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【20話】 事件は会議室で起きている
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「リリア殿をお連れしました」兵士は、そう告げると退出していった。
リリアは砦の建物の最上階、作戦会議室に当たる部屋にいる。
見張り塔までは上ったことがあるリリアだったが、こんな場所に立ち入るのは始めてだ。
この建物の中は外の喧騒と違って静かだ。ここまで上がって来る階層も将軍や上士官の個室らしく静寂。上って来る途中で昼食の支度をしているボーイとすれ違ったが、肉料理、魚料理、サラダ、パスタ等ふんだんに使った料理を用意していた。ボソボソのパン、水増しした粥、芋中心の野菜スープのリリア達の食事とは大違いだ。
会議室に入って、リリアは見渡す。とっても偉そうな人たちが15,6人いる。
とっても偉い人の中にもとってもとっても偉い人と、普通にとっても偉い人がいるのだろう。曇り一つないピッカピカの鎧の人もいれば、使い込んだ鎧の人もいる。リリアにとってはこんなのお座なりだ。兵士とは昼間は武骨に暴れまわり、昼間の振舞いからは想像もつかない体で、ランプの灯りの下、武器の手入れや防具の補修を行う者こそ兵士なのだ。
「!」あの小柄な体格、短い金髪、エメラルドの大きな瞳、鼻筋の通った顔立ち…
リリアは部屋の一角にローゼン少佐を見つけた。ローゼンもリリアとわかっているらしく、視線が合うと一瞬だけ、目を細めてみせた。リリアもその目線の上で、少しだけ長めの瞬きをしてみせると、ローゼンはすぐに視線を切って正面を向きなおした。
「リリア殿か… なぜ呼ばれたかわかるかね?」
「…… わかりません」
褒められるのだろうか?褒められる理由が見当たらない。怒られるのだろうか?どの件でおこられるのだろうか?心当たりだらけだ。
「まぁ、わからないのも無理はない」
“じゃ、質問形式にするなよ”リリアは思う。
一通り説明を聞き終わったリリア。
かいつまんで言うと、この砦に対する、派兵と物資の流れが膨れ上がっているにも関わらず両砦間は緊張状態にないため、相手側もこちらも通常状態まで武装解除をしたがっているらしい。
が、かなりの緊張状態と国に報告を出している手前、何もなく終わらせるわけにもいかない。
そこで、相手側が海に用意した的をこちらの兵士が射落とせばこちらの勝利で、ちょっと賠償して終わらせる話になったとの事。
説明されて、浜辺を見ると、両軍の工兵隊が力を合わせて櫓を急造している。
何でも、射手が砦のどこからも死角にならないように櫓の上から撃つらしい。
現場は両軍とも和気あいあいとして協力しあっている。本当にこの両者は戦争しているのだろうか?
“なんか聞いたことある流れだな… 確か、ルーツ・フラット・ウォーという物語にこれに酷似した話があったようだ“リリアはそんな事を思いながら聞いていた。
“そうなんだ、ふーん…まぁ、誰も死なないならそれに越したことはない”と聞き流していたが、次の瞬間衝撃の一言がもたらされた。
「というわけで、明日よろしく」
「ぅヴぇ! あたし、やるんですかぁ?明日ですかぁ?」驚くリリア。
「貴殿の弓の腕前は聞いておる。先日、かなりの距離の鳥を射止めたのも見た。あの腕前なら十分勝機がある。貴殿がやらねば、誰がやる!」
「いや、そんな最後だけ確信的に言われても… 軍にもっと適任者が… おられると思いますが」
「我が軍のエースは右肩に張りを訴えて故障者リスト入りしておる。二週間は現場復帰できない」とってもx2偉そうな人が偉そうに言う。
「いや、まだまだ… おられるでしょう」リリアは丁寧語に不慣れだ。
「一人は、昨日風呂場で足の小指を骨折してしまった。一人は忌引きしている。一人はイップスにかかってスランプだ… 事態はもうこんな言い訳をあげつらっても仕方のないところまで来ているのだよ。貴殿も今こそ覚悟をみせる時ではないのかね?」
「いやぁ… あたし、別にそこまで国を思って…」そこまで言いかけたら誰かに遮られた。
「貴殿は式典をした勇者リリア殿であろう」
「あ、そうです、そうです、だけどあたし勇者らしいこと一つも出来ないんっすよ、あははは」
「貴殿、国の認定勇者は戦争に参加できないと国際法で決められているのはご存じかな?… 知らないでは済まされませんぞ、これは軍法会議物になる案件と心されるか…」
