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2巻オマケ
彼女の癖
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この店に入ってきたときから、彼女はあまり泣かない子だった。
まあ、コンビニのバイトで泣くことなんてそうそうなかったが、それでも失敗すればベソをかく子が多い中、ソラちゃんはギュッと唇を噛みしめ、何処も見ていない目で涙をこらえるような子だった。
それを見た時、ああ、この子は泣き方を知らないのかな、と最初は思った。
でも、彼女と一緒にいるうちに、そういうことではなくて、彼女は自分の信用できない相手には、弱みを見せないだけなのだと知った。
「う、うぇぇぇぇ……」
子供みたいにしゃくりあげて泣く彼女を抱きしめて、その背中を優しく撫でる。
泣きたい時に唇が白くなるほど噛みしめる彼女の泣きたい理由は、自分ではなく人のことで。
そういうところが彼女の強さでもあり、弱さでもあることを知っている俺は、冷や冷やしながら彼女に諭す。
君は、そのままでいいんだよ。
プルナスシアに行こうなんて思う必要も全くない。
あそこにずっといてくれる。そのことがどれだけ貴重かなんて、君は知らないだろうけど、どうか知らないまま、あそこに居てほしいと願わずにはいられない。
彼女の泣き声は、俺の胸を痛くさせたけど、彼女の泣き場所が俺になったことに、俺は密かに嬉しくも感じていた。
そんなこと、決して彼女に悟らせるわけにはいかないけれど、
願わくば、
ずっと、彼女が泣くのは、俺の前だけでありますように。
まあ、コンビニのバイトで泣くことなんてそうそうなかったが、それでも失敗すればベソをかく子が多い中、ソラちゃんはギュッと唇を噛みしめ、何処も見ていない目で涙をこらえるような子だった。
それを見た時、ああ、この子は泣き方を知らないのかな、と最初は思った。
でも、彼女と一緒にいるうちに、そういうことではなくて、彼女は自分の信用できない相手には、弱みを見せないだけなのだと知った。
「う、うぇぇぇぇ……」
子供みたいにしゃくりあげて泣く彼女を抱きしめて、その背中を優しく撫でる。
泣きたい時に唇が白くなるほど噛みしめる彼女の泣きたい理由は、自分ではなく人のことで。
そういうところが彼女の強さでもあり、弱さでもあることを知っている俺は、冷や冷やしながら彼女に諭す。
君は、そのままでいいんだよ。
プルナスシアに行こうなんて思う必要も全くない。
あそこにずっといてくれる。そのことがどれだけ貴重かなんて、君は知らないだろうけど、どうか知らないまま、あそこに居てほしいと願わずにはいられない。
彼女の泣き声は、俺の胸を痛くさせたけど、彼女の泣き場所が俺になったことに、俺は密かに嬉しくも感じていた。
そんなこと、決して彼女に悟らせるわけにはいかないけれど、
願わくば、
ずっと、彼女が泣くのは、俺の前だけでありますように。
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