GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第四章・西陸行路 ―

第184話 念い

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翌日――。

城の庭や、路上には、いろいろなテント(ゲル)が張られている。

[ゴッド・スレイヤーズ]は、自分たちのテントで朝食を摂っていた。

なかには、二日酔いの者らもいるようだ。

紫蓮しれんのサーヴァント達は、昨日とは異なる装いになっていた。

来夢らいむはブラックのレディーススーツ・権蔵ごんぞうはグレーの着物&ベージュの羽織・美麗みれいはネイビーのレディーススーツ・夜摩やまは深緋色の着物&白の羽織である。

「今日もさまになっておるな。」

そう褒めたのは、【くノ一】の撫子なでしこだ。

これに続いて、

「皆さん、いいお買い物をしてもらったみたいですね。」

人間とエルフの血筋である【弓術士】のランソワが、声をかけたところ、

「うむ。」

「ええ。」

といった具合に、紫蓮のサーヴァントらが微笑んだのであった。

「けどよぉ。」
「変形するときは、どうするんだ??」
「毎回、衣服や防具を脱いだり着たりすんのはメンド―なんじゃねぇか?」

グーランが疑問を口にして、

「確かに、そこなんだよな。」

紫蓮が頷いていたら、

「あ!!」
「忘れてた。」

人とドワーフの子孫たる【機工士】のスリアが、何かを思い出したようだ。

「どうしたの??」

ペイニーが尋ねてみたところ、

「実は……、“未来の手記”には、どのサーヴァントが姿を変えられるようになるのかも書かれていてな。」
「それを元に、現代の祖父が、専用のブレスレットを作っていたんだよ。」
「かつて、祖父と、知り合いの魔術師とで、錬金術と魔法を融合して、生産したらしい。」
「このブレスレットは、伸縮自在であり、サーヴァントが形態を変化させる時に〝自動的に装いも変わる〟との話しだ。」
「そこら辺に容量をぎ込んだから、あまり沢山のアイテムは収納できないのと、通話機能が無いので、そのつもりでいてくれ。」
「形態を変化できない者もいるが、一応、全員の分を預かっているから、配っておこう。」
「その前に…、サーヴァント用のブレスレットは試作品だから不備があるかもしれない。」
「困った事があった際には、遠慮なくアタシに言ってくれ。」
「修理するから!」

スリアが、そのように説明したのである……。


PM14:00頃。

一同は、[玉座の間]に呼ばれていた。

大きくて煌びやかな椅子が在るが、武術マスターはこれ・・には腰掛けていない。

代わりに、木製の物に座っている。

また、利通としみちの次男をはじめ、大幹部たちも、同様の椅子に腰掛けていた。

彼らの傍には、ミーノンの兵士が、10名ずつ佇んでいる。

なお、[GOD SLAYER’S]は、人間のみが訪れており、サーヴァントらはゲルで待機していた。

紫蓮達は、それぞれに色違いのスーツとコートを着用している。

「“成れの果て”や、中級と下級の神々を倒した功績を認め、その方らに金貨5000万枚を褒美として与える。」

武術マスターの発言に、

「ごせ…、マジか。」

フゥーリカンが目を丸くした。

他の者たちも驚いているみたいだ。

先頭に立つ紫蓮に、左斜め後ろからグーランが〝ひそひそ〟と、

「いくらなんでも多すぎます。」
「おそらく、こちらにランダ―が所属しているので、武術マスター様が配慮してくださったのでしょうが、そんなに貰ってしまっては、周りから嫉妬されかねないでしょう。」
「頂戴するのは、せめて半分ぐらいにしてください。」

このように勧めた。

それを受けたリーダーが、

「2000万枚ほどで結構……、です。」
「金銭は、できるだけ、ヒッダー国の立て直しに使っていただきたい。」

こう伝えたら、その場に居る人々が〝ほぉう〟と感心したのである。

「ふむ…。」
「殊勝よのぉう。」
天晴あっぱれである!!」
「お主らの心意気を称え、儂に出来ることであれば、なんでも願いを叶えてやろう。」
「遠慮なく申すがよい!」

利通に促され、パーティーメンバーが相談するも、急には何も浮かばないようだ。

そのような状況で、

「よろしいでしょうか?」

真っ直ぐに武術マスターを見たのは、ランダ―だった。

「勿論じゃ。」

優しげな目になった利通に、

「僕の故郷が、どうなっているのか知りたいです。」
「果たせるのであれば、里帰りしたいので。」

ランダ―が答える。

「どこの町じゃ??」

武術マスターが訊ね、

「“ハトゥーリ”です。」

ランダ―が返したところ、

「何?!」
「君は、あそこの出身なのか?」

王都の門を解放させるのに活躍した中年の【武士】が、口を開いた。

「知っておるのか??」

利通の問いに、

「ええ、一応は。」
「ですが……、あの町は、とっくに捨て去られ、誰も住んでおりません。」

侍が眉間にシワを寄せる。

「やはり、そうですか。」

想像していたらしいランダ―が、

「もし可能であれば、せめて、花を手向たむけてあげたいのですが…。」

仲間に伺う。

「おう!!」
「行こうぜ!」
「いいよな!? 紫蓮。」

グーランの意見を、

「ああ、当然だ。」

リーダーが承諾した。

「では、知り合いの魔術士を紹介してあげよう。」
「ソイツは“瞬間移動”を扱えるし、かつて仕事で“ハトゥーリ町”に赴いたことがあるから、頼るといい。」

こう述べる武士であった……。


サーヴァント達を伴った紫蓮らは、30代後半の“女性魔術士”によって町へと渡っている。

全ての建物に、道路の至る所が、およそ5年前の神どもによる攻撃と、風化によって、ボロボロになっていた。

もはや原形を留めていない一軒の家に、足を止めたランダ―が、花を供える。

「この地で亡くなった方々のために祈りましょう。」

提案した【巫女】の涼音すずねと、【クレリック】のルウェーが、順番で冥福の言葉を唱えていく。

どこからともなく穏やかな風が吹いてくるなか、全員が黙祷を捧げるのだった―。
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