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第四章 大学受験
第72話 変顔
しおりを挟む「やっぱりテストのレベルが上がってるよな?」
「そうよね。それでいて全体の平均点数が去年より上がってるんだから凄いと思うわ」
テスト期間中にオークスを見に行き、ジェンティルが勝って大満足し、そしてテストが返ってきた。
俺達はいつも通り満点だったが、去年より問題が難しく感じた。
俺達はテスト勉強をする時、先輩から過去の同時期のテスト問題を借りる。
年によって進み具合が違う事もあるが、それでも参考になる事はあるのだ。テストを作る先生が一緒なら傾向とかも分かるしね。
が、今年の問題は例年より難しかった。これは今に始まった話じゃない。俺達が満点を取り出してから徐々に難しくなっていってる感じ。
梓が言うように、それでも平均点数が去年より上ってのは凄い事だと思う。
今年の生徒が優秀なんだろう。勉強会に参加してる人達の頑張りもある。良い傾向なんじゃないかろうか。
「圭太」
「ん?」
俺が中間テストの見直しをしてると、梓に呼ばれたので顔を上げる。
「ぶふっ!」
梓を見たら何故か顔にセロテープを貼って変顔をしていた。
「やっぱり圭太ってこういうしょーもないネタが大好きよね」
「待て待て。今滅茶苦茶面白い顔してたぞ。写真撮ってやる」
パシャリ。
「あら? ほんとね。ここまで変わってると思わなかったわ」
「だろ? ちょっと俺にもやらせてくれ」
そこから何故か始まった変顔大会。
途中からセロテープを使ってどっちの方が面白い顔が出来るか変わっていた。
「二人とも何してるの?」
下校時間が過ぎてからやってた事もあり、止める人が居なかった。だから二人がどれくらい時間が経ってたかは分からないが、気付けば周りに人が居なくなっていた。
で、そこにやって来たのは担任のおばちゃん。
「あ、へんへー」
「もうひょんな時間きゃしら?」
顔中にセロテープを貼ってるから上手に喋れない。ちょっと待って下さいね。なんか途中からどれだけセロテープを上手に使うかも勝負のポイントになってたもんで。
「どうかしました?」
「いえ。なにもないのよ。でもいつもはすぐに帰る二人が残ってるのは珍しいと思って」
「あー…。なんか夢中でやってましたね」
「無駄に盛り上がりました」
あるあるだよね。急に始めたしょーもない事に意外と熱中しちゃうのって。
俺達もこんなの久々だけど。
「あー楽しかった。変顔の写真がいっぱい増えたぞ」
「カラオケ行く?」
「行くー」
担任の先生に帰りますと言ってからの下校中。
写真フォルダを見ながら、この後どうするか話す。
「変装のスキルも作用されてるのか、思ったよりもレベルの高い変顔になってるな」
「美男美女が台無しね」
美しいモノをここまで汚せるのかってぐらいブサイクになってるからな。
これは良い。俺達の一発芸にしよう。これからも定期的に練習が必要だ。
「ん? あれ?」
「あら? 曽川君ね」
学校の最寄駅。そこでは制服姿の曽川君が少しソワソワしながらポツンと立っていた。
「圭太? もしかして何か約束したりしてないわよね? 待たせてるんじゃないの?」
「いや…。約束とかはしてないはず…」
ちょびっと不安になったので、スケジュールアプリの確認、それとLIN○もチェックして連絡が来てないか確認。うん。やっぱり俺じゃない。
「どうしたんだろ?」
「どう見ても待ち合わせっぽいわよね」
スマホをチラチラと何度も確認して、辺りをキョロキョロと見回して。
明らかに待ち合わせの雰囲気を漂わせている。
俺と梓は近付いて声を掛けるでもなく、どうしたのとかと見守っていると、程なくして女性の方がやって来た。
「あー彼女と待ち合わせ」
「金曜日だものね。彼女さんが東京から千葉に来たって事かしら」
ほほーう。デートの待ち合わせでしたか。
彼女さんが来た曽川君が満面の笑みだ。彼女さんは胸を抑えている。心臓をやられてしまったらしい。分かるぞ。あの笑顔は破壊力が高い。
「どうするの?」
「どうするのって…。このまま尾行するけど?」
「そうこなくっちゃ」
下世話な人間ですみませんね。
でもですよ。曽川君が普段彼女どどう過ごしてるのか気になる。
こんな楽しそうなイベントは見逃せないぜ。
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