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第一部 一章 始まりの物語~噴壊包輝世界編~
魔力と魔法2
しおりを挟む「まあ魔力に関しては、ある程度の理解はできたと思うよ」
「そうか。今の説明に関しては、細かいところまでは省いている。それについては修行の時に教えるとして、次は・・・・・・魔法だ」
話が長くなるからか、クロエは先程両断されたばかりの切り株の一つに腰を下ろす。
「魔力による戦闘は、相手との力比べだと説明したな?反対に魔法による戦闘は、相手の魔法使いとの知恵比べ。
魔法とは魔力を術式を通して収束させ、意図した効力を発揮できるようにする為の緻密な計算式だ。ただ放出するだけの魔力とは違い、複雑な――――それこそ普通の人間にとっては奇跡ともいえるような現象を引き起こすことが出来る。例えば――――」
クロエは自身の座っている切り株の後ろ――――広範囲に渡って切り開かれた森の方向に片手を向ける。
「時間指定操作魔法」
クロエがその言葉を告げると同時に、二つに切り分けれ地面に倒れ伏していた木々の全てが、巻き戻しのビデオのように元あった切り株の上へと戻っていく。
そして十数秒後には魔力の大剣で切断される前の状態――――すなわち最初にあった元通りの森の姿へと、瞬く間に修復された。クロエはそれが当たり前とでもいうように、抑揚のない声で俺に対して説明を続ける。
「――――このようにして魔法を用いることで、破壊した森すらも簡単に元に戻すことができる。今使用した魔法は初歩の初歩。目の前の空間ごと時間軸を固定化させ、フィルムのコマのように任意の状態にまで時間を巻き戻す魔法だ。
そしてここからが重要なんだが――――魔法にも数多くのランクがある。初級、中級、上級と、ここまでは基本だな。そして禁忌指定された超級魔法・・・・・・中々、格好いい呼称だろう? これに関しては扱える者が限られているから、そうそうお目にかかることはない。
そして固有魔法。各々が研鑽し生み出した、魔導書にも載せられていない特別な魔法だ。リセの実家――――古い歴史を持つクロードの家系は、時間に干渉する魔法の扱いに秀でている」
「それは確か・・・・・・魔法使いになる前の、俺の時間を巻き戻したやつか!」
「その通り。そしてその効力は、私が今やったような安易な魔法とは比べ物にならない。効果、精度、範囲のどれをとっても上級魔法以上の効力を持つ。細かい制約や条件もあるにはあるが、何にせよ固有魔法は普通の魔法よりも圧倒的に優れていると言えるだろう――――扱いやすさはともかくな。
そしてその魔法を使用した戦闘において、魔法使いの中でも特に上位に位置する者たち。もしくは他にはない、特別な固有魔法の魔法を数多く会得している者が、偉大なる魔法使い――――マスターと呼ばれているのだ」
そこまで俺に説明したクロエは、人目もはばからずに大きな欠伸と背伸びをする。
まあ今この場所に他にいるのは、俺だけだから別に良いのだろうが。とにかく話は一旦、一区切りついたのだろう。未だに唯一残っている切り株の上で、片膝をつきながら遠くを見ていたクロエの淡褐色の瞳は、微かではあるがその表面に別の色彩を帯びているように思えて――――、
俺が目をしばたたかせてもう一度見てみると、クロエが“どうした?”と、いった様子でこちらに視線を向けていた。その瞳の色は少し前と変わらず同じものであり、
(気のせいか?)
