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【24話】 ペンダント
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ランカシム砦では大勢の兵士が右往左往して、陣の引き払い中。
常備兵以外は陣を引き払い次第、勝利の凱旋を出来るのだ。活気に溢れ、皆いそいそと野営幕をたたみ、柵を解体していく。
リリアもその中で汗まみれで作業をしている。ランカシム砦を無血勝利させたリリアだが、一傭兵に変わりはない以上、平等に作業がある。ただ、周りからは感謝され、ちやほやされる。イリオフ砦でも陣を引き払っているのが見える。
リリアは周りの兵士達に声をかけられては、笑顔を見せながら、汗まみれの力作業中。
大変だがかたずけ次第、家に帰れると思うと、疲れを感じない。もっともリリアはルーダ・コートの自宅に戻る前に、ポート・オブ・ルーダ、ルーダリア最大の港街に寄る予定。
リリア自身は、的を射落とした事が全く記憶にない。進行係り達ともみ合ったあたりから記憶がなくなり、気がつけば自分が的を射落として、味方が勝利を収めた事になっていた。
何だかよくわからないけど、奇跡、そしてリリアのお手柄。
“どうにか、処刑は回避したみたいね”とりあえずリリアは一安心。
一晩意識がなかったらしいが寝て起きたらリリアは英雄扱いなっていた。
“考えてみれば英雄と勇者、どう違うのかしらねぇ”汗と泥にまみれた英雄は考える。
「リリア殿」リリアは呼ばれて振り返った。聞いたことある声。
「ローゼン少佐!」あまり話した事ないが、国士の中で唯一感情移入できる人だ。ローゼンの方でもリリアに好感を持っているのがわかる。
「リリア殿、この度は色々ご苦労だったが、我らリリア殿のお陰で勝利を手にできた、感謝をする」ローゼンの凛とした声。わざわざお礼を言いに来てくれたのだろうか?素晴らしい人柄。
「ローゼン様に神のご加護がございますように」リリアも礼を尽くす。
「うむ、リリア殿は王国の認める勇者であり、剣客である。堅苦しい挨拶には今後及ばぬ、気さくに話しをして構わない」とっても良い人だ、その辺の威張り腐った連中に爪の垢を煎じて飲ましてやりたい。
ローゼンはリリアに情報を持って来てくれたらしい。
ローゼンの情報によると、今回の功績は国に記録されるが、国認定の勇者は戦争に参加できないルールがあるので、勇者リリアではない、別のリリア扱いになるようだ。
もっともリリアにとってはそんなのどうでも良いことだ。
書類を何とかして、今後もリリアは戦争に参加できるようにするらしい。
リリア自身は戦争参加に乗り気ではないのだが、今回の件で国は参加して欲しくなったのだろう。
そして、今回の働きをもってして勲章が出るらしい。
味方を勝利に導いた第1功労者として、“金星”、短期間で戦況を打開した“雷”の二つらしい。
これがどれくらい凄いのかリリアにはピンと来ないが、どうやらガウとメルの勲章を一気に超えたようだ。
国にしては珍しく気前が良いと思ったら、書類上の事は粛々と進められるという説明。
「これって、あたし一級市民になるんですか?」リリアは聞いてみる。
「…もともと国の勇者であるから… どうなのであろう… 恐らくなるのではないか?」これに関してはローゼンにわからないようだ。
一級市民になって欲しい。税金が少し安くなるはずなのだ。
そしてローゼンは最後に軍で使う弓をリリアに手渡した。
「この弓、良いんですか?しかも、上級兵士が使う弓」驚くリリア。高級品だ。
「うむ、リリア殿が軍の弓を欲しがっていたのでな。私が申請した物を不良品とした物だ」
「ローゼン少佐、リリアはこの御恩…」
「一生か!… 気にするな、それだけの価値ある仕事はしている。それに今後、我が隊で狙撃手を頼む事もあるだろう。その時はその弓と貴殿に期待するぞ」
ローゼン少佐、小柄なのに器は大きい。この人の器はリリアの胸より大きいかもしれない、リリアは思う。
しばらくリリアとローゼンは喧騒の中で世間話をしていた。
海風が心地よい天気だ。
陣の解体を終え、片づけが済むと、勝利の解散式になった。
各隊が整列し、王国のバナーと連隊旗がなびく中、例のごとく誰それのスピーチ。
閉めに今回の英雄リリアが壇上に立たされた。
“はいはい、リリアの一言ですねぇ、段々慣れてきましたよ”リリアは満面の笑みだ。
壇上から見渡すリリア。兵士達の顔が並ぶ、皆リリアの言葉を待っている。
リリアはとっても誇らしい。
“父さん、母さん、見てますか!リリアを、我が娘を誇ってください。リリアは今ちょっと勇者の子孫っぽくなってます。リリアは父さん、母さんを誇りに思います”
リリアは形見のペンダントを首から外すと、弓と一緒に手に握った。
「みんなーーーー、家に帰るまでが戦争ですよーーーー お気をつけてーーーー」
笑顔で、弓とペンダントを天に突き上げると、思いっきりリリアは叫んだ。
「わあああぁぁぁぁぁ」兵士から雷鳴の様な勝鬨の声がこだまする。
