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前編
しおりを挟む「んーっ、良いお天気だわ」
朝日で目が覚めたステファニー・サンソンは、清々しい気持ちで起き上がり伸びをした。
ここは、隣で寝ている彼――ジル・ウォーカーの屋敷である。学生の身分であるにも関わらず(ジルの強引な決定によって)挙式を予定している2人は、現在休学中の身であった。
ある日ステファニーはジルに攫われ、突然結婚することを告げられた。……普通の令嬢であれば混乱し取り乱すに違いない。
しかし、ステファニーは違った。
ジルにゾッコン⭐︎ラブなのである。
彼女は、ジルが何をしようが「あーんジル様素敵」で乗り切った。外出を禁じられ、その日あった出来事をすべて話すように強要され、生理周期を把握されていても、マリアナ海溝並の深い愛でスルーしていたのだった。
(寝ているジル様……なんて可愛らしいの。今日はどんな夢を見ているのかしら)
今日も今日とてジルの寝顔を盗み見る生活……あぁ幸せ。眉間には少し皺が寄っており、普段ステファニーを熱く見つめる瞳は閉じていた。少し開いた薄い唇がとってもセクシー。彼は微かに身じろぐと、そのまま仰向けへ体位を変える。
(こうしてみると黒くて大きな犬みたい……頭撫でちゃおうかしら……)
「ジル様、いい朝ですわねーーーアッ!」
ジルの硬そうな髪を撫でようとしたステファニーは、あるものに気がつく。そう、彼の下半身に存在する、シーツを押し上げテントを張る例のブツだ。
こ、これはもしかして――!?
(朝勃ちって、やつ――!?)
なんということだ。ジルのペニスが、立派にそそり立っているではないか。
生理現象として『朝勃ち』というものは知っていたが、直接見るのは初めてだった。ベッド上で正座になり、マジマジとそれを見つめていると、段々と可哀想になってくる。
(可哀想なジル様のおチンポ……こんなに存在を主張しているのに、触ってもらえないなんて……)
――そう、二日後に挙式を迎える2人は禁欲生活を送っていた。
禁欲とは、肉体的な欲望(主に性欲)を理性の力で律することである。2人は性交渉はもちろんのこと、各々の自慰行為までも禁じて日々を過ごしていた。
(最近はオナホを使ってくれないし、ジル様には一度スッキリして欲しいのよね……)
この結婚準備期間(という名の軟禁生活)で屋敷から出られないステファニーに対し、ジルは仕事のため頻回に外出している。禁欲生活が始まってから、なんだかピリピリしているように感じる彼を、ステファニーは心配していたのだ。
ジルは――まだ寝ている、よし。
ステファニーは思い立って、ジルのペニスをそーっと両手で包み込んだ。そのまま優しくシーツ越しに扱いてやると、ペニスは更に硬くなり、喜んでいるようだった。
ジルは眠っている。少し息が荒くなっているようだが……気のせいだろう。昨日は仕事で夜遅かったから、きっと疲れているはずだ。夢精は生理現象だから、なーんにも問題はない。
(ジル様、今楽にしてあげます。沢山ピュッピュ出してさしあげますわ~!)
寝ているからセーフ。直接触っていないからセーフ。ジルを助けるという高尚な理由があるのでセーフ。
ステファニーは手のスピードを少しずつ早め、シーツの上から亀頭にあたる部分に口を寄せた。レロリと舌で一周するように舐めると、シーツの頂天に唾液の染みがつく。
(早く直接触りたいわ……。口いっぱいに含んで吸ったら、ジル様どんな反応するかしら)
めくるめく初夜への妄想が膨らみ、ステファニーは太腿をもじつかせた。夢中になって手を動かし、シーツ越しにジュッ、ジュッとペニスを吸う。
――その時
「ーー何をしているんだ」
「ひゃぁっ!」
とんでもなく低い声に話しかけられ、身体が跳ね上がった。
あぁしまった。起きてた。
彼の声色から滲み出る苛立ちが恐ろしくて、顔を上げることができない。
これは大変よろしくない状況だ。ジルの朝勃ちペニスを握りしめ、美味しそうに咥えている現場をガッツリと見られてしまったのだ。完全に痴女である。
何か言い訳を考えなければ、性の不一致で挙式前に放り出されてしまうかもしれない……。
「ジル様、これは誤解です」
「誤解……?」
「ほ、ほら、もう少しで私たち結婚するでしょう?その前に、これからお世話になるジル様のペニスにもご挨拶をしたくって……。ダメ、でしたか?」
「…………」
「挨拶は大切って、お父様とお母様に育てられましたの。ね、ジル様、分かってくださるでしょう、ね?」
ステファニーは、「ね?」とヤケクソになってジルに顔を近づけ、瞳をキラキラさせながら訴えかけた。ジルは上半身を起こし、神妙な顔で頷く。
ドン引いてるようにも見えるが……きっと誤魔化せているだろう、良かった。それより寝癖がついていて可愛い。
「ご理解いただけたようで良かったです。さぁ、朝食のお時間ですわね、行きましょうか!」
(ちなみにジル様の朝勃ちおチンポはそのまんまだけれど……一体どうするのかしら?)
ステファニーは疑問を抱えつつもベッドから降りると、ニコリと笑ってそう言った。
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