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第1章 転移
第3話 島
しおりを挟む「これ、島バレの危険性ってあるのかなぁ。異世界ではその辺の心配を全くしてなかったけど…。これって、人工衛星とかに映ったりするんじゃないのかな。魔法の力をどこまで信じて良いものか…」
「この世界には我々にとって未知の技術が多すぎますね」
「俺にそういう知識が無かったから、あっちでもハイテクな感じな開発は、あんまりして来なかったからな。エリザベス達生産部の奴らは、独自に学んで知識を付けてたけど…。それでもこっちの研究者の方が科学知識は上だろう」
とりあえず方針は決まったって事で、屋敷の外に出て散歩を始める。今は落ち着いてるけど、急に転移して混乱してる面々はいっぱい居るだろうからな。それの様子見も兼ねてって感じだ
散歩中、ふと気になって空を見上げる。
半透明の膜のようなものに島全体が覆われている。
認識阻害の魔道具と結界の恩恵を持ってる奴の合わせ技で、島を外から見えないようにする為の装置を開発したんだ。
異世界ではそれをやるだけで、秘密の島に出来たんだけど…。
魔法がこの世界でどこまで有効なのかは、まだ全然検証が進んでいない。まだ転移して数日しか経ってないし、現状を把握するので忙しいんだ。
何か不具合が起こってないかーとかね。
「そういえば…客は? カジノやら賭場、風俗街、闘技場で遊んでた世界各国のお偉いさんも転移直前まで居たよね?」
「居ませんね。転移して来たのは、ボスか私が契約をしてる者達だけです。なので、その辺りの施設は一旦閉めてますね」
「ふむぅ。その辺も現代で有効活用して、金稼ぎの場にしたいところだな…」
この島は俺達の組織『クトゥルフ』の拠点と同時に、かなりアガリの大きいシノギになってる場所である。表の舞台の『ルルイエ商会』でのシノギと合わせて、俺達は巨万の富を築いてた訳だ。
色々工夫して俺たちの拠点には近付かせない……むしろ、気付かせないようにしつつ、有効活用していけたら、こっちでも中々デカいシノギになるのは間違いない。
ほんと、異世界でいい島を見つけたよ。
偶々なんだけどね。
大きさは大体沖縄本島ぐらい。
そこに『クトゥルフ』の本部と、様々な開発をする工房やら工場やら。そして大人の娯楽が詰まった繁華街がある訳だ。
それがこの島『ラヴクラフ島』である。
昔は森の中の岩山をくり抜いた秘密基地を使ってたけど、ここを見つけてからは、ここが本部になっている。
まあ、あの秘密基地もまだ現役バリバリで稼働してたし、この島を見つけたのも、俺の理想を叶える直前ぐらいだったけどね…。
「ここも問題なしか」
「まあ、ジュリエットの恩恵の力で出来てますから…。本人に問題がなければ大丈夫でしょう」
「その本人は?」
「先ほど、ボスが持ち帰ったおもちゃの噂を聞いて、エリザベス達の工房に走って行ったと」
「相変わらず面白そうなものには目がないな」
「ええ」
この島で一番でっかい建物。
細長い塔、ダンジョンである。
「転移の影響で魔物が溢れてきたりしないか心配だったけど、問題ないなら良いや。最悪、溢れても島から出ないなら問題ないけど…。一匹でも漏れがあったら、世界がパニックになっちゃうからな」
「………そう言えばこの世界には魔物が居ないんでしたね…。違和感しかありません」
「言われてみれば、俺も違和感があるな…。すっかり精神が異世界に馴染んでた証拠か」
「魔法もない。魔物も居ない。生きやすいのか生き辛いのか分かりませんね」
カタリーナが複雑な表情をしてらっしゃる。魔法がないとか、異世界で暮らしてたらあり得ないもんな。
異世界では『クトゥルフ』以外の平民のほとんどは魔法は使えないけど、魔道具は普通に使う。
まあ、魔道具が家電やらになり変わってると思えば、そこまで暮らしにくくないと思うが…。違和感はあるよなぁ。
「まあ、俺が生きてた頃に知らなかっただけで、実は某国政府の秘密組織とかが、魔物やら魔法やらの技術を研究したりしてるかもしれんがな。技術を独占して実用化出来るなら、恐らくこの世界を牛耳れる」
「ライラルト教会の『スティグマ』のようなものですか…」
「そういうこと……。そう言えば、こっちの世界の宗教も中々面倒なんだよな…」
ライラルト教会の名前で思い出したけど、こっちの宗教もだるいなぁ…。異世界みたいに一つの宗教が幅を利かせてるんじゃなくて、色んな宗教が複雑怪奇に絡み合ってるから…。
同じ宗教でも考え方は違うし、テロとかも平気でやってきたりするし…。
せっかくライラルト教会を撲滅したのに、こっちの世界で、また宗教関連の奴らと喧嘩したくありませんよ。
狂信者はマジで面倒なんだから…。
でも、裏から支配しようとしたら、いずれ関わる事になるんだろうなぁ…。
「この世界での目標は何にしようか?」
「あちらと同じように裏から支配するのでは?」
「それはそうだけどさ。………ほら、孤児救済とか、世界中に娯楽を広めるとか。向こうでもそういう目標があったじゃん? こっちの世界でもそういう目標がないと、張り合いがないっていうか…」
「なるほど…。私達がそういう目標を立てるには、まだまだこの世界の事を知らなすぎますね。ボスもだいぶブランクがあるのです。まずはこの世界を、改めて知るところから始めてみてはいかがですか?」
なるほど…。
確かにそうだ。
知らないのに目標なんて立てられる訳ないよね。
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