などと考えていると――――それまで座っていた切り株の上から、突然クロエが立ち上がる。
「リセを見つけた」
「本当か!場所はどのあたりだ?」
「そうだな・・・・・・ここからおよそ一万三千キロメートル、といった所だろう」
なんだそりゃ。
覚悟はしていたが、いくらなんでも遠すぎる。飛行機のような移動手段があるわけでもないし、そもそも桁が大きすぎて考えるのも馬鹿らしくなる。唯一、現実的に可能性がある方法があるとすれば・・・・・・、
「クロエ、この世界に来る時に開いた【転移の扉】を、今ここで使うことは出来ないのか?」
「無理だな。私があの男から奪った鍵は、魔法世界に帰還するという目的であるならば使用できるが・・・・・・このアブネクトの世界の中を自由に移動することは出来ない。つまりガラクタ同然だ。お前の持っているリセから貰った魔道具の腕輪も、移動できる範囲は地球上のみに限られているしな」
「どうするんだ?流石にその距離を歩いて行くには時間が掛り過ぎるぞ」
「おいおい、我々は魔法使いだぞ。常識的な発想にばかり囚われるな。安心しろ、ちゃんと方法は考えてある」
クロエが指先を擦り合わせて一度だけ音を鳴らすと、それに伴って黒い魔力の風が俺たち二人の周囲を取り巻く。
まるで竜巻の中心にいるような感覚だ。しかし吹き荒れる風の全てが内側ではなく外側に分散しているので、俺たちに向かって吹き付ける心配はない。明らかに不自然なのだが、これはクロエが魔力で造り出したものである為、ある程度のコントロールが利くのだろう。
クロエに抱き抱えられた時と同じような浮遊感を全身に感じ取り、気づけばその足元までが黒い魔力の風によって覆われていた。視界は全て塞がれており、外の様子を確認することはできない。しかし、
――――ヴォオォォォン、ヴォオォォォン――――。
風を切る音なのだろうか?腹の底にまで響くような、空気を震わすような音が外側から聞こえてくる。
目の前でユラユラと炎のように揺らめいていた、黒い魔力で造られた風の層に向かって俺が手を伸ばそうとすると、その動作を眺めていたクロエが咎めるような口調で声を掛けてきた。
「やめておけ。それに触れると途端に外に放り出されて、風圧でお前の身体が引きちぎれるぞ」
「危なっ!もうちょっとで触るところだった・・・・・・そういうことはもっと早く言ってくれ」
「クックックッ・・・・・安心しろ、冗談だ。そもそも今のお前の体は、全身を私の張った魔法障壁で覆ってあるから、例え外に放り出されて地上に激突しても怪我をする心配はない」
それは果たして怪我などで済むのだろうか。いや、それ以前にそういう問題ではないと、クロエに文句の一つでも言ってやろうと・・・・・・ん?
「これって今・・・・・・俺たち空を飛んでいるんだよな?」
「ああ。視界が遮られているから、よくわからんだろうが――――音速を超える速度で飛行している。外へ放り出される云々以前に、私の魔法障壁がなければ風圧の壁に叩きつけられていたな。何にせよリセのいる地点までは、あと十五分ほどで到着するぞ」
「めちゃくちゃ早いな・・・・・・。ええっと、一万三千キロっていうと、地球でいうところの日本から・・・・・・どの辺りまでだ?」
「さあな、正直どうでもいい。それと念のため言っておくが魔法使いだからといってこんな芸当、誰にでも出来るわけではないぞ。この私が特別だからだ。現マスターの中でも数少ない、二つ名を冠する魔法使い。その私の弟子となれたことを、お前は光栄に思え」
「二つ名?そんなものまであるのか?」
「まあな。その名を持つ者に対しては他のマスタークラスの魔法使いといえど、決して勝負は挑まない。勝ち目がないからな。小さな羽虫が束になっても人間に勝てるわけないだろう?それ程の実力の差がある。
小僧、お前は幸運にもこの私の・・・・・・リセを含めると二人目の弟子になることができたんだ。私の名前に傷がつかないように、精々精進することだな。期待しているぞ」
クロエは俺の背中を掌で叩きながら、にやりとその口許に笑みを浮かべる。この子供の姿をした小さな師匠は、どうやら俺の想像よりも遥かに凄い人物らしい。
時折見せる大人びた表情からも、その片鱗が見えていたが・・・・・・何よりこうして実際にクロエと行動を共にすることで、より明確にその力の一部を現実のものとして傍で感じ取ることが出来た。
「一応その期待に応えられるように、やるだけやってはみるけどさ・・・・・・」
「お前くらいの年齢の若造ならば、自意識過剰なくらいがちょうどいい。敢えて自分の評価を低く見積もろうとするのは、正直誉められたことではないぞ。リセの奴にも昔言ったが、とにかく何でも否定から入るなということだ」
なんとも耳が痛い話である。クロエに見せられたリセの昔の記憶を思い出した俺は、それがおかしくなって苦笑してしまった。
そういう慎重で謙虚なところは、俺とリセの二人は似ているのかもしれない。師匠のクロエに影響されてなのか、現在のリセは昔よりも勝ち気な性格の方が少し勝っているようだ。
それはきっと良いことなのだろう。確かに状況にもよるが何事もプラス発想で考えた方が、きっとより良い結果を得ることに繋がる。
「**もリセのことをを見習って変わらないとな・・・・・・ん?」
ハッとした様子で俺の顔を凝視しているクロエ。その表情は俺が初めて目にするものであり、そのことを不審に思った俺はクロエに向かって尋ねる。
「どうかしたのか?」
「――――いや、何でもない。少し、な・・・・・・。そんなことより、もうそろそろ目的地に到着するぞ。今から降下体勢に入る」
何かを誤魔化された感じがするが、どうやらリセのいる場所へと着いたらしい。感覚でなんとなくだが、地表に向かって降下している感じがする。
そして徐々に周囲を囲う魔力の風が薄れていき、それが霧散するようにして一気に晴れると――――視界の先に不思議な形をした植物で地面を覆われている、広々とした空間が現れた。
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