勇者の血を継ぐ者

【44話】 契約マッチ第二試合の控室

リリアの契約イルミネーションマッチ第二戦。
前日は広場でリリアのファンサービスが行われた。予想い以上に人気だ。リアルゴールド、ハンズマンの関係者も予想を超える人気には喜んでいる。
が、男性ファンに圧倒的なのだ、リリアモデルは女性勇者用なのだが、この企画は大丈夫なのか？
「リリア様ぁ！がんばれぇ！」
「試合見て感動しました、すごいやられっぷり！」
「魔法使えなくても勇者になれると勇気をもらいました！」
「一般人の能力でも魔物に勝てるんですね！」
心中複雑な応援もあるが、とりえず満面の笑みで手を振り、握手に応じる。
「勇者のお姉ちゃん！」
子供たちは常に純真、可愛らしい。一番この声に励まされる気がするリリア。
一般市民の女性はともかく、同業者の女性からは複雑な視線を投げかけられる。
“最近の勇者はスポンサー背負って出来レースするほど困ってるの？”
“剣を持つ者が色気を売りにして、道化もいいとこよ”
「なんだテメェら！いつでも勝負するぞ！おぅ？」っと言ってやりたいのを我慢しながらニコニコするリリア。
自由時間にリリアが街中を散歩していると、リリアのポスターには相変わらず、目に画鋲、髭にモヒカン、胸とお尻にお決まりの落書きがされていた。


当日の控室。タイトルマッチの前座に試合をするリリア。
控室は色んなお偉いさんがいる。花束がいくつか届いているが、どれもリリアの知らないネームが入っている…　この人達、団体誰なの？…

仕事女キャシィが色々説明するが、緊張と試合以外の不安が強すぎて全然頭に入ってこない。基本的には前回同様なのだが、今回の相手は女ルーンマスター。魔法女と物理女の闘いがコンセプトらしい。前の試合の調査では、リリアのこっぴどいやられからのカムバックが人気のポイントらしく、強めのやられ演出は外せないらしい。
が、嬉しい事に今回は人間相手、ちゃんと話が通って仕込みが出来ているとのこと。
“よかったぁ、前回みたいな試合ばっかりじゃ、体が持たない”リリアも一安心。

「リリア様、お相手は結構有名なルーンマスター、実力は折り紙付きです。試合中は謎の女性魔法使いということで変化していただき、試合していただきます。とにかくリリア様の人気の原動力は今のところボロボロのやられ状態から狂気のカムバックなので、出来レースですが、やられの部分は覚悟していてください」と、キャシィ。
「………　ねぇ、やられを手加減してくれないと意味が無いんじゃないの？」リリアは不満、他人事だと思って…。
「今どきの観客は目が肥えていますから…　同じ結果でも経過の過程においては…　（省略）」
とにかくやるしかチョイスがない…　まぁ、コングよりはマシだろう…


まだ試合には時間がある、緊張しながらリリアが控室で待っていると、いつの間にか老婆が部屋に来ていた。
「あなたがリリアさんね。私はあなたのお相手、ソロモナです。今日はよろしく」
リリアが驚いているとソロモナは、皆の前で若き女性魔法使いに変化してみせた。
「あ、あぁ、あの、今日は、よろしくお願いします」リリアは突然の訪問と変化の見事さに圧倒されながら挨拶。
ソロモナ婆さんは少しリリア達と雑談すると、関係者に変化して控室から出ていった。
ニコニコして、とっても良い人、かなりの実力者なのだろう。
普段こんな事は絶対しない人らしいが、リアルゴールドの人脈で了承をもらったらしい。


「…　ねぇ、あたしあの人に剣を振るうの？…　こんなことなら会わない方が良かったのに…」
リリアはさっきのにこやかなソロモナ婆を思い出して言う。
「リリア様、全力で行ってください。大丈夫ですよ、あの方の実力なら普段、リリア様は絶対足元にも及ばず、一ひねりで潰せるくらいの実力差です」
キャシイが事も無げに言う。
「……　ねぇ！あんた試合まで黙ってなさいよ！そこの花束でぶったたくわよ！」
リリアが怒鳴りつけると、控室は静まり返った。