GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第四章・西陸行路 ―

第138話 不慮

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紫蓮しれんらは、城の北西に出た。

彼らが入ってきた南側は建物としての原型を留めていたものの、反対(北)は完全に崩れている。

レンガ類が散乱しているここ・・で、討伐隊の300数程と、150体ぐらいの魔物が、激突していた。

位置的には、紫蓮達の右斜め前(北東)である。

モンスターの多くは、やはり、アルラウネ(上半身が女性+下半身が花)/人面樹/食人花/マタンゴ(キノコ)/マイドニコ(キノコ)/キラービー(1M大の蜂)/ジャイアントアント(1M大の蟻)/マンティス(1.5M大のカマキリ)/ソルジャービートル(1.5M大のカブトムシ)/ジャイアントスタッグビートル(1.5M大のクワガタムシ)といった、植物系と昆虫系だ。

それらとは別に、スライム・ゴブリン・ワーシープ(二足歩行の羊)・ノエル・(二足歩行のハイエナ)・ラミア(上半身が女性+下半身が蛇)・ヘルハウンド(犬)・ハーピー(鳥人間)などが、見受けられる。

更には、二頭の[成れの果て]が存在していた。

紫蓮たちから見て、奥の方で直立しているのは、背丈が4M前後の“トロール”のようだ。

手前の宙に浮いているのは、身長185㎝くらいの“ガーゴイル”ではなかろうかと思われる。

討伐隊と魔物とが乱闘になっているなか、誰かしらが“スキル”を発動した。

どうやら、30代前半といったところの女性戦士らしい。

彼女の左手から、15㎝大の[氷のつぶて]が、50個ほど、一直線に飛んでいく。

この正面に居た10匹の魔物のうち半数にヒットするも、残りは確実に躱していた。

それによって、20発ぐらいの礫が通過していき、最後尾に佇んでいる“元トロール(成れの果て)”の太ももに当たってしまったのである。

「ガアァ――ッ!!」

咆えたトロールが、直径4Mの魔法陣を構築した。

リーダーであろう40代後半の男性兵士が後ろを振り向き、

「全員、回避せよッ!」

討伐隊に告げる。

各自、左右へと散っていくなか、

ドォオウッ!!

魔法陣と同じ大きさで、紫色の【光線ビーム】が発射された。

その結果、逃げ遅れた討伐隊の20名ほどが“消し炭”となり、近くに居た15体くらいのモンスター達が巻き添えになったようだ。

敵味方問わず犠牲を生じさせたビームが、

ズドォンッ!

城の一部に直撃し、破壊した。

「あれが、成れの果て…。」

〝ゴクリ〟と唾を呑み込んだのは、ロンド―である。

彼以外の[PEACE MAKER’S]も目を丸くしたみたいだ。

紫蓮が、

「“成れの果て”は取り敢えず無視だ。」
「まずは、他の魔物を殲滅するぞ。」

先陣を切って歩き出し、仲間が続いていった。


現場では、再び、バトルが繰り広げられている。

空に居る“ハーピー”の一体が[風撃]を扱うべく、翼を反らす。

これを狙って、初老の男性弓術士が矢をるも、咄嗟に上へと逃げられてしまい、真後ろで静止していた“元ガーゴイル”の右肩に刺さってしまったのだ。

「グガッ!!」

呻いた[成れの果て]が直径4Mの魔法陣を展開し、幅4㎝×長さ40㎝の[紫色の光線]を、100発、放っていく。

「!」

その近くまで来ていた紫蓮らが、スキルや魔法を使って、ビームを防ぐ。

「今、“結界”を!!」

鈴音すずねが周囲に声を掛けるなか、1発の光線が流れ弾となり、

ブシュッ!

金髪少年騎士の、心臓部を、貫いた―。
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