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【3話】 酒場のリリアとピエンとディルハン
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リリアと一行はルーダ・コートの町の酒場にいる。ディルハンが王都周辺は夜でも安全と言っていたが、やはり安全を優先したのだろう。日暮れとともにルーダリア城下町に向かうのを諦め、ルーダ・コートの門をくぐって、王室関係舎に宿をとった。
この大陸では日没後は魔物、大型動物類、盗賊、人さらい、殺人鬼、黒魔術士等が暗躍し、外出は極端に危険が増す。旅人、キャラバン等は日の出とともに城門等から傭兵を連れて隊をなして出発し、日没までには村、街、城下に入るのが一般的だ。そのため、日の出前の門は傭兵を探す側と雇われたい者でにぎわっている。主要道路には日没前までにたどり着ける距離にかならず小さいながらも村程度の場所が点在し、旅人の安全と商売を行っている。
舎に入ると、リリアとピエンの希望で町の酒場にディルハンとくりだしてきて、腰を落ち着けたところだった。酒場は活気であふれ、リリアは好物の鶏肉料理を楽しんでいた。
「リリア様は、お洋服はその旅服だけですか?」ピエンが聞く。
「リリアかリリィでいいわよ。そもそもなんで様なの?」
「あぁ、それはですね、勇者様の子孫ですし、王国にお迎えされたら、立場上は国級の剣客扱いで、偉い人になるんです。直接王様にお目通りも可能なお立場ですよ。」
「… とりあえず、リリアでいいわ。様なんて皮肉の時にしか聞いたことないし」とリリア。
「で、では僕の事はピエンで呼んでください、リ、リリア」ちょっと目をそらしながら言うピエン。
「ウッフ、今更照れるの?」笑うリリア。ディルハンは気に入らなさそうに聞いている。
「で、旅服だけど、そうよ。これしか無い」
そういうリリア、厚手の布服に皮のロンググローブとロングブーツ、腰は村のシェリフが使う木と革張りの防具、男性用なのだろうか、お尻の発育が目立っている。腰のベルトはダガーやナイフが装備されている。ひと際目立つのは皮のコルセットをぴったりと腹部に巻いていることだ。豊かな胸が大きく乗っかるように強調されている。
「アハ、これね、胸当てがどれもきつくてね。そのうち専用に作ってもらわないと」何となく目線を感じたリリア。
「あ、いや、いや、これは失礼しました。あの、ご就寝… 寝るときは?」
「旅の時は上を脱ぐだけよ。もっとも普段は防具を着けて寝ないといけないような場所だらけだけどね」
「は、はぁ、なるほど…」
「ピエン、今想像したでしょ、鼻血出てるわよ」
「え!? わっ!」慌てて拭うピエン。
「うっふ、冗談よ冗談、ウフフフフ」悪戯っぽく笑うリリア。
ディルハンは何か言いたげに、苦虫を噛み潰したような顔で黙って葡萄酒を飲んでいる。
「ピエンはディルハンさんの事、ディルって馬車で呼んでたけど」話題を変えるリリア。
「そうですね。仕事以外では学校の同期ってこともありディルです。仲が良いんですよ、僕達。僕は商人の息子なので、その後の貴族の学校には行ってないですが。それもあり、今回は同席させてもらえました」
「親しいのね。ディルハンさん見ているとそんな感じには見えないけどね」
ディルハンは眉を寄せてこの声を聞き流している。ピエンが続ける。
「僕の予想ですが、リリアは王室に迎えられると思いますよ。ここまでの印象ですがね。武芸が出来、教養もある程度あり、マナーも… ある程度はあるようですし、何といっても容姿が良いので王室に迎えられれば、国民から人気が出そうです。王国の良い宣伝になると思います」
「ピエンそういえば、他にも候補者がいるって話」リリアは握ったフォークを立てて聞く。
「恐らく、心配ないでしょう。管理室の調べでは、一人は力はあるけど無学、一人は血筋は良いですが、病弱な上、家族一同を遠路から呼び寄せるのが条件でして、多分仕事として管理室長もいやがるのでは…」メモを見ながら、思い出したように続けるピエン。
「そういえば、商売で成功されている勇者の血筋がおりました。近くの港町にいて、なかなかキレものの美女のようです」
「商売で?勇者の血筋で商売上手い人いるの?絶対偽物でしょ」ちょっと声を高めるリリア。
「いや、調べは済んでいます。かなりちゃんとした家系です、ただ…」
「ただ… 何なの、もうどんな勇者の血筋でも驚かないわよ」
「娼婦街で娼館の宿主でして…」メモから目を離して食事するピエン。
ディルハンは口元を曲げ、先ほどから何か言葉を飲んでいるらしい。
「娼婦?いいじゃない。なんか問題?」と、軽く答えるリリア。
信仰にもよるがここではそのような職業も蔑まれるものではない。冒険者達も自由に行きずりの恋を楽しむし、契りがなければ、不特定と交わる事も問題ではない。娼婦街にしても、奴隷となる子共をある程度救えて人並みの暮らしをさせているのが現状で、館主はだいたい面倒見がよい。若くして魔獣に食われるならまだしも、狂った魔術師の手先にされたり、行き倒れてアンデット化するよりかなりマシな人生。
「まぁ、娼館ってだけでは… ですが、やはり奴隷商人と関りがあっては王国のイメージが…」
「あ、あぁぁ、言葉も出ないわ…」お皿のすみをつつくリリア。
「かなりの美人らしんですけね、リリア」
「ピエン、それは全然関係ないでしょ」
