16 / 60
16.前兆
しおりを挟む
「ええ、ええ、そうです。」
「……、はい。」
「よろしくお願いします。」
警察への電話を終えた沖奈朔任隊長に、
「それで?」
「何があったんです??」
そう訊かれた男性が、
「実は…。」
起きた出来事を語っていく。
なんでも、彼は、とある金融から10万円を借りたらしい。
クリーンなイメージだったので、これといって疑わずにいたものの、利子が十日で100万円に膨れ上がったのだそうだ。
昨夜、自宅であるアパートにチンピラどもが取り立てに来た際に、「払えないんだったら、簡単な仕事を紹介してやるよ」「こっちが指定する物を売りさばけばいいだけだから、難しいことはない」と言われ、怪しんだ男は、隙を見て二階の窓から逃げたとの事だった。
その後、新宿のネットカフェで隠れるように過ごした本人が、今朝がた別の場所に移動しようとしていたら、探し回っていたらしい連中がハイエースを横づけしてきたので、焦って走ったところ、隈本一帆たちに遭遇したとの経緯である……。
▼
現場には、パトカーと救急車が2台ずつ到着した。
この車内にチンピラどもが乗せられていく。
沖奈に事情を伝えてもらった50代後半の男性警察が、
「成程。」
「だいたいのことは分かりました。」
「あとは、署で、彼に詳細を聞きますので、貴方がたは職務に戻っていただいて結構です。」
そう述べたのである。
「了解しました。」
「では、僕たちは、これで。」
沖奈が会釈し、これに一帆が倣う。
そうして、パトロールを再開する二人であった。
街を歩きながら、
「間違いなく反社でしたよね。」
「私、おもいっきり骨を折ったりしてしまいましたが…、大丈夫でしょうか?」
「告訴されたり、報復されたりして、十三番隊の皆さんに迷惑を掛けてしまうのでは??」
「そうなったら、すみません。」
一帆が〝シュン〟とする。
だが、
「あまり心配ないでしょう。」
「悪いのは向こうであって、隈本さんは人助けしたにすぎないので、下手に訴える事はしませんよ、きっと。」
「それに……、もし、あの人達の仲間が襲撃してきたとしても、一丸となって抗戦しますので、何があっても問題ありませんから、そう落ち込まないでください。」
優しく微笑む沖奈に、またしても“トキメキ”が止まらなくなる一帆だった…。
▼
AM11:00過ぎ、[事務室]へと戻って来た二人に、
「お帰りなさい。」
鐶倖々徠副隊長と、
「おつかれっス。」
緋島早梨衣が、声をかける。
「お疲れさまです。」
この場に筺健&架浦聖徒が見受けられなかったので、
「筺さんと架浦さんは、“早昼”に出たようですね。」
沖奈が尋ねたところ、
「はい。」
「架浦さんの奢りで焼肉を食べに行ったみたいです。」
「〝自分の不注意で筺さんに怪我させてしまったから、お詫びに〟みたいな感じで誘っていましたよ。」
鐶が答えた。
「架浦さんは、割と律儀ですね。」
〝ニッコリ〟する沖奈の側にて、
「この時間から焼肉ですか??」
一帆が少し意外そうにする。
「ああ、ランチタイムに安く提供してくれる店が在って、なかなか美味しいんだぜ。」
緋島に教えてもらい、
「そうなんですか。」
一帆が〝へぇー〟と納得を示した。
「それでは、お昼までデスクワークをこなすとしましょう。」
隊長に促され、
「はい。」
自分の席へと一帆が足を運ぶ……。
▼
PM12:40頃。
筺と架浦は、事務処理に没頭している。
そこに、外食を済ませて入室した沖奈のスマホが鳴った。
「もしもし?」
「…………、ええ、本人です。」
「……はい、……はい、…………そうですか。」
「こちらとしては、上の許可が必要になりますので、一度、相談してみます。」
「後ほど折り返し電話させてください。」
「……、はい、ご苦労様です。」
通話を切った沖奈に、
「なんかトラブルでも発生しましたか??」
筺が疑問を投げかける。
「ええ、まぁ、ちょっと…。」
「お二人は、取り敢えず、仕事を続けてください。」
「全員が揃ってから説明しますので。」
こう告げて、退室する沖奈であった。
屋上にて。
スマホを使い、
「――――、という訳でして。」
