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第3章 ダンジョン脱出から約二週間、早朝に誘拐されました‼
第二十二話 私、旅立ちます‼
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「……そうですか、ではやはり彼女が…………。ユーナさん、もう一度お願いします。私達と一緒に世界を助けてくださいませんか?」
今度はクランの皆の前でお願いされた。断ろうにも断れない。結菜は近くに寄って来たロンを腕に抱きながらなんとか最後の抵抗を見せた。
「でも……、ここを離れたくないし、……知らない人だし…………」
「大丈夫ですよ?転移魔法陣さえ使えばすぐにここへ来られますから」
「転移魔法陣、ですか?」
「はい」
賢者が安心してくださいとばかりに結菜に笑いかけながら言ってくれる。ありがたい、ありがたいのだが…………。結菜は外堀だけでなく全ての堀が埋められた気がした。
「安心しろ。行くってもどうせ王都だ。俺も近々王都に出かけるからまたすぐに会える」
アルがくしゃくしゃと結菜の頭を撫でる。にかっと笑う顔に結菜は何だかほっとした。お父さんみたいと思ったのはちょっぴり秘密である。
王都に行くか行かまいかまだ迷っている結菜に賢者が優しく微笑んだ。印象が和らぎ優しく感じる。
「無理にとは言いません。あなたのタイミングに私達は合わせます。いくらでも待ちますから、だから安心してください」
勇者も無表情ながらも結菜に気遣いを見せる。それが結菜の少しでも行きたくなる理由となるように。楽しみとなるように。
「王都なら魔導書もたくさんある。お前に魔法を教えることもできるし、何より安全だ。だから心配するな。それに王都には世界樹があるから魔物も来ない。あそこなら魔物からお前を守れる」
真剣な声だ。
(……魔物。…………そっか。この世界って本当に魔物がいたんだね。やっぱり現実なんだ)
何処か物語のように感じていた魔物という存在が現実のものとして再認識される。実際、この世界において魔物の被害は馬鹿にできないほどの規模であった。
ここに来てから町からも出ていないので、結菜は全くそのことを知らなかった。ダンジョンの他に外のことは、この世界のことはほとんど知らないのだ。アル達が少しは教えてくれてはいたが………。
「お前はただでさえ魔力保持量が多い。だから魔物にとってはお前の位置はわかりやすいんだ。選定が終わるまでは安心できない」
勇者いわく、選定によって加護を得ることで初めて魔物から襲われにくくなるようである。他にも色々お得特典がつくらしい。
「魔物にとってあなたの持つ素質は見逃せないものですから。今のままだと必然的に狙われやすいでしょうね。まぁ、ここなら腕の良い冒険者であるアル達がいるので安心ではありますが」
ちらりと俯いていた顔を上げると、勇者の真剣な光を宿した瞳が見えた。結構この世界の過酷な様子がそこから垣間見える。世界が滅びる。その言葉が思い出された。
それに………。
「魔導書、があるの?」
「あるぞ」
「王城の宮廷魔術師塔ならいくらでもありますね」
キラキラと結菜の目が輝き出す。ファンタジーな世界に憧れがあったこともあり、魔法にはすごく興味がある結菜。ググッとプラスへとパラメータが動く。
「魔法、ちゃんと教えてくれるの?」
「もちろん」
「魔法も教えますし、この際ですから魔導書の閲覧も魔術師長に許可を出しておきますよ」
「み、見たい!魔法自分でちゃんと使いこなせるようになりたい!」
ガタンと椅子から立ち上がりながら結菜は話に食いついた。魔法のこともあるけど、ちゃんとこの世界への見聞も深めたいという気持ちもあった。
結菜は意を決してその場にいる皆に告げる。
「……決めた。私、王都に行く」
家族みたいに接してくれるクランの人達と離れるのはちょっぴり寂しいのは確かである。しかし何も知らないままいるのは結菜としては嫌であった。それに自分ができることがあるならしたい。誰かを助けられるなら助けたい。
気持ちは決まった。魔導書に釣られたわけではない!断じて釣られたわけではないのだ!
