GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第二章・それぞれの成長 ―

第33話 試合

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凛琥りくが、片手で、細身の黒い鉄剣を、横や縦に振るいつつ、時には、突きを繰り出していく。

それらを、紫蓮しれんが、これまた片手の鉄刀で、

ガキンッ!

ガシィンッ!

と、受け流したり、〝ヒョイッ〟とかわす。

清虎きよとらたちは、長方形型である訓練場の壁際で、横一列になって観戦していた。

セルグが、

(意外と早く、左への対応が出来るようになったな。)
(ま、相手が俺じゃないし、これぐらいは当然か…。)

と分析していたら、右隣の“影”が、

「お前が鍛えたのか?」

と、尋ねる。

「んー、ま、“対・左”に関しては、な。」
「基本的なことは、千代ちよらが徹底的に指導しているよ。」

「ふ…む。なかなかの身ごなしだ。」

「ああ、割とセンスがある。」

と彼らが会話している間にも、凛琥が打ち込み続けていた。

「守ってばっかじゃ勝てねぇぞッ!」

と、挑発する凛琥に、

「…、正論だな。」

と紫蓮が冷静に返す。

これに〝カチン!〟ときた凛琥が、

「余裕かよぉおッ!!」

と、渾身の突きを放つも、右に避けながら、

「余裕だよ。」

と呟いた紫蓮が、両手で握った鉄刀を、ガラ空きの左脇腹に、

ドンッ!!

と、くらわせた。

「ぐッ!!」

と右手で脇腹を押さえる凛琥が膝を屈しそうになる。

だが、どうにか耐えて、紫蓮が上段の構えになったことに気付いた彼は、急ぎ、バックステップで距離を取った。

〝スッ〟と鉄刀を下ろした紫蓮が、

「へぇ、根性あんじゃん?」

と、少なからず感心する。

「こっちが、ちょっと油断していたからって、図に乗るなよッ!」
「絶対に負かして、後悔させてやるからなッ!」

と凛琥が告げたところ、さちの娘であり、髪と瞳が赤い幸永歌さえかが、

「そうよ、凛琥!」
「そんなどこの家柄か分からない奴なんて、ちゃっちゃと倒しちゃいなさいよ!」

と、発言した。

これには、侍王が、

「幸永歌!!」
「他者を血筋や身分で判断するのは言語道断ぞ!」
「今度、同じような口をいたら、例え我が孫であっても容赦せんからのッ!!」

と怒りをあらわにしたのである。

しかし、〝シュン〟とうつむいて、

「ごめんなさぁい。」

と、元気をなくした彼女に、

「あ、いや、すまぬ。」
「つい、条件反射で熱くなってしもうた。」
「儂が悪かったから、機嫌直してくれんか?」
「の?の??」

とアタフタする総帥は、どこにでも居そうな、ただの爺さんにしか見えない。

晴清はるきよの娘であり、ボブショートの髪が白銀で、瞳はライトグリーンの永美香えみかが、

「大丈夫ですよ。」
「お祖父じい様は決して間違っていませんし、幸永歌も分かっていますから。」

と、フォローし、

「それよりも…、動きがありそうです。」

と述べたことによって、全員の視線が、紫蓮と凛琥に集中していくのだった―。
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