「… あたし戦場にいてはいけないなら今すぐ帰ります…」リリアは言う。
「貴殿、敵前逃亡は死刑ですぞ。勇者が今更敵に背を向けられまい」
“あたし、戦争に参加して良いの?悪いの?ややこしい”
リリアはわけがわからず黙っている。
「憲兵さーん、パワハラ上司がここにいます!」言ってやりたい気分。がまんがまん。
結局、軍に押し切られてリリアは引き受ける事になった。軍法会議で死刑か、明日失敗して名誉の自害かと迫られたのだ。冷静になって考えるとどっちもバッドエンドなのだか、その時は引き受ける方を選んでしまった。もっとも成功させれば問題ないのだが…
で、退出際に変な誓い?宣誓?決意表明?をさせられた。部屋を出ようとしたら止められ、何か言うことがあるだろうっと言うのである。なんでもこういう場合は
「弓を切り折り自害して…」とか国の為に一命をかける決意表明をして、周りを感動させるものだと言うのだ。
そういえば、ルーツ・フラット・ウォーの話しにも、そんなシーンがあったようだ。
「ですから、あたし別に国の為に…」リリアが言いかけると、軍法会議申請書をちらつかせるのである。
“憲兵さーん、パワハラ!パワハラでーす!”言いつけたいリリア。
「… リ、リリアは、命がけでがんばります…」何とか似たような事を言ってごまかした。
けっこう周囲は感動していたようだ。
リリアは思いついて退出際に聞いてみた。
「これ、成功したら軍で使っている弓ください」
「弓は税金で購入している、個人にかってにあげられない」きっぱり即答。
こっちは命張るってのにケチくせぇ連中だぜ。
「しかし、今夜はリリア殿の好きな食事を与えよう」と言うのだ。
“死刑囚か!国のためになんか絶対死なないっての”とリリアは腹が立ったがせっかくなので
「鶏の丸焼きお願いします。皆にね」とちゃっかり全員分お願いして退室した。
退出際にローゼン少佐を見たら、ちょっと気の毒そうな視線をリリアに投げかけていた。
リリアは砦の建物の最上階、作戦会議室に当たる部屋にいる。
見張り塔までは上ったことがあるリリアだったが、こんな場所に立ち入るのは始めてだ。
この建物の中は外の喧騒と違って静かだ。ここまで上がって来る階層も将軍や上士官の個室らしく静寂。上って来る途中で昼食の支度をしているボーイとすれ違ったが、肉料理、魚料理、サラダ、パスタ等ふんだんに使った料理を用意していた。ボソボソのパン、水増しした粥、芋中心の野菜スープのリリア達の食事とは大違いだ。
会議室に入って、リリアは見渡す。とっても偉そうな人たちが15,6人いる。
とっても偉い人の中にもとってもとっても偉い人と、普通にとっても偉い人がいるのだろう。曇り一つないピッカピカの鎧の人もいれば、使い込んだ鎧の人もいる。リリアにとってはこんなのお座なりだ。兵士とは昼間は武骨に暴れまわり、昼間の振舞いからは想像もつかない体で、ランプの灯りの下、武器の手入れや防具の補修を行う者こそ兵士なのだ。
「!」あの小柄な体格、短い金髪、エメラルドの大きな瞳、鼻筋の通った顔立ち…
リリアは部屋の一角にローゼン少佐を見つけた。ローゼンもリリアとわかっているらしく、視線が合うと一瞬だけ、目を細めてみせた。リリアもその目線の上で、少しだけ長めの瞬きをしてみせると、ローゼンはすぐに視線を切って正面を向きなおした。
「リリア殿か… なぜ呼ばれたかわかるかね?」
「…… わかりません」
褒められるのだろうか?褒められる理由が見当たらない。怒られるのだろうか?どの件でおこられるのだろうか?心当たりだらけだ。
「まぁ、わからないのも無理はない」
“じゃ、質問形式にするなよ”リリアは思う。
一通り説明を聞き終わったリリア。
かいつまんで言うと、この砦に対する、派兵と物資の流れが膨れ上がっているにも関わらず両砦間は緊張状態にないため、相手側もこちらも通常状態まで武装解除をしたがっているらしい。
が、かなりの緊張状態と国に報告を出している手前、何もなく終わらせるわけにもいかない。
そこで、相手側が海に用意した的をこちらの兵士が射落とせばこちらの勝利で、ちょっと賠償して終わらせる話になったとの事。
説明されて、浜辺を見ると、両軍の工兵隊が力を合わせて櫓を急造している。
何でも、射手が砦のどこからも死角にならないように櫓の上から撃つらしい。
現場は両軍とも和気あいあいとして協力しあっている。本当にこの両者は戦争しているのだろうか?