「断ることも可能ですが、警察の方々には日ごろ協力していただいていますし、今回の件には僕も関わってしまいましたので、承諾してもらえれば幸いです。」
「…………、あー、確かに、仰る通りですね。」
「……では、現場に届けてくださいませんか?」
「バイク便とかで…。」
「……、ありがとうございます。」
沖奈が誰かと喋ったようだ。
▼
PM12:55あたり。
隊長が、午前中に起きたチンピラとの悶着を語った流れで、〝警察から応援を要請された〟ことを、隊員達に伝えていく。
あれから、警察が調べたところによると、例の男らは[俟團組]という反社だったらしい。
表向き優良な金融業者を装い、めちゃくちゃな利息をフッカケて、支払えない者を脅したうえで、〝危険薬物の売人として働かせる〟といった犯罪を重ねているのだそうだ。
そのため、警察は、令状を取り付け、〝連中を一網打尽にする〟と決めたのである。
ただ、なかには“スキル持ち”が他にもいるかもしれないので、[H.H.S.O 東京組第十三番隊]に〝同行していただきたい〟と頼んできたらしい。
警察には能力者が存在していないため〝万が一に備えて〟との理由で。
「俟團組って、ここ最近、歌舞伎町で幅を利かせるようになったヤツラだよな??」
架浦の質問に、
「そうなんですか?」
沖奈が首を傾げる。
このタイミングで、
「あ!」
「こないだ、意川とパトロールしていた際に、喧嘩していたグループの片方が〝俟團組、舐めんなよ!!〟とかいう捨て台詞を吐いてたな。」
筺が記憶を辿った。
それに対して、鐶副隊長が、
「かなり威勢がいい人たちみたいですね。」
いささか呆れたところ、
「あぁー、…、半年ぐらい前に、新宿の郊外に拠点を構えている“漠皁組”の傘下に入ってから、やたらと威張り散らすようになったんじゃなかったっけ??」
「ちなみに、漠皁組は、関東で一大勢力を築きつつあるらしいぜ。」
架浦が補足したのである。
「よくご存じですね。」
感心する沖奈に、
「どっかの飲み屋のマスターが言ってた気がするんだが……、そんとき酔っ払ってたからイマイチ覚えてねぇや。」
こう述べる架浦だった―。
「……、はい。」
「よろしくお願いします。」
警察への電話を終えた沖奈朔任隊長に、
「それで?」
「何があったんです??」
そう訊かれた男性が、
「実は…。」
起きた出来事を語っていく。
なんでも、彼は、とある金融から10万円を借りたらしい。
クリーンなイメージだったので、これといって疑わずにいたものの、利子が十日で100万円に膨れ上がったのだそうだ。
昨夜、自宅であるアパートにチンピラどもが取り立てに来た際に、「払えないんだったら、簡単な仕事を紹介してやるよ」「こっちが指定する物を売りさばけばいいだけだから、難しいことはない」と言われ、怪しんだ男は、隙を見て二階の窓から逃げたとの事だった。
その後、新宿のネットカフェで隠れるように過ごした本人が、今朝がた別の場所に移動しようとしていたら、探し回っていたらしい連中がハイエースを横づけしてきたので、焦って走ったところ、隈本一帆たちに遭遇したとの経緯である……。
▼
現場には、パトカーと救急車が2台ずつ到着した。
この車内にチンピラどもが乗せられていく。
沖奈に事情を伝えてもらった50代後半の男性警察が、
「成程。」
「だいたいのことは分かりました。」
「あとは、署で、彼に詳細を聞きますので、貴方がたは職務に戻っていただいて結構です。」
そう述べたのである。
「了解しました。」
「では、僕たちは、これで。」
沖奈が会釈し、これに一帆が倣う。
そうして、パトロールを再開する二人であった。
街を歩きながら、
「間違いなく反社でしたよね。」
「私、おもいっきり骨を折ったりしてしまいましたが…、大丈夫でしょうか?」
「告訴されたり、報復されたりして、十三番隊の皆さんに迷惑を掛けてしまうのでは??」
「そうなったら、すみません。」
一帆が〝シュン〟とする。
だが、
「あまり心配ないでしょう。」
「悪いのは向こうであって、隈本さんは人助けしたにすぎないので、下手に訴える事はしませんよ、きっと。」
「それに……、もし、あの人達の仲間が襲撃してきたとしても、一丸となって抗戦しますので、何があっても問題ありませんから、そう落ち込まないでください。」
