GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第五章・魔の領域 ―

第215話 瀬戸際

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あれから三日が経った。

サガーミィーの“最東端の港町”を中心として、海岸沿いには、[木造りの軍船ぐんせん]が集結している。

町には、国主と、その長男が、甲冑姿で赴いていた。

当然、数多くの兵隊も見受けられる。

なお、地域住民は、既に安全な場所へと避難させられているらしい……。


特に大きな屋敷に、サガーミィーの幹部たちが集まっている。

なんでも“町長の邸宅”との事だ。

特に広い一室で、国主親子らが、軍議を開いていた。

そこへ、

「失礼します!」
「沖に出ていた斥候によれば、およそ二時間後に“神の軍勢”が接近する模様です!!」
「その数、推定400万でございます!」

伝達係が報告したのである。

「どうやら、妖怪たちは間に合わなかったようですね…。」
「ナーガリーにブレスレットを買い与えておけば、通話機能で詳しい状況を確認できたでしょうに。」

こう長男が述べたところ、

「基本、城内で生活することが殆どだから〝必要ない〟と思っておたったし……、まさか、指示に逆らって戻ってこんとは、予想だにしておらんかったわ。」

父親である[国主]が渋い顔つきになったのであった。

「まぁ、こちらは敵の倍は兵を揃えておりますので、援軍がなくとも、きっと大丈夫でしょう。」

そのように発言した[30代後半の男性戦士]に、

「ふんッ。」
「永らく平和ボケしてきた国が勝てる可能性は極端に低かろうに…。」
「楽観視するのは、あまりにも危険じゃわい。」

[60代前半の女性剣士]が注意する。

室内が沈黙に包まれるなか、

「ともあれ……。」

〝スッ〟と起立した国主が、

「我らも船に乗り込もうぞ。」
「神どもと一戦交えるべく、な。」

みなを促したのだった。


岸から30分ほど東に赴いた場所で、“サガーミィーの軍船”が布陣している。

更に約一時間が過ぎた頃。

舳先へさきで望遠鏡を覗いていた一兵卒が、

「現れましたぁあ―ッ!!」
「“東陸とうりく第四神国しんこく”でーす!」

慌てた様子で声を張り上げた。

「ついに、か…。」

国主が眉間にシワを寄せて、

「全軍、気を引き締めよ!!」

と、号令したのであった……。


どうやら、“神々の船”も木製のようだ。

これらの一つで、

「待ち構えておったという事は、どこからか情報が漏れていたか…。」

ある[男神おがみ]が呟いた。

背丈は3Mであり、翼が一対いっついなので、王ではなかろう。

その神に、

「如何なさいます?」

背後に控える[黒いウィザードローブの女性]が伺った。

身長は160㎝といったところである。

フードで顔を隠しているので、よくは分からないが、40代半ばに違いない。

「ふむ。」
神次かみつぐの配下の者か。」

反応を示した神が、

「〝このまま突撃する〟と、各艦に伝えいッ!」

こう下知したのである。

かくして、妖怪達や[GOD SLAYER’S]などが到着しないままに、決戦の火蓋が切って落とされようとしていたのだった―。
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