勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
59 / 519

【30話】 林の中の決闘

しおりを挟む
リリア、ペコ、アリスは林の外で合流。ペコから素早くブリーフィングが伝えられる
「アリスはすぐに馬車まで戻れる林の中で待機、薬、気付け薬持って。馬車の安全確保が最優先よ。通信はしばらく使わない。リリアと私で被害者を救出、最優先。賊は皆殺し、だけど出来れば一人は生け捕り」
「生け捕り?なんで?」何のためだろうか?リリアの疑問。
「説明は後、相手は6人でしょ?リリアの弓で最初に何人やれる?」
「二人… 上手くいけば三人…」
「… 二人ね。散開して待機するからリリアが二人やったところで私ファイヤー・ボールを打ち込む。相手は混乱するだろうから、後は状況に応じて始末よ。一人で二人づつ相手にしたら終わるわね。くれぐれも裸の賊より装備出来てる賊からやって。リリア、練習通りよ」
「アリスは戦わないの?」リリアが聞く。
「馬車は生命線よ、放置は出来ないの。質問が無いならいくわよ、アリスいつものお願い」
ペコが言うとアリスはペコとリリアにプロテクションと回復補助の魔法をかける。これで一定時間ダメージが少し減るのと傷が少しづつ回復する。
リリアも出来るだけポーションを持つ。
「リリア、顔真っ青だよ」ペコが指摘する。
「……怖いよ」ただ単に怖い、恐怖しかない。
「…… 準備が出来たなら行くよ、悪に滅びを」ペコが言うとアリスが付け加えた。
「神よ、正しき行いの我らにご加護を」


リリアとペコが散開して木陰で位置に着いた。手筈通りだ。賊は女性を暴行しているが、ちょっと問題発生、6人が8人になっている。
一人は女性を暴行中、それと一人は武装を解除している、残り6人は装備して行為を見ている。
“賊が増えている、どうしよう?”リリアは距離のあるところの木陰に隠れるペコを見る。
“このままGo!”のサインをペコがリリアに送る。
リリアはゆっくりと深呼吸… 森林の香に気づく… 少し落ち着くようだが手は振るえている。
弓を絞り半身になって木の陰から狙いをつける。手は震えるが、リリアなら正確に射抜ける距離。

「父さん、国民を守るリリアに勇気を。母さん武器を手にするリリアにお許しを。神よ、リリアにご加護を」
一矢一線、一人射抜かれて崩れ落ちる。
「誰だ!」「敵か!」
色めき出す賊の二人目をリリアの次の矢が射る、手際が良い。残り6人。
「矢だ、弓だ!」
「固まるな!散れ、散れ!」
「ぐっ! ぅぅぅ…」行為に及んでいた賊がうずくまる、確実な相手を狙った三矢目。戦えるのは残り5人。
「あっちからだ」
方角が割り出された、リリアは身を隠す。
「うわぁ!」「ぎゃぁ!」
矢が飛んできた方向と違う方法からファイヤー・ボールが賊を襲う。乱射しているが、賊を捉えている。さすがリーダーだ。
「こっちもいるぞ!」「囲まれたぞ!」一気に混乱させた。リリアが覗くと賊は残り4人だ。勝機が見えてくる。
ファイヤー・ボールが次々と賊を襲う。正確性に欠けるが、相手の気を散らすには十分。
ペコの攻撃から身を守るために木陰に潜む賊が見えるが、ここからは丸見え。逃すものか。
残り3人。賊も魔法と弓の飛び道具を使った二カ所からの攻撃と気づき始めた。
“甘い!もう遅い!”っと射かけるが冷静に行動を始めた賊を相手に残念ながらここから外しまくるリリア。場所もばれてしまった。
「あそこだ!女だ!」
3人が襲って来る。接近戦だ、賊三人ならなんとか粘れる。と、思ったらファイヤー・ボールが一人をなぎ倒す、残り二人。
二人がリリアに走り寄る。決死の形相だ!
“これでもくらえ!残り一人!”リリアも遊んでいたわけではない、ダガーの投擲を練習していたのだ。これを食らわせて1対1の剣なら確実にこのリリアが上よ!
「賊!くらえ!……… あら…」練習不足、力み過ぎ、ダガーは明後日の方向に飛んでいった… 賊二人が剣を手に走り混んでくる。リリアも剣を抜いて覚悟を決める。乱戦の始まりだ。
「リリア、粘って!練習どおりいくよ!」ペコが攻撃しながら応援に来る。
剣を手にした途端、バッタバタになってしまった。二人がかりはつらい、命がけの連中は練習とは大違い。相手は傷ついても致命傷でない限り死力を尽くして襲って来る。何故逃げるって選択肢を使わないの?執念って恐ろしい…
リリアもファイヤー・ボールを食らって転倒、負傷する。手筈どおりいかないじゃない!
「ペコ!ペコ!魔法はいいから!来て!助けて!」リリアが叫ぶとペコが剣を手に足り寄るのが見えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...