笑い声をあげる二人。
さっきから口をムズムズと歪めていたディルハンが大きな声で二人に割って入った。
「わ、私の事はディルと呼んでくれ… リリア」
周りがちょっとリリア達を振り返った。
この大陸では日没後は魔物、大型動物類、盗賊、人さらい、殺人鬼、黒魔術士等が暗躍し、外出は極端に危険が増す。旅人、キャラバン等は日の出とともに城門等から傭兵を連れて隊をなして出発し、日没までには村、街、城下に入るのが一般的だ。そのため、日の出前の門は傭兵を探す側と雇われたい者でにぎわっている。主要道路には日没前までにたどり着ける距離にかならず小さいながらも村程度の場所が点在し、旅人の安全と商売を行っている。
舎に入ると、リリアとピエンの希望で町の酒場にディルハンとくりだしてきて、腰を落ち着けたところだった。酒場は活気であふれ、リリアは好物の鶏肉料理を楽しんでいた。
「リリア様は、お洋服はその旅服だけですか?」ピエンが聞く。
「リリアかリリィでいいわよ。そもそもなんで様なの?」
「あぁ、それはですね、勇者様の子孫ですし、王国にお迎えされたら、立場上は国級の剣客扱いで、偉い人になるんです。直接王様にお目通りも可能なお立場ですよ。」
「… とりあえず、リリアでいいわ。様なんて皮肉の時にしか聞いたことないし」とリリア。
「で、では僕の事はピエンで呼んでください、リ、リリア」ちょっと目をそらしながら言うピエン。
「ウッフ、今更照れるの?」笑うリリア。ディルハンは気に入らなさそうに聞いている。
「で、旅服だけど、そうよ。これしか無い」
そういうリリア、厚手の布服に皮のロンググローブとロングブーツ、腰は村のシェリフが使う木と革張りの防具、男性用なのだろうか、お尻の発育が目立っている。腰のベルトはダガーやナイフが装備されている。ひと際目立つのは皮のコルセットをぴったりと腹部に巻いていることだ。豊かな胸が大きく乗っかるように強調されている。
「アハ、これね、胸当てがどれもきつくてね。そのうち専用に作ってもらわないと」何となく目線を感じたリリア。
「あ、いや、いや、これは失礼しました。あの、ご就寝… 寝るときは?」
「旅の時は上を脱ぐだけよ。もっとも普段は防具を着けて寝ないといけないような場所だらけだけどね」
「は、はぁ、なるほど…」
「ピエン、今想像したでしょ、鼻血出てるわよ」
「え!? わっ!」慌てて拭うピエン。
「うっふ、冗談よ冗談、ウフフフフ」悪戯っぽく笑うリリア。
ディルハンは何か言いたげに、苦虫を噛み潰したような顔で黙って葡萄酒を飲んでいる。
「ピエンはディルハンさんの事、ディルって馬車で呼んでたけど」話題を変えるリリア。
「そうですね。仕事以外では学校の同期ってこともありディルです。仲が良いんですよ、僕達。僕は商人の息子なので、その後の貴族の学校には行ってないですが。それもあり、今回は同席させてもらえました」
「親しいのね。ディルハンさん見ているとそんな感じには見えないけどね」
ディルハンは眉を寄せてこの声を聞き流している。ピエンが続ける。
「僕の予想ですが、リリアは王室に迎えられると思いますよ。ここまでの印象ですがね。武芸が出来、教養もある程度あり、マナーも… ある程度はあるようですし、何といっても容姿が良いので王室に迎えられれば、国民から人気が出そうです。王国の良い宣伝になると思います」
「ピエンそういえば、他にも候補者がいるって話」リリアは握ったフォークを立てて聞く。
「恐らく、心配ないでしょう。管理室の調べでは、一人は力はあるけど無学、一人は血筋は良いですが、病弱な上、家族一同を遠路から呼び寄せるのが条件でして、多分仕事として管理室長もいやがるのでは…」メモを見ながら、思い出したように続けるピエン。
「そういえば、商売で成功されている勇者の血筋がおりました。近くの港町にいて、なかなかキレものの美女のようです」
「商売で?勇者の血筋で商売上手い人いるの?絶対偽物でしょ」ちょっと声を高めるリリア。
「いや、調べは済んでいます。かなりちゃんとした家系です、ただ…」
「ただ… 何なの、もうどんな勇者の血筋でも驚かないわよ」
「娼婦街で娼館の宿主でして…」メモから目を離して食事するピエン。
ディルハンは口元を曲げ、先ほどから何か言葉を飲んでいるらしい。
「娼婦?いいじゃない。なんか問題?」と、軽く答えるリリア。
信仰にもよるがここではそのような職業も蔑まれるものではない。冒険者達も自由に行きずりの恋を楽しむし、契りがなければ、不特定と交わる事も問題ではない。娼婦街にしても、奴隷となる子共をある程度救えて人並みの暮らしをさせているのが現状で、館主はだいたい面倒見がよい。若くして魔獣に食われるならまだしも、狂った魔術師の手先にされたり、行き倒れてアンデット化するよりかなりマシな人生。
「まぁ、娼館ってだけでは… ですが、やはり奴隷商人と関りがあっては王国のイメージが…」
「あ、あぁぁ、言葉も出ないわ…」お皿のすみをつつくリリア。
「かなりの美人らしんですけね、リリア」
「ピエン、それは全然関係ないでしょ」
笑い声をあげる二人。
さっきから口をムズムズと歪めていたディルハンが大きな声で二人に割って入った。
「わ、私の事はディルと呼んでくれ… リリア」
周りがちょっとリリア達を振り返った。
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