182 / 519
【91.5話】 ルド ※過去の話し※
しおりを挟む
夕方前リリアは山から戻って来た。辺りはムシムシしている。
村付近まで戻って来て「………なんだろう?」何か村の様子が変だ。
不思議がりながら村の入り口まで来たら後ろから声をかけられた。
「リリア!良かった、戻りを待ってたよ、直ぐに下の川まで行ってくれ」
「リエおばさん、慌ただしいけど何かあったの?」
「ルドだよ!ルドが川に入ったっきり上がって来ないよ、皆で今探しているところだよ。すぐ行っておくれよ」
「ルドが!?」リリアは慌てて川へ走る。
「リリア!よかった、おまえが頼りだよ。クレアのところのルドが…」
リリアが土手を下って川原に駆け下ると村の人が右往左往している。子供達も集まっている。クレアは泣き崩れ、子供達も泣いている。
“ルドが…” リリアと同じ13歳になったばかりだ。今日は教会で一緒に午後まで数人で勉強をしていた。
「今日は弟のために、こんなデッカイ魚獲るんだ!リリアお前も来いよ!」
「雨上がりで川は早いよ、リリアは山で果実獲りたいから」
「早いったって大した事ねぇよ、いつもと変わんねぇよ」
男の子達で川に行くのをリリアは断って山に入ったのだ。
「皆は?」リリアが川原に集まっている村人に聞く。
「総出で川を下って探しているよ。リリア詳しいだろ頼むよ」誰かが答えてくれた。
「スコット、あなた達、教会から戻ってすぐに川に入ったんでしょ?」リリアが男の子達に聞く。
「あぁ… だけどしばらくはルドも一緒に岩場から飛び込んでたんだ。途中まで皆一緒だったけど、一時して気がついたらルドが居なくなっていて…」
スコットは小さく頷くばかりだったがテイルが小さく答える。
リリアが川を見ると、雨の後で水足は速くなっているが、男の子たちが溺れるほどでもないのだが…
「………… わかった……… あたし、池まで下るから……」
リリアはその場を離れる。
「りリア!ちょっと待て」
ジムおじさんが追いかけて来て呼び止めた。
「時間が結構経つ。溺れただけならもう上がって来て見つかっているはずだ。男達は川底探しを始めたぞ。おまえ、池まで下りるんだな」怖い表情をし、声を落としてジムがリリアに問いかける。
「………… リリアは池だと思う…」リリアは小さく答える。
「………… そうか… 人を… 集めるから… すまないがルドをよろしく…」
リリアはジムの声を背に急いで川沿いに下る。
リリアには何となくルドの居場所がわかった。
子供達と川でよく遊ぶ。池は少し離れになるので普段は側の川で遊ぶが、気が向くと池まで行く事もしばしば。
川を下ると池になっていて、水が少し滞り再び川になる。
大雨の後、池に潜ると川に落ちて溺れたウリボウやタヌキが決まった場所に沈んでいるのだ。たぶん流れが溜まる場所なのだろう…
ジムが数名の男を連れて池まで来るとリリアを探した。
ジム達が見つけた時、リリアは池の淵でずぶ濡れになってブルブルと震えて蹲っていた。
「リリア…… ルド…… いたか?… 底にいたんだな…ルド…」
リリアはコクコク頷きながら池の底を指さす。
「ごめん… あたし、引き上げられない…」小さく呟くリリア。
「あぁ… ありがとう、助かった。ルドは俺達が連れて帰る、おまえは村に戻ってろ」ジムがリリアの肩を撫でる。
夕刻、教会ではゼフが葬礼の準備をする。修道女リリアもお手伝い、しなければならないが手が進まない。ゼフもさすがに何も言わず黙々と女達と準備をしている。
壇上には安らかなルド…
「リリア!!おまえルドがわかるんだろ!本当はルドと話せるんだろ!」
礼拝室にいるリリアを見つけてクレアが叫び声をあげた。
「リリア!ルドがわかるんだろ!勇者の子だから力があるんだろ!」
周りの人に取り押さえられる。
「クレアおばさん… リリアにはそんな事無理よ…」リリアが席に座って呟く。
「おまえがルドの居場所を知ってたじゃないか!本当はわかるんだろ!もう一度だけあのこと話をさせとくれよ!勇者だから出来るだろう!」
「無理だよ… ただ、そこに居るって、普段から… 何となく思っただけだよ…」
「リリア!!おまえ出来るんだろ!勇者だから力あるんだろ!」
叫ぶクレアはゼフに慰められ、皆に抱えられながら連れ出されていった。
「リリア、部屋で少し休みなさい、式には呼ぶから」
ゼフがリリアに声をかける。手伝いは要らないらしい… もっとも何も手伝えていない…
リリアは小さく頷くと礼拝室の通路に立ち上がった…
壇上のルドを見ると、ローソクの灯りで今にも起きてきそうな表情をしている。
