GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第四章・西陸行路 ―

第121話 沖にて・其之弐

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その日の午後。

鍛錬の休憩中に、甲板かんぱんの手すりに背中をもたれながら、水を飲んだペイニーが、近くに座っている六人組に対して、

「そういえば…、あんた達のパーティーめい、聞いてなかったけど……、どんなネーミングなの?」

と、尋ねた。

ロンド―(金髪の少年騎士)が、

「ん??」
「ああ、…、〝平和をつくる者たち〟って意味で“PEACE MAKER‘S”っすよ、ペイニーの姐御あねご。」

そう答える流れで、

「でもさぁ、俺は、“疾風のロンド―ズ”とか、“金色こんじきの獅子と仲間たち”みたいなのが、良かったんだけど……、皆から猛反対されちまって…。」

軽く口を尖らせる。

「あったりまえでしょ!!」
「どれもダサくてしょうがないし、それに、自分だけが注目を浴びようとしているんだから、認められないに決まってるわよ!」

ララベーリャ(茶髪セミロングの少女魔法使い)が声を荒げたところ、

「出た、夫婦めおと漫才。」

ルーシャ(赤髪ボブショートの少女武闘家)が〝ボソッ〟とツッコんだ。

これに、ロンド―と、ララベーリャが、

「な?!」

「ちょっ、バカなこと言わないでよ!!」

頬を赤らめて焦りだした。

その光景に誰もが〝ドッ!〟と笑う。

「しかし、まぁ、良い名ではないか、“ピースメーカーズ”。」
「私は好きだぞ。」

撫子なでしこが述べたことによって、穏やかな空気に包まれていった……。


夜が更けていき、乗客の多くが就寝しようとしていたら、船が何かに衝突したかのように、大きく〝ズドォオッ!〟と揺れたのである。

起き上がった紫蓮しれんらが、各自、部屋から廊下へと出てきた。

「なんだ一体!?」

ロンド―が怪訝けげんそうにし、

「何かに、ぶつかった感じよね?」

黒髪ボブの少女弓術士である真凪まなが息を呑んだタイミングで、船に備え付けてある鐘が、

カン!カン!カン!カーン!!

臨時を告げるべく、鳴り響いたのである。

少年少女達が不安そうにするなか、

「取り敢えず、状況が知りたい。」
「外に行ってみよう。」
「危険を考慮して、ロンド―たちは、部屋に戻るか、一番後ろから付いて来い。」

紫蓮が促す。

黒髪ショートヘアーの少年クレリックであるさとるが、

「どうするの??」

自身のパーティーメンバーを窺う。

「当然、行くんだろ?」
「リーダー。」

ヌラーバ(茶髪坊主の少年戦士)の問い掛けに、ロンド―が静かに頷く…。


甲板に到着した紫蓮達の目に映ったのは、船を護るために雇われていた冒険者の数人が、左斜め前方の、巨大生物の触手で横殴りにされて、吹っ飛ばされるところだった。

この20人組のパーティーは、普段、半分ずつになって、交代制で任務を果たしている。

だが、緊急事態のため、全員が集まってきていたようだ。

それでも対応しきれなかったのだろう……、立っているのは5人ほどだった。

「あの魔物らしきものは、なんなのでしょうか??」

誰ともなく訊ねる涼音すずねの視線の先には、タコ烏賊イカが合体したかのようなモンスターが居たのである。

あれ・・は、おそらく、“クラ―ケン”でしょう。」

との認識を示したのは、タリアノだった―。
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