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【27話】 ギルマス・コトロ
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ルーダ港でのお土産を手にルーダの風にリリアが戻ると、コトロ、ニャン、ピョンがリリアの凱旋を喜んで、ささやかだがお祝いをしてくれた。
三人共リリアが勝利の立役者だと知っているようだ。コトロはリリアが戦争の第一貢献者になったのだから、次回のギルド査定でルーダの風が廃ギルドになる事はないだろうと喜んでいる。リリアにとってもありがたいことだ、正直変なギルドに入りなおすくらいなら、このギルドで活動したい。
ルーダの風にも情報紙が置いてあり、各紙リリアという弓兵が王国を勝利に導いたと大きく報じ、勇者リリアと弓兵リリアは同一人物か?という論調。
相変わらず、誰なのこれ?っていう挿し絵が描かれている。どこもマント姿の女性弓兵が矢を放つ絵を紹介しているが、リリアはマントなんて着けていない。
“英雄=マント”ステレオタイプの典型。真実なんてありゃしない。
バー・ルーダの風の開店時間までしばらくある午後のひと時、リリア、コトロ、ネーコ、ラビ、四人でカウンターを囲んでいた。
ギルドに保管してある遺跡、ダンジョン等の資料を読みながら会議中。
リリアはどうしても単独で探検に行きたいのだが…
「一人でエバー・フォレスト遺跡ですか?石造と廃寺院を見たいのですね、ダメです」
コトロは続ける。
「リリアの弓の技術は認めます、想像以上だと思います。しかし、今のリリアでは傭兵として力はありますが、一人で冒険は無理です。正直パーティーでもバックアップメンバーです」
「……そのテントは誰が担ぐんですか? ……それ一人で担いで、魔物と突然戦えますか? その量の食料は誰が?」
「……馬ですか?馬車ですか?夜中、遺跡探検中は馬と馬車は外に放置ですか? ……馬車の応急修理は出来ますか?」
「野営中、夜中一人でグウグウ寝てる気ですか? ……その方法で何日間体力が持つと思っているんですか?」
「本格的登山経験は?… 登山道具の使い方は?… 土地勘無い場所で迷ったら?…」
リリアの説明にきっちり理由付きでダメ出しするコトロ。リリアでは太刀打ちできない、確かにコトロの言うとおり、自分の考えは甘かったと思うリリア。
ギルマスを押し付けられるまでは、本格的に冒険パーティーに参加をしていたと言うのも伊達ではない。
リリアは正直コトロを、リュート演奏で生活するために、酒場の店長気分でギルマスをやっている程度にしか思っていなかった。バード・カレッジとはいえ、さすが王国で修学しているだけの事はある。もしかしたら、今ルーダの風が儲かっているのも偶然ではないかも。
「リリアはどうせ勝手に行こうと思っていますね?だめですよ、ギルメンの実力にあったガイドラインを与えるのもギルマスの仕事なんですよ」しっかりしているコトロ。
「今しばらくは、人探しとか、お尋ね者賞金稼ぎとか、季節の物を山に入って採って来るとか、郊外の廃屋の魔物掃討とか… 錬金術課の生徒達の野外授業の護衛か、弓の家庭教師とかから実力をつけていくのが良い気がしますが…」なかなか厳しいコトロ。
ニャンとピョンはお茶しながら、色々な資料を読んでいる。
「ネーコとラビは冒険したいですか?冒険の経験はどれくらありますか?」コトロが聞く。
「長い旅してルーダ港からこの大陸来たニャン。今のリリたんでもネーコでも遺跡は大変ニャン」
「ラビも旅してルーダ港から来たピョン、ルーダにたどり着いた仲間は多くなかったピョン」
皆あっけらかんとしてここに居るけど、苦労しているんだなとリリアは思う。
「そもそもパーティー組むのに苦手意識があるって致命的ですけど、どうしても1回行きたいなら… セコイアのストーンヘンジ、初心者向きです。そして、パーティーは私の知り合いに頼むからその人達と組むなら許可します」
「ストーンヘンジ!行く行く!遠いと思って敬遠してたけど、あたしそこも興味あったのよ!」リリアはコトロの言葉に喜ぶ。
「ルーダ・コートからはちょっとありますが、近くに村があり、何かあっても村まで帰りやすい上に、初心者パーティーが良く行くので安全です」
「いいわ、あたしそこでちょっと経験してくる」納得のリリア。
「ちなみにパーティーは男でも女でも構わないですよね?」コトロがリリアに聞く。
「え?… 選べるなら男がいいわよ」リリアが悪戯っぽく笑って言う。
「…… 今回は全員女にしますから… 夜が一番危険なんですよ、エッチとかしている場合じゃないですから…」コトロは冷静。