“なんか聞いたことある流れだな… 確か、ルーツ・フラット・ウォーという物語にこれに酷似した話があったようだ“リリアはそんな事を思いながら聞いていた。
“そうなんだ、ふーん…まぁ、誰も死なないならそれに越したことはない”と聞き流していたが、次の瞬間衝撃の一言がもたらされた。
「というわけで、明日よろしく」
「ぅヴぇ! あたし、やるんですかぁ?明日ですかぁ?」驚くリリア。
「貴殿の弓の腕前は聞いておる。先日、かなりの距離の鳥を射止めたのも見た。あの腕前なら十分勝機がある。貴殿がやらねば、誰がやる!」
「いや、そんな最後だけ確信的に言われても… 軍にもっと適任者が… おられると思いますが」
「我が軍のエースは右肩に張りを訴えて故障者リスト入りしておる。二週間は現場復帰できない」とってもx2偉そうな人が偉そうに言う。
「いや、まだまだ… おられるでしょう」リリアは丁寧語に不慣れだ。
「一人は、昨日風呂場で足の小指を骨折してしまった。一人は忌引きしている。一人はイップスにかかってスランプだ… 事態はもうこんな言い訳をあげつらっても仕方のないところまで来ているのだよ。貴殿も今こそ覚悟をみせる時ではないのかね?」
「いやぁ… あたし、別にそこまで国を思って…」そこまで言いかけたら誰かに遮られた。
「貴殿は式典をした勇者リリア殿であろう」
「あ、そうです、そうです、だけどあたし勇者らしいこと一つも出来ないんっすよ、あははは」
「貴殿、国の認定勇者は戦争に参加できないと国際法で決められているのはご存じかな?… 知らないでは済まされませんぞ、これは軍法会議物になる案件と心されるか…」
「… あたし戦場にいてはいけないなら今すぐ帰ります…」リリアは言う。
「貴殿、敵前逃亡は死刑ですぞ。勇者が今更敵に背を向けられまい」
“あたし、戦争に参加して良いの?悪いの?ややこしい”
リリアはわけがわからず黙っている。
「憲兵さーん、パワハラ上司がここにいます!」言ってやりたい気分。がまんがまん。
結局、軍に押し切られてリリアは引き受ける事になった。軍法会議で死刑か、明日失敗して名誉の自害かと迫られたのだ。冷静になって考えるとどっちもバッドエンドなのだか、その時は引き受ける方を選んでしまった。もっとも成功させれば問題ないのだが…
で、退出際に変な誓い?宣誓?決意表明?をさせられた。部屋を出ようとしたら止められ、何か言うことがあるだろうっと言うのである。なんでもこういう場合は
「弓を切り折り自害して…」とか国の為に一命をかける決意表明をして、周りを感動させるものだと言うのだ。
そういえば、ルーツ・フラット・ウォーの話しにも、そんなシーンがあったようだ。
「ですから、あたし別に国の為に…」リリアが言いかけると、軍法会議申請書をちらつかせるのである。
“憲兵さーん、パワハラ!パワハラでーす!”言いつけたいリリア。
「… リ、リリアは、命がけでがんばります…」何とか似たような事を言ってごまかした。
けっこう周囲は感動していたようだ。
リリアは思いついて退出際に聞いてみた。
「これ、成功したら軍で使っている弓ください」
「弓は税金で購入している、個人にかってにあげられない」きっぱり即答。
こっちは命張るってのにケチくせぇ連中だぜ。
「しかし、今夜はリリア殿の好きな食事を与えよう」と言うのだ。
“死刑囚か!国のためになんか絶対死なないっての”とリリアは腹が立ったがせっかくなので
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退出際にローゼン少佐を見たら、ちょっと気の毒そうな視線をリリアに投げかけていた。
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