上 下
6 / 60

6.探り

しおりを挟む
「逆に、お二人の能力はどのようなものなのですか??」
隈本一帆くまもとかずほに問われ、
「アタシのは〝30秒だけ武器を出せる〟つースキルだ。」
「アタシが知っている物に限られんのと、同じ武器は一日で二回以上は出現させられねぇんだけど…、マシンガンやランチャーとかも扱えんだぜ。」
「さっきは、カズホが〝接近戦タイプ〟ってことで、巻き添えになんねぇように控えたけどな。」
緋島早梨衣ひしまさりいが笑顔で答えた。
これに、
「ボクのは、10人までを5Mの高さに浮上させる能力だよ。」
「ただし、半径20Mの範囲内でしか発揮できないけどね。」
「あと、オーバーヒートしたくないから、あんまりスキルは使いたくない。」
意川敏矢いかわとしやが脱力した感じで続いたのである。
「緋島さんは地面を踏むのと、意川さんは両手を突き出すのが、発動条件という事でしょうか?」
一帆が新たに尋ねたら、
「ああ、そうだ。」
「で??」
「カズホの場合は?」
「アタシ、見てなかったんだけど。」
緋島に質問で返されたのである。
「あ、はい。」
「私のは、〝自分の拳を合わせる〟のが条件です。」
そう告げた一帆に、
「へぇー、なるほどねぇ。」
理解を示す意川であった……。
 
 

AM11:05を過ぎた頃に、
「うぃーっす。」
「ただいまー。」
「只今、戻りました。」
三人が[事務所]に帰って来た。
ディスク席から、
「おっかえりぃ~♪」
〝トトトトトッ〟と駆け寄った宮瑚留里花みやこるりかが、
「妖魔に関する放送が聞こえてたけど、大丈夫だった?? くまりん。」
そう訊いたところ、
「はい。」
「緋島さんと意川さんのお陰で、全て倒せました。」
と、一帆が伝えたのである。
「いや、活躍したのはカズホであって、アタシ達じゃない。」
緋島の言葉に、
「そうなの?」
ギャルの宮瑚が首を傾げた。
「あ、いえ、然程さほどではありません。」
このように一帆が述べたら、
「20体の敵の大半を消滅させたのは隈本さんなんだから、謙遜しなくていいよ。」
意川がアドバイスしたのである。
「え?!」
「それって、スゴイんじゃない??」
留里花が瞼を〝パチクリ〟させたところで、自身の手を〝ぽんっ!〟と叩いた沖奈朔任おきなさくとが、
「取り敢えず、お喋りはそこまでにして、業務を再開しましょう。」
「緋島さんは、報告書の作成を、お願いします。」
そう促した。
「うぅ~、アタシ、あんま得意じゃないんだよなー。」
右手で後頭部を〝ボリボリ〟と掻く緋島に、
「ボクが代わってあげましょうか?」
意川が提案するも、
「いんや、隊長の命令だから、従うとすんよ。」
どうやら観念したようだ。
しかし、気が重そうにしている。
これを察して、
「今日中に提出してもらえれば問題ないので、ゆっくりで構いませんよ。」
優しく微笑む沖奈隊長だった…。
 
少し時が経ち、
「そろそろ11時半になりますので、“はやご飯”の方々は休憩に入ってください。」
「隈本さんも、どうぞ。」
朔任に勧められて、一帆/緋島/意川/宮瑚/筺健かごまさる
鐶倖々徠かなわささら副隊長が、昼食を摂ることになった。
「ではでは、くまりん。」
「下のカフェにでも行ってみるぅ?」
留里花の誘いを、
「お弁当を持参しておりますので、すみません。」
そのように断った一帆である。
「おおー。」
「“かなっちふくたいちょー”と同じタイプだね☆」
感心する流れで、
「じゃあ、どうしようかなぁ~。」
「……、トッシーは??」
ふと質問した宮瑚に、
「朝、コンビニで、おにぎり買ってきてある。」
意川が答えた。
「ふむふむ…。」
「サリーちゃんとマサルンは、なに食べるの?」
留里花と目が合った早梨衣が、
「アタシは、近所に出来たラーメン屋。」
こう返したのである。
「確か、あそこは、まだ、オープン記念の全品半額セールやってるんだったよな。」
「……、俺も一緒にいいか??」
スキンヘッドかつ黒肌の筺に尋ねられて、
「もちろんっスよ。」
緋島が頷く。
「んん~ッ。」
やや悩んで、
「よし!!」
「あーしは、パンにしよう!」
そう決めた宮瑚が、
「“休憩室”の人らは、あーしが戻って来るまで食べ始めないように!!」
一帆たちに伝えて、1Fのベーカリーショップへと向かったのである…。
 
 

[休憩室]には、二台の長テーブルが隣り合わせで置かれており、六脚のパイプ椅子が備えられている。
意川の話しにて、
「へ!?」
「一人で14体も?」
「くまりん……、チョー強いじゃん!」
留里花が、パンを片手に、驚いた。
丸メガネの副隊長も、ビックリしている。
これらの反応に、
「いえ、その…、ありがとうございます。」
一帆が照れくさそうにした。
ペットボトルの緑茶を〝ゴキュゴキュ〟と飲んだ意川が、
「隈本さんと巡回すれば、これから先、だいぶサボれそうで助かるよ。」
本音を吐露とろしたら、
「ほぉう??」
倖々徠に睨まれてしまい、
「いや……、ボクも、一生懸命、頑張ります。」
気まずそうに視線を逸らしたのである。
 
早梨衣と健は、カウンター席で、拉麺らーめんを口に運んでいた。
「そいつぁ、かなりのもんだな。」
筺の感想に、
「うっす。」
「カズホは、今後、うちらのエースになるんじゃないっすかね。」
緋島が述べた。
「ふぅ~む…。」
「総監の推薦なら、ちゃんと知らされてんのか?」
「俺らの本当の任務・・・・・を。」
健が疑問を呈したところ、
「さあ??」
「フクソーカン派のイカワが居たんで、そこは聞かないでおいたっす。」
「ただ…、パトロールんときに、〝東京組第一番隊への配属を希望していた〟って、本人が言ってたスよ。」
早梨衣が伝えたのである。
「だったら、あれか。」
「〝隈本隊員が通常の仕事に慣れてきたタイミングで、隊長が教える〟みたいなことかもな。」
筺の推測に、
「じゃないすかね。」
同意する緋島であった―。
しおりを挟む

処理中です...