村付近まで戻って来て「………なんだろう?」何か村の様子が変だ。
不思議がりながら村の入り口まで来たら後ろから声をかけられた。
「リリア!良かった、戻りを待ってたよ、直ぐに下の川まで行ってくれ」
「リエおばさん、慌ただしいけど何かあったの?」
「ルドだよ!ルドが川に入ったっきり上がって来ないよ、皆で今探しているところだよ。すぐ行っておくれよ」
「ルドが!?」リリアは慌てて川へ走る。
「リリア!よかった、おまえが頼りだよ。クレアのところのルドが…」
リリアが土手を下って川原に駆け下ると村の人が右往左往している。子供達も集まっている。クレアは泣き崩れ、子供達も泣いている。
“ルドが…” リリアと同じ13歳になったばかりだ。今日は教会で一緒に午後まで数人で勉強をしていた。
「今日は弟のために、こんなデッカイ魚獲るんだ!リリアお前も来いよ!」
「雨上がりで川は早いよ、リリアは山で果実獲りたいから」
「早いったって大した事ねぇよ、いつもと変わんねぇよ」
男の子達で川に行くのをリリアは断って山に入ったのだ。
「皆は?」リリアが川原に集まっている村人に聞く。
「総出で川を下って探しているよ。リリア詳しいだろ頼むよ」誰かが答えてくれた。
「スコット、あなた達、教会から戻ってすぐに川に入ったんでしょ?」リリアが男の子達に聞く。
「あぁ… だけどしばらくはルドも一緒に岩場から飛び込んでたんだ。途中まで皆一緒だったけど、一時して気がついたらルドが居なくなっていて…」
スコットは小さく頷くばかりだったがテイルが小さく答える。
リリアが川を見ると、雨の後で水足は速くなっているが、男の子たちが溺れるほどでもないのだが…
「………… わかった……… あたし、池まで下るから……」
リリアはその場を離れる。
「りリア!ちょっと待て」
ジムおじさんが追いかけて来て呼び止めた。
「時間が結構経つ。溺れただけならもう上がって来て見つかっているはずだ。男達は川底探しを始めたぞ。おまえ、池まで下りるんだな」怖い表情をし、声を落としてジムがリリアに問いかける。
「………… リリアは池だと思う…」リリアは小さく答える。
「………… そうか… 人を… 集めるから… すまないがルドをよろしく…」
リリアはジムの声を背に急いで川沿いに下る。
リリアには何となくルドの居場所がわかった。
子供達と川でよく遊ぶ。池は少し離れになるので普段は側の川で遊ぶが、気が向くと池まで行く事もしばしば。
川を下ると池になっていて、水が少し滞り再び川になる。
大雨の後、池に潜ると川に落ちて溺れたウリボウやタヌキが決まった場所に沈んでいるのだ。たぶん流れが溜まる場所なのだろう…
ジムが数名の男を連れて池まで来るとリリアを探した。
ジム達が見つけた時、リリアは池の淵でずぶ濡れになってブルブルと震えて蹲っていた。
「リリア…… ルド…… いたか?… 底にいたんだな…ルド…」
リリアはコクコク頷きながら池の底を指さす。
「ごめん… あたし、引き上げられない…」小さく呟くリリア。
「あぁ… ありがとう、助かった。ルドは俺達が連れて帰る、おまえは村に戻ってろ」ジムがリリアの肩を撫でる。
夕刻、教会ではゼフが葬礼の準備をする。修道女リリアもお手伝い、しなければならないが手が進まない。ゼフもさすがに何も言わず黙々と女達と準備をしている。
壇上には安らかなルド…
「リリア!!おまえルドがわかるんだろ!本当はルドと話せるんだろ!」
礼拝室にいるリリアを見つけてクレアが叫び声をあげた。
「リリア!ルドがわかるんだろ!勇者の子だから力があるんだろ!」
周りの人に取り押さえられる。
「クレアおばさん… リリアにはそんな事無理よ…」リリアが席に座って呟く。
「おまえがルドの居場所を知ってたじゃないか!本当はわかるんだろ!もう一度だけあのこと話をさせとくれよ!勇者だから出来るだろう!」
「無理だよ… ただ、そこに居るって、普段から… 何となく思っただけだよ…」
「リリア!!おまえ出来るんだろ!勇者だから力あるんだろ!」
叫ぶクレアはゼフに慰められ、皆に抱えられながら連れ出されていった。
「リリア、部屋で少し休みなさい、式には呼ぶから」
ゼフがリリアに声をかける。手伝いは要らないらしい… もっとも何も手伝えていない…
リリアは小さく頷くと礼拝室の通路に立ち上がった…
壇上のルドを見ると、ローソクの灯りで今にも起きてきそうな表情をしている。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる