勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【40.5話】 リリアモデル初仕事

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試合の次の日、街中でリリアは子供に囲まれてちょっとした人気者になっていた。
もっともこれ自体は試合の影響というより、試合前の握手会の影響のようだ。
試合での人気は男性客中心。
「試合も凄かったけど、女性勇者がボロボロに痛めつけられる姿が別な意味で興奮した」と、世の中のドS男のハートを鷲掴みした模様。

試合後は関係者と食事して解散。ラビは一足先にギルドに戻りリリアは一人、ルーダ港でゆっくりしてバイト等をしながら戻る予定。
ラビをルーダ・コート行の駅馬車まで送って、街ブラしていると
「あ!勇者のお姉ちゃん!」と子供が。一人くると、二人になり、二人になると4人に囲まれ、街中でちょっとした人気者になった。

「いやぁ、どうもどうも、勇者リリアお姉さんですよ。この装備一式はリリアモデルとしてギルド・リアルゴールドとハンズマンから提供されているのよ!リアルゴール、ハンズマンありがとう、女性勇者装備はやっぱりリリアモデルよね!」リリアの顔も心からほころぶ。
“子供はいいわね、屈託なく、打算なく、純真”昨日の疲れ、これからの憂鬱も吹き飛ぶようだ。
「お姉ちゃん!僕も大きくなったら勇者になる」
「剣見せて!」
「魔法は何が得意?」
「なんかちょうだい!」
口々にリリアの周りに集まってきてスキンシップ。
リリアは膝をついて子供達にニコニコ対応、小さなファンは大事にしないと。リリアの人気は国とっても良い事。
「そう、じゃ剣技の練習しないとね」
「剣は危ないから見せられないのごめんね」
「お姉ちゃん、勇者だけど魔法できないの」
「抽象的すぎて何をあげたら良いかわからなわ」
一人ひとり丁寧に対応。そのうち、
「痛い、いたた… ちょっとお姉ちゃん痛いわよ」
子供というのは手荒い。叩いたり、つねったりする輩が出てくる。
“これだから… 最近の子供は教育がなってない…”
「勇者のお姉ちゃん強いんでしょ?えい!」
「僕は魔人だ、勇者を成敗」
「お姉ちゃん僕も強いんだよ」と小さな悪魔が出現しだした。もともと勇者に興味を持つ子供達だ、大人しい部類ではない。ありがちな展開。

「そうなの?、お姉ちゃんも負けられないなぁ」
「やられたら倍返しよ」
「お姉ちゃんが勇者の大変さを教えてあげるね」
「僕のお父さんはどこかな?親の面を拝んでやりたいなぁ」
リリアは笑顔を絶やさず外から見えないように、きっちり裏拳、みぞおち、肘鉄を食らわせてそれとなく追い払う。
しつこい子にはちょっと胸ぐらを掴んでなるべく笑顔を崩さず
「てめぇ、いい加減にしねぇと、金玉引っこ抜くぞ」とちょっと低い声で諭す。
子供達もだんだん解散していく。リリアとスキンシップの会はお開き。
さすがリリア、大人の対応。
リリアは散っていく子供を笑顔で送りながら一言、
「人気者って大変なのねぇ… リリアに務まるかしら?」
結構うまい事務まりそうだと思います…


その夜、食事をして宿屋に帰る途中、娼館街近くを歩いていると、暗がりでカップルが数名のチンピラに絡まれている。どうやらカツアゲのようだ。大の男が数名で一人の人間を… 許せない。

娼館街周辺は治安が悪い上に暗黙の治外法権地帯のようになっている。衛兵もあまりいない。でも、国民を守る立場のリリアが見て見ぬふりは出来ない。父さんに笑われる。
「待て、輩共!」リリアが割って入る。
「なんだテメェ!」チンピラの当然の反応。
「勇者リリア参上!商人ギルド・リアルゴールと工芸ギルド・ハンズマンの共同開発と無償サポートにより授かった勇者リリアモデル(女性版)のこの剣で成敗してくれる」
初めて噛まずに言えた、それと輩共が言い終わるまでちゃんと待っていてくれた事に感動。

そして、剣を抜く…
“キラーーーーーン”刀身が光り輝く。神々しい演出。
ってか神々しすぎる、リリアは目の前にかざして思いっきり見てしまった。目がくらむ。昼間であれだけ輝いて見えるのだ、よく考えたら夜にまともに見たら当然の結果だが、そこまで考えていなかった。
“あら、あらら、光の玉が… 残像が… 何も見えない!”焦るリリア。
「さぁ、チンピラ共め、かかってくる前に、この素振りの音を聞きなさい… えい! えい! どうだ!こんな凄い素振り音聞いたことないでしょ!このリリア様とやりあおうっての?」
はったりかまして、時間稼ぎするしかない。輩を威嚇し暗順応待ちリリア。

「あ、あのう、もう誰もいませんけど…」カップルが驚いている。
カップルの話しでは、剣の光でチンピラは「こいつ、本格派だ」っと逃げていったらしい。
“全然要らない機能だと思ったけど、使い方次第なのね…”リリアは感心。
とにかく、お礼を言うカップルにリリアは笑顔で答える。
「国民とその財産を守るのは、あたしの仕事よ。ギルド・リアルゴールドとハンズマン共同提供のこのリリアモデル装備一式もよろしくね」
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