「ありがとうございます、ユーナさん」
賢者が結菜に深く一礼した。
それからというもの、有無を言わさない早さで話がまとまってゆく。
しかし、この決断は結菜の人生を大きく変えることになる。そのことに結菜が気づくことはなかった。
今度はクランの皆の前でお願いされた。断ろうにも断れない。結菜は近くに寄って来たロンを腕に抱きながらなんとか最後の抵抗を見せた。
「でも……、ここを離れたくないし、……知らない人だし…………」
「大丈夫ですよ?転移魔法陣さえ使えばすぐにここへ来られますから」
「転移魔法陣、ですか?」
「はい」
賢者が安心してくださいとばかりに結菜に笑いかけながら言ってくれる。ありがたい、ありがたいのだが…………。結菜は外堀だけでなく全ての堀が埋められた気がした。
「安心しろ。行くってもどうせ王都だ。俺も近々王都に出かけるからまたすぐに会える」
アルがくしゃくしゃと結菜の頭を撫でる。にかっと笑う顔に結菜は何だかほっとした。お父さんみたいと思ったのはちょっぴり秘密である。
王都に行くか行かまいかまだ迷っている結菜に賢者が優しく微笑んだ。印象が和らぎ優しく感じる。
「無理にとは言いません。あなたのタイミングに私達は合わせます。いくらでも待ちますから、だから安心してください」
勇者も無表情ながらも結菜に気遣いを見せる。それが結菜の少しでも行きたくなる理由となるように。楽しみとなるように。
「王都なら魔導書もたくさんある。お前に魔法を教えることもできるし、何より安全だ。だから心配するな。それに王都には世界樹があるから魔物も来ない。あそこなら魔物からお前を守れる」
真剣な声だ。
(……魔物。…………そっか。この世界って本当に魔物がいたんだね。やっぱり現実なんだ)
何処か物語のように感じていた魔物という存在が現実のものとして再認識される。実際、この世界において魔物の被害は馬鹿にできないほどの規模であった。
ここに来てから町からも出ていないので、結菜は全くそのことを知らなかった。ダンジョンの他に外のことは、この世界のことはほとんど知らないのだ。アル達が少しは教えてくれてはいたが………。
「お前はただでさえ魔力保持量が多い。だから魔物にとってはお前の位置はわかりやすいんだ。選定が終わるまでは安心できない」
勇者いわく、選定によって加護を得ることで初めて魔物から襲われにくくなるようである。他にも色々お得特典がつくらしい。
「魔物にとってあなたの持つ素質は見逃せないものですから。今のままだと必然的に狙われやすいでしょうね。まぁ、ここなら腕の良い冒険者であるアル達がいるので安心ではありますが」
ちらりと俯いていた顔を上げると、勇者の真剣な光を宿した瞳が見えた。結構この世界の過酷な様子がそこから垣間見える。世界が滅びる。その言葉が思い出された。
それに………。
「魔導書、があるの?」
「あるぞ」
「王城の宮廷魔術師塔ならいくらでもありますね」
キラキラと結菜の目が輝き出す。ファンタジーな世界に憧れがあったこともあり、魔法にはすごく興味がある結菜。ググッとプラスへとパラメータが動く。
「魔法、ちゃんと教えてくれるの?」
「もちろん」
「魔法も教えますし、この際ですから魔導書の閲覧も魔術師長に許可を出しておきますよ」
「み、見たい!魔法自分でちゃんと使いこなせるようになりたい!」
ガタンと椅子から立ち上がりながら結菜は話に食いついた。魔法のこともあるけど、ちゃんとこの世界への見聞も深めたいという気持ちもあった。
結菜は意を決してその場にいる皆に告げる。
「……決めた。私、王都に行く」
家族みたいに接してくれるクランの人達と離れるのはちょっぴり寂しいのは確かである。しかし何も知らないままいるのは結菜としては嫌であった。それに自分ができることがあるならしたい。誰かを助けられるなら助けたい。
気持ちは決まった。魔導書に釣られたわけではない!断じて釣られたわけではないのだ!
「ありがとうございます、ユーナさん」
賢者が結菜に深く一礼した。
それからというもの、有無を言わさない早さで話がまとまってゆく。
しかし、この決断は結菜の人生を大きく変えることになる。そのことに結菜が気づくことはなかった。
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