優しく微笑む沖奈に、またしても“トキメキ”が止まらなくなる一帆だった…。
▼
AM11:00過ぎ、[事務室]へと戻って来た二人に、
「お帰りなさい。」
鐶倖々徠副隊長と、
「おつかれっス。」
緋島早梨衣が、声をかける。
「お疲れさまです。」
この場に筺健&架浦聖徒が見受けられなかったので、
「筺さんと架浦さんは、“早昼”に出たようですね。」
沖奈が尋ねたところ、
「はい。」
「架浦さんの奢りで焼肉を食べに行ったみたいです。」
「〝自分の不注意で筺さんに怪我させてしまったから、お詫びに〟みたいな感じで誘っていましたよ。」
鐶が答えた。
「架浦さんは、割と律儀ですね。」
〝ニッコリ〟する沖奈の側にて、
「この時間から焼肉ですか??」
一帆が少し意外そうにする。
「ああ、ランチタイムに安く提供してくれる店が在って、なかなか美味しいんだぜ。」
緋島に教えてもらい、
「そうなんですか。」
一帆が〝へぇー〟と納得を示した。
「それでは、お昼までデスクワークをこなすとしましょう。」
隊長に促され、
「はい。」
自分の席へと一帆が足を運ぶ……。
▼
PM12:40頃。
筺と架浦は、事務処理に没頭している。
そこに、外食を済ませて入室した沖奈のスマホが鳴った。
「もしもし?」
「…………、ええ、本人です。」
「……はい、……はい、…………そうですか。」
「こちらとしては、上の許可が必要になりますので、一度、相談してみます。」
「後ほど折り返し電話させてください。」
「……、はい、ご苦労様です。」
通話を切った沖奈に、
「なんかトラブルでも発生しましたか??」
筺が疑問を投げかける。
「ええ、まぁ、ちょっと…。」
「お二人は、取り敢えず、仕事を続けてください。」
「全員が揃ってから説明しますので。」
こう告げて、退室する沖奈であった。
屋上にて。
スマホを使い、
「――――、という訳でして。」
「断ることも可能ですが、警察の方々には日ごろ協力していただいていますし、今回の件には僕も関わってしまいましたので、承諾してもらえれば幸いです。」
「…………、あー、確かに、仰る通りですね。」
「……では、現場に届けてくださいませんか?」
「バイク便とかで…。」
「……、ありがとうございます。」
沖奈が誰かと喋ったようだ。
▼
PM12:55あたり。
隊長が、午前中に起きたチンピラとの悶着を語った流れで、〝警察から応援を要請された〟ことを、隊員達に伝えていく。
あれから、警察が調べたところによると、例の男らは[俟團組]という反社だったらしい。
表向き優良な金融業者を装い、めちゃくちゃな利息をフッカケて、支払えない者を脅したうえで、〝危険薬物の売人として働かせる〟といった犯罪を重ねているのだそうだ。
そのため、警察は、令状を取り付け、〝連中を一網打尽にする〟と決めたのである。
ただ、なかには“スキル持ち”が他にもいるかもしれないので、[H.H.S.O 東京組第十三番隊]に〝同行していただきたい〟と頼んできたらしい。
警察には能力者が存在していないため〝万が一に備えて〟との理由で。
「俟團組って、ここ最近、歌舞伎町で幅を利かせるようになったヤツラだよな??」
架浦の質問に、
「そうなんですか?」
沖奈が首を傾げる。
このタイミングで、
「あ!」
「こないだ、意川とパトロールしていた際に、喧嘩していたグループの片方が〝俟團組、舐めんなよ!!〟とかいう捨て台詞を吐いてたな。」
筺が記憶を辿った。
それに対して、鐶副隊長が、
「かなり威勢がいい人たちみたいですね。」
いささか呆れたところ、
「あぁー、…、半年ぐらい前に、新宿の郊外に拠点を構えている“漠皁組”の傘下に入ってから、やたらと威張り散らすようになったんじゃなかったっけ??」
「ちなみに、漠皁組は、関東で一大勢力を築きつつあるらしいぜ。」
架浦が補足したのである。
「よくご存じですね。」
感心する沖奈に、
「どっかの飲み屋のマスターが言ってた気がするんだが……、そんとき酔っ払ってたからイマイチ覚えてねぇや。」
こう述べる架浦だった―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる