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26日目
しおりを挟む26日目
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この日は香りで目が覚めた。
なんだこの匂い。くんくんと鼻を鳴らす。
火置き場に火を焚いて少し明るくなった洞窟内で目を凝らす。地面についた手の感触が気持ち悪い。
ぐじゅぐじゅしている。
…………なんだこれ。
恐る恐る濡れた手を顔に近づける。
酸っぱい匂いがした。
―トマトだ。
ベタベタして気持ち悪い。たまりかねて猛吹雪の中外に出て手を洗う。手を冷やし過ぎてキーンとして痛い。
さっぱりしたので洞窟内に戻るとトマトの香りが充満していた。
薪に火を灯して様子を見る。
どうやら下の方に生っていたトマトのいくつかが熟れすぎて落ちてしまったようだ。
落ちたトマトを手で拾いインベントリに入れていく。実が崩れてぐずぐずだ。あらかた片づけたのでピュリフィケイションと唱え匂いを消した。
ついでに手も綺麗になった。外に出る必要なかったな。
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気を取り直して実り具合を確認する。
一番下に実っていたミニトマトの大半が落下していた。
……普通の異世界物のラノベだと、実ったらずっと食べごろのままってのが多いが……これは普通に落下するのか。
まぁ……そりゃそうだよな。
これからは花が咲いたらウォーターの数を少なくするのが無難だな。
プチプチと残ったトマトをインベントリに収納していく。
途中で火置き場の火が消えたので焚きなおす。
次に下から二番目の房。
火の灯りに照らされた実は赤く張りがあり、鈴なりに実りまるでブドウのようだった。
このまま飾っておきたい。そう思わせる造形美があった。
根元から手折り丸ごとインベントリに収納した。
続いて下から三番目の房。
こちらも見事に鈴なりだったが、色づきが悪い。緑から赤に変わる途中らしい。
この分だと夕方には採れそうだ。
今回生ったのはこれだけか。確か摘芯しなきゃいけないんだよな。
背伸びをして先端を摘んでおいた。
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トマトの苗付近の壁に刺していた薪を手に取り、サツマイモの世話に移る。
インベントリから柄杓を取り出し、苗A1A2に向かって水置き場の魔力水を2回づつかける。
インベントリからバケツを取り出し、インベントリから魔力水を注ぎ入れる。苗B1B2に向かってそれを柄杓で同じく2回づつかける。
後は柄杓とバケツを仕舞い、それぞれの葉を捲り新たに生えてきた根を引っこ抜いていく。水置き場に魔力水をインベントリから補充しておいた
続いてアイスプラントの世話だ。こちらはそろそろ限界かな?この三株に魔力水をかけ脇芽を摘み食む。
今回は花芽は取らずそのまま咲かせることにした。
最後にトマトの苗二つ目。
そろそろこちらにも支柱が必要だ。
火置き場の前に行き、一つ目と同じような支柱を作った。背丈ほどの細長い棒を三つ、短い棒を6本。
ピラミッド型にするべく地面に刺していく。三本とも刺し終えたら続いて短い棒をくっつけていく。
っとその前に、もう一回百科事典で確認する。
まずトマトは下の葉が7~12枚出ると第一果房が出来る。第一果房は実がなる房のようなもの。
第一果房が出て葉が3枚上についたら次の第二果房が出来る。同じように第二果房の上に葉が3枚付いたら第三果房が出来る。できる果房の数はその株によってまちまち。できるトマトの個数も果房によってまちまち。
開花からおおよそ40日~45日程で熟す。とあった。最後の花が開花したら摘芯をするらしい。
それを踏まえてトマトの苗を見る
下から葉が10枚生え第一果房が出来ていた。その上に3枚生え第二果房まで出来ている。その上の葉はまだ1枚だけ。
茎をサツマイモの蔓で支柱に緩く結わえていく。何か所か結わえてついでに葉の根元についた脇芽を欠く。この苗はまだ成長中なので脇芽も小さく見分けやすかった。欠いた脇芽はインベントリに収納しておいた。
後はウォーターで水を2回やっておく。
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昨日漬けておいたトマトの脇芽の様子を見る。魔力水が空になっていた。目を疑った。
一本手に取って観察してみる。
切断した側の方から白いものがほんの数mm出ていた。根なんだろうか?
他の脇芽も見てみると同じように白いものがついていた。
もう一日様子を見るべくウォーターを唱えておく。
インベントリからサツマイモの苗に水をやるのに使ったバケツを取り出す。
先ほど収穫したミニトマトをバケツに出す。房ごと切り取ったミニトマトも一緒に出す。もうちょっと愛でたかったがしぶしぶ捥いでいく。
バケツの中にウォーターを唱え手で丁寧に洗う。個数は全部で18個。大きさはバラバラだ。
サツマイモを焼くのに使った、薪で作った串を取り出しなるべく細いものを6本選ぶ。
トマトのへたを取り太いけど串に刺していく。
1本につき3個刺せた。
火置き場の前の土に刺して炙っていく。
今のうちに器を作ろう。
両手程の大きさになるよう土を盛る。
魔力を込めて固めていく。地面においても転がらないように高台(こうだい)も付けておいた。
ぽんぽんと土を払いインベントリに入れておく。
外の雪でお椀を洗う。最後に先ほどトマトを洗った水で濯いだ。
バケツはインベントリに仕舞っておいた。
なんの加工もされていない薪とナイフをインベントリから取り出し削り箸を作っておく。
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そろそろトマトがいい感じに焼けた。
一つ串を取ってみてみる。火によってトマトの皮が縮み美味しそうだ。
焼きトマトを串から外し先ほど作ったお椀に落としていく。串はインベントリに入れておく。
トマトに塩を少しまぶし味を整える。頂きます。
箸で皮を破くと中からトマトの汁が溢れてきた。中まで火が通っておりまるでトマトスープのようだ。
お椀に口をつけて一口飲む。
……旨い。
熱されたことで甘みが増しトマトの酸味と旨味と塩が混じり丁度良い塩梅だ。体の芯まで温まる。
ああ美味しい。
あっという間に飲み干してしまった。残った焼きトマトはインベントリに仕舞っておいた。
猛吹雪の中外に出てお椀と箸を洗いインベントリに仕舞っておいた。
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この後はトマトが収穫できるまで塩を増やす事にした。
その前にMPが溢れないよういったん魔力水に変えインベントリに蓄えておいた。
夕方までかかって塩を1320kg増やすことが出来た
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トマトの苗の様子を見る。
第三果房の実が熟していた。プチプチと収穫しる一粒そのまま食べてみた。やっぱりトマトだ。酸味が効いてて美味しい。思わず笑みがこぼれる。すべて収穫しインベントリに仕舞っておく。
この苗はもう果房が無いので引っこ抜いてインベントリに収納しておいた。
余った魔力は魔力水にしインベントリに入れておいた。在庫は水置き場に8、インベントリに24。
今日も一日働いたと休むことにした。
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