“ひょっとしたら、コトロがギルマスする限り、ルーダの風は残るかも”リリアは結構感心している様子だ。
「丸く収まったニャン」
「リリたん大暴れはなかったピョン」
ニャンとピョンはニコニコお茶を飲んでいた。
三人共リリアが勝利の立役者だと知っているようだ。コトロはリリアが戦争の第一貢献者になったのだから、次回のギルド査定でルーダの風が廃ギルドになる事はないだろうと喜んでいる。リリアにとってもありがたいことだ、正直変なギルドに入りなおすくらいなら、このギルドで活動したい。
ルーダの風にも情報紙が置いてあり、各紙リリアという弓兵が王国を勝利に導いたと大きく報じ、勇者リリアと弓兵リリアは同一人物か?という論調。
相変わらず、誰なのこれ?っていう挿し絵が描かれている。どこもマント姿の女性弓兵が矢を放つ絵を紹介しているが、リリアはマントなんて着けていない。
“英雄=マント”ステレオタイプの典型。真実なんてありゃしない。
バー・ルーダの風の開店時間までしばらくある午後のひと時、リリア、コトロ、ネーコ、ラビ、四人でカウンターを囲んでいた。
ギルドに保管してある遺跡、ダンジョン等の資料を読みながら会議中。
リリアはどうしても単独で探検に行きたいのだが…
「一人でエバー・フォレスト遺跡ですか?石造と廃寺院を見たいのですね、ダメです」
コトロは続ける。
「リリアの弓の技術は認めます、想像以上だと思います。しかし、今のリリアでは傭兵として力はありますが、一人で冒険は無理です。正直パーティーでもバックアップメンバーです」
「……そのテントは誰が担ぐんですか? ……それ一人で担いで、魔物と突然戦えますか? その量の食料は誰が?」
「……馬ですか?馬車ですか?夜中、遺跡探検中は馬と馬車は外に放置ですか? ……馬車の応急修理は出来ますか?」
「野営中、夜中一人でグウグウ寝てる気ですか? ……その方法で何日間体力が持つと思っているんですか?」
「本格的登山経験は?… 登山道具の使い方は?… 土地勘無い場所で迷ったら?…」
リリアの説明にきっちり理由付きでダメ出しするコトロ。リリアでは太刀打ちできない、確かにコトロの言うとおり、自分の考えは甘かったと思うリリア。
ギルマスを押し付けられるまでは、本格的に冒険パーティーに参加をしていたと言うのも伊達ではない。
リリアは正直コトロを、リュート演奏で生活するために、酒場の店長気分でギルマスをやっている程度にしか思っていなかった。バード・カレッジとはいえ、さすが王国で修学しているだけの事はある。もしかしたら、今ルーダの風が儲かっているのも偶然ではないかも。
「リリアはどうせ勝手に行こうと思っていますね?だめですよ、ギルメンの実力にあったガイドラインを与えるのもギルマスの仕事なんですよ」しっかりしているコトロ。
「今しばらくは、人探しとか、お尋ね者賞金稼ぎとか、季節の物を山に入って採って来るとか、郊外の廃屋の魔物掃討とか… 錬金術課の生徒達の野外授業の護衛か、弓の家庭教師とかから実力をつけていくのが良い気がしますが…」なかなか厳しいコトロ。
ニャンとピョンはお茶しながら、色々な資料を読んでいる。
「ネーコとラビは冒険したいですか?冒険の経験はどれくらありますか?」コトロが聞く。
「長い旅してルーダ港からこの大陸来たニャン。今のリリたんでもネーコでも遺跡は大変ニャン」
「ラビも旅してルーダ港から来たピョン、ルーダにたどり着いた仲間は多くなかったピョン」
皆あっけらかんとしてここに居るけど、苦労しているんだなとリリアは思う。
「そもそもパーティー組むのに苦手意識があるって致命的ですけど、どうしても1回行きたいなら… セコイアのストーンヘンジ、初心者向きです。そして、パーティーは私の知り合いに頼むからその人達と組むなら許可します」
「ストーンヘンジ!行く行く!遠いと思って敬遠してたけど、あたしそこも興味あったのよ!」リリアはコトロの言葉に喜ぶ。
「ルーダ・コートからはちょっとありますが、近くに村があり、何かあっても村まで帰りやすい上に、初心者パーティーが良く行くので安全です」
「いいわ、あたしそこでちょっと経験してくる」納得のリリア。
「ちなみにパーティーは男でも女でも構わないですよね?」コトロがリリアに聞く。
「え?… 選べるなら男がいいわよ」リリアが悪戯っぽく笑って言う。
「…… 今回は全員女にしますから… 夜が一番危険なんですよ、エッチとかしている場合じゃないですから…」コトロは冷静。
“ひょっとしたら、コトロがギルマスする限り、ルーダの風は残るかも”リリアは結構感心している様子だ。
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