水で猫に小判。つまり、ほんのちょっぴり回復したような気がしなくもないというか、回復したらいいな……という感じであった。
 なので仕方がなく自然回復を待つことにしたのだが、残念なことに友康は自然回復も遅いことが判明した。大抵は一晩眠れば全回復しているのだが、三分の一ぐらいしか回復していなかったのだ。
 それでも魔力切れでお腹がすくという症状の人は、食べることで多少ではあるが回復が早まるということで手持ちのものを食べつつ、更に魔力をなるべく使わないようにしながらチュートリアルを続けていた。
 が、前日に聖と春樹に聞いただけで魔力管理にまだ慣れていなかった友康はうっかりと再び魔力切れを起こし、しかも運悪く手持ちの食料も尽きてしまった。
 ルーカスもまさかこんな事態になるとは思わず、それほど用意していなかったのである。
 そうして完全に動けなくなってしまった友康が多少でも動けるようになるまで待った結果、帰宅時間が遅れ、その日に行くはずだったダンジョンは翌日に持ち越されることとなった。
 ちなみにその日に友康が食べた量は、凄かった。もとから見た目よりもたくさん食べる方ではあったが、どう見てもあり得ない量が吸い込まれるように消えていた。
 その後、ルーカスはギルドの承認を得て食材の買い出しに走り、聖はその食材を元に減った分以上の作り置きをひたすらに作ることになった。
 そして現在。
 友康は魔物を倒す度に魔力量を確認して、歩きながら食べつつ少しでも回復するようにしていたりする。

「にしても、よく入るよね。気持ち悪くなったりしないの?」
「しないな」

 友康は即答し、そして言葉を選びながら口を開く。

「なんというか、魔力の総量と腹の減り具合が連動していると言ったらいいか……魔力が減るとその分腹にも余裕が出来る」
「……うわぁ……」

 聖にはそれしか言えなかった。なんというかコメントのしようがないが、燃費が悪い。

「とは言っても、魔力が減らなくても普通に腹は減るがな」
「なるほどー」

 どうやら魔力が減ってお腹がすくのと、時間経過でお腹がすくのは別らしく、友康の感覚的にもそれには差があるようだ。
 そんな二人の会話を聞いていた春樹だが、ふと何かに気付いたようにルーカスに尋ねる。

「なあ、ルーカス。魔力回復薬が効きにくいとなると、他のはどうなんだ? たとえば体力回復薬とか」

 その言葉に、聖と友康もルーカスに顔を向ける。

「あー、そうだったな……。たぶんだが、その手の類のものは全般的に効きにくい可能性があるな」

 ルーカスが困ったように頬を掻く。

「まあ、その品質にもよるんだが。品質が高いものだと多少は効く、かもしれないという状態だろう」

 それでも最高品質のもので、一般的な品質程度の効果があればいい方だろうというルーカス。それに静かに頷いた友康は、では、と問う。

「回復魔法の類はどうなりますか?」
「……恐らくそれは問題ないだろう」

 だが、とルーカスは付け加える。

「回復系の魔法を使えるものは、あまりいない。だからそれを頼りにするのはやめた方がいいだろう」
「……わかりました」

 体質的な問題だが、なんとも友康には厳しい異世界である。
 回復薬が使えないということは下手をすると命に直結してしまうというのもあるが、何よりも現実的な問題として食費が膨大になるだろうと、友康は追加の串肉を食べながらそんなことを考えていた。
 そんな友康を見ながら何かを思い出した聖はポーチから目的のものを取り出す。

「あ、あった『これで徹夜もどんと来いDX』!」

 煙突掃除の依頼時に追加で貰った報酬で、使う気はなかったものだが、そのラベルの効能に体力回復とあったのを思い出したのだ。
 それを聖は友康へと差し出す。

「はい、友康。たぶん最高品質だよ――僕は使う気になれないけど」
「そういやあったな。ほれ、俺の分もやる――たぶん副作用に害はない」
「……」

 それを暫し無言で眺めた友康は、目を細め、

「それを笑顔で差し出すのがお前たちだな――まあ、貰うが」

 そして受け取った。

「最終手段だな」
「つか、最終兵器だよなそれ」
「でも友康の体質だとちょうどいい感じになるかもよ?」
「だといいな」
「そうだな」

 などと会話する落ち人たちを、ルーカスは遠い目をしながら無言で眺める。
 渡す方もどうかと思うが受け取る方もどうかと思う。だが、これが落ち人なのだろうと無理やり納得することにした。
 ちなみに、一つどうですか? と最終兵器で最終手段な、恐らく最高品質のそれを差し出されたが、ルーカスは丁寧且つ即答でお断りした。





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