勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
188 / 519

【94.5話】 届いた手紙

しおりを挟む
「ただいま、二人共帰っていたんですね」
コトロが買い物を抱え、バー・ルーダの風に戻ると、ネーコとラビは店内の掃除を済ませたところだった。
コトロは知り合いの吟遊詩人仲間のバンドセッションを手伝い、お店の買い物をしてきたところ。
「リリアとペコとハシェックから手紙が届いているニャン」
配達された手紙をネーコがコトロに差し出す。
「全部同時にですか?」
「リリたん、ちゃんと約束通り定期的に手紙書いて来てるピョン」

リリアとペコの手紙が投函された場所はフリートの帝都からのようだ。
ハシェックの手紙には投函場所が無い、“ルーダリア王国軍西方面統括局”とだけ記されている。
「ひとまず、リリア達は伝説の勇者エジンの都には着いたみたいですねぇ」
コトロが先ず、リリアからの手紙を開封する。ネーコもラビも手紙を覗き込む。

“親愛なるコトロ、ネーコ、ラビ様 あなた方に神のご加護がありますように
 ~要約内容~
昨日、フリートの帝都に到着してます。オフェリア、ペコ、アリス、もちろんあたしも全員、そろって元気。何も心配は要りません。
ここまでの道中、山中の廃寺院を見学しました。
廃寺院の途中、砦に残された骸骨兵士と戦闘になりました。
傷つき倒れるオフェリアの盾になり、リリア必殺の弓で全員ぶちのめしてやったわ。
ペコもアリスも改めてあたしの活躍に感心していたの。
ボッドフォートは緩衝地帯からゾンビだらけで、乗っけからリリアは大活躍。
政治が複雑で領内も治安が悪く、難民を助けながら移動してボッドフォートの都まで無事送り届けました。
フレイラさんってプリーストと共一緒に旅をしました。強烈なターン・アンデットと複数同時治癒が出来る凄い人。
都への途中、オフェリアがトロールにやられたけど、リリアが仕返しにぶちかましてやりました。こっちは勇者よ。
その後、伝説の勇者とメデューサの古戦場を見学して、無事に帝都に入りしています。
ここでは勇者の地位が確立されています。あたしも鼻が高いです。
リリアはオフェリアを支え、ペコ、アリスを助けよくがんばってます。
ご心配なく
 ~以上~
あなたのリリア“

相変わらず、締めくくりがラブレター様式になっている。

「リリたん大活躍ニャン」
「勇者の旅してるピョン」
ネーコとラビの二人は感心している。
「……… ペコとアリスには読ませられませんねぇ」
コトロは呟きながらペコの手紙を開封。

 ~要約内容~
道中色々有り、フリートの帝都に到着しました。
ペコ、ギルマスとしてギルメンの教育が全然出来ない。もっとしっかり勉強させなさいよ。
能天気勇者はマイペース、マイルールで自分の身も守れないのに正義感と親切心だけは強く、他国民の困りごとに首をつっこみたがり付き合わされるこっちは皆不必要な危険に晒される。命がいくつあっても足りない思い。
ホイルテッドではゴブリン退治を買って出て、平和的解決を提案して追い出され、ショックでしばらくリリアが寝込んでいた時に私達と合流。
勇者は理想論じゃないっての。
ボッドフォートではいい気になってイケメンと寝て、悪堕ち勇者になった。悪堕ちよ、悪堕ち。実物を見たの始めて、呆れる。
悪堕ちしてもチンケだったから良いような物の、皆でリリアを見張って解呪の為にシャーマンに連れて行って大変な騒ぎだった。
仲間意識が高くて、責任感もあり、サバイブ術、戦闘、冒険者として及第点付けられるけど、プラベートの無茶をもっと何とかするべき。
~以上~


「……ペコたん、辛口ピョン…」
「…同時に受け取った手紙とは思えない違いニャン」
「まぁ、実際のところはリリアとペコの手紙、フィフティフィフティで合わせてちょっとペコ寄りってくらいでしょうか」
「ハシェックの手紙見るニャン」
「これはダメですよ、リリア本人が一番先に読むものです」

「ところで、この部分何て書いてあるニャン?」
コトロと一緒に手紙を読み返すネーコとラビ。二人の公用語の読み書きはそこそこ程度。リリアからの手紙が届くとプチ勉強会が開かれる。
「リリアの手紙の文法はあてになりませんよ」と繰り返しながらコトロが教える。

「カラン!」ベルが小さな音をたててバーの扉が開かれた。コトロ達が振り返る。
「リリアはまだ旅から戻っていないかな?」他ギルドの男女が立っている。
「約束の今月末には戻るはずですけど、まだですね」コトロが答える。
「そっか、週末ギルドで子供教室を開くけど、弓の上手な人に参加して欲しかったんだがねぇ…」
「戻ってきたらよろしく伝えてね」
男女は言い残して帰って行った。

「今朝もエネコさんがリリんに仕事頼みたいって来てたピョン」
「リリたん戻ってきてないかって結構聞かれるニャン」
「何だかんだ、キッチリ仕事してくれますし、頼みやすいですからね」

「リリたん早く帰って来ないかなぁピョン」
「居ると大変ですが、居ないと静か過ぎますねぇ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...