かざされたペンダントがキラキラとしている。
太陽もペンダントもリリアの働きを祝福してくれているようだ。
常備兵以外は陣を引き払い次第、勝利の凱旋を出来るのだ。活気に溢れ、皆いそいそと野営幕をたたみ、柵を解体していく。
リリアもその中で汗まみれで作業をしている。ランカシム砦を無血勝利させたリリアだが、一傭兵に変わりはない以上、平等に作業がある。ただ、周りからは感謝され、ちやほやされる。イリオフ砦でも陣を引き払っているのが見える。
リリアは周りの兵士達に声をかけられては、笑顔を見せながら、汗まみれの力作業中。
大変だがかたずけ次第、家に帰れると思うと、疲れを感じない。もっともリリアはルーダ・コートの自宅に戻る前に、ポート・オブ・ルーダ、ルーダリア最大の港街に寄る予定。
リリア自身は、的を射落とした事が全く記憶にない。進行係り達ともみ合ったあたりから記憶がなくなり、気がつけば自分が的を射落として、味方が勝利を収めた事になっていた。
何だかよくわからないけど、奇跡、そしてリリアのお手柄。
“どうにか、処刑は回避したみたいね”とりあえずリリアは一安心。
一晩意識がなかったらしいが寝て起きたらリリアは英雄扱いなっていた。
“考えてみれば英雄と勇者、どう違うのかしらねぇ”汗と泥にまみれた英雄は考える。
「リリア殿」リリアは呼ばれて振り返った。聞いたことある声。
「ローゼン少佐!」あまり話した事ないが、国士の中で唯一感情移入できる人だ。ローゼンの方でもリリアに好感を持っているのがわかる。
「リリア殿、この度は色々ご苦労だったが、我らリリア殿のお陰で勝利を手にできた、感謝をする」ローゼンの凛とした声。わざわざお礼を言いに来てくれたのだろうか?素晴らしい人柄。
「ローゼン様に神のご加護がございますように」リリアも礼を尽くす。
「うむ、リリア殿は王国の認める勇者であり、剣客である。堅苦しい挨拶には今後及ばぬ、気さくに話しをして構わない」とっても良い人だ、その辺の威張り腐った連中に爪の垢を煎じて飲ましてやりたい。
ローゼンはリリアに情報を持って来てくれたらしい。
ローゼンの情報によると、今回の功績は国に記録されるが、国認定の勇者は戦争に参加できないルールがあるので、勇者リリアではない、別のリリア扱いになるようだ。
もっともリリアにとってはそんなのどうでも良いことだ。
書類を何とかして、今後もリリアは戦争に参加できるようにするらしい。
リリア自身は戦争参加に乗り気ではないのだが、今回の件で国は参加して欲しくなったのだろう。
そして、今回の働きをもってして勲章が出るらしい。
味方を勝利に導いた第1功労者として、“金星”、短期間で戦況を打開した“雷”の二つらしい。
これがどれくらい凄いのかリリアにはピンと来ないが、どうやらガウとメルの勲章を一気に超えたようだ。
国にしては珍しく気前が良いと思ったら、書類上の事は粛々と進められるという説明。
「これって、あたし一級市民になるんですか?」リリアは聞いてみる。
「…もともと国の勇者であるから… どうなのであろう… 恐らくなるのではないか?」これに関してはローゼンにわからないようだ。
一級市民になって欲しい。税金が少し安くなるはずなのだ。
そしてローゼンは最後に軍で使う弓をリリアに手渡した。
「この弓、良いんですか?しかも、上級兵士が使う弓」驚くリリア。高級品だ。
「うむ、リリア殿が軍の弓を欲しがっていたのでな。私が申請した物を不良品とした物だ」
「ローゼン少佐、リリアはこの御恩…」
「一生か!… 気にするな、それだけの価値ある仕事はしている。それに今後、我が隊で狙撃手を頼む事もあるだろう。その時はその弓と貴殿に期待するぞ」
ローゼン少佐、小柄なのに器は大きい。この人の器はリリアの胸より大きいかもしれない、リリアは思う。
しばらくリリアとローゼンは喧騒の中で世間話をしていた。
海風が心地よい天気だ。
陣の解体を終え、片づけが済むと、勝利の解散式になった。
各隊が整列し、王国のバナーと連隊旗がなびく中、例のごとく誰それのスピーチ。
閉めに今回の英雄リリアが壇上に立たされた。
“はいはい、リリアの一言ですねぇ、段々慣れてきましたよ”リリアは満面の笑みだ。
壇上から見渡すリリア。兵士達の顔が並ぶ、皆リリアの言葉を待っている。
リリアはとっても誇らしい。
“父さん、母さん、見てますか!リリアを、我が娘を誇ってください。リリアは今ちょっと勇者の子孫っぽくなってます。リリアは父さん、母さんを誇りに思います”
リリアは形見のペンダントを首から外すと、弓と一緒に手に握った。
「みんなーーーー、家に帰るまでが戦争ですよーーーー お気をつけてーーーー」
笑顔で、弓とペンダントを天に突き上げると、思いっきりリリアは叫んだ。
「わあああぁぁぁぁぁ」兵士から雷鳴の様な勝鬨の声がこだまする。
かざされたペンダントがキラキラとしている。
太陽もペンダントもリリアの働きを祝福してくれているようだ。
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