勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【120話】 出発の朝

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「おはよう、今日も皆さんに神のご加護がありますように」リリアがペコ、アリスとその他のメンバーに挨拶をする。ルーダ・コートの街の城門前、日の出まであと少し。
「おはようございます、ブラックです、よろしくっす」ブラックもリリアに続き挨拶。

先ほどリリアがバー・ルーダの風を出るとバーの前でブラックがすでに待っていた。
「先輩!おはようっす!さあ、ガンガン行きましょう!」
「お!あぁ、はい。今日もあなたに神のご加護がありますように」
ブラックが今日からリリアと一緒に行動するのを一晩寝たら忘れていたリリア、少し慌てて挨拶。
「先輩、俺、先輩の荷物持つっすよ」ブラックが手を差し出す。
「あぁ、いいのよ。役割分担の時は頼むけど、自分のは自分で持つわ」リリア。
二人連れだってペコ達との待ち合わせ場所に向かう。

ブラックは勇者希望の冒険者。冒険者と勇者と何が違うのか…
うやむやな価値観の違い、冒険者の中でもぶっちぎりですんごい奴が周りの連中から勇者だと言われる… ちょっとはっきりしないが…
しかし、リリアがルーダリア王国の公認勇者なのは間違いない。紙面上でもれっきとした勇者。
ブラックにとってリリアは勇者。揺るぎのない勇者。

そのブラック
背が高くがっちりした青年。リリアの背の高さ物差しで言ったらガウムド=アラン>ブラック。
リリアを「先輩」と呼んでいるが年齢はブラックの方が6歳程度先輩。フリートで冒険者ギルドに所属しているので冒険者としても先輩。
勇者に憧れているので、剣盾を帯び、鎧を着用し勇者として王道な装備。
「俺、バトルアックスやハルバードの方が得意っすよ。でも勇者は剣と盾じゃないっすか!」本人談。勇者希望なので当然魔法も出来る。
「物理も魔法もそこそこっすよ、俺、体育会系っす」ブラックは笑う。快活な青年。


「リリア、デッカイのがくっついてきたけど」ペコがリリアの傍らに寄って来た。
「… あぁ… 最近、ご飯美味しくてね。ちょっと太ったかなぁ?おっぱいマスマス大きくなったぁ?」リリアの中ではデッカイ=胸のようだ。
「やだ、あのガッチリボーイよ、今回の治安維持に参加するって聞いてないよ」ペコが目で指さす。アリスも側に来た。
「うん、後輩よ!先輩に対して後輩って言うのよ。なんか… 勇者希望だって、あたしに憧れて、あたしみたいな立派な勇者になりたいって。あたしに追いつきたいだなんていきなり目標大きすぎだよねぇ… まぁ、先輩って後輩に色々教える立場みたいだから、あたし何でも教えるのよ!治安維持活動には参加可能でしょ?… 現地集合でしょ?… 実力不明な素性のわからんやつと行動したらこっちまで危険になる?… 大丈夫だよペコ、リリアが面倒みるわ!」
リリアはニコニコしながら移動の馬車に乗り込む。

「…………アリス聞いてた? リリアが面倒見る奴なんてロクなやつじゃないよね… そもそもリリアが人の面倒見ること事態がデンジャラスゾーンだよね… リリアみたいな立派な勇者?リリアみたいな勇者が世の中に蔓延りだしたら面倒見切れないよね」ペコはアリスを振り返る。
アリスがペコを見る。頷かないけど“そうね”っと同意する時の眼差し。


明後日からリリア達はペコ、アリス、パウロ・コートから集合してくるオフェリアとその他約25名前後の冒険者達と治安維持活動のボランティア。今日はその移動日。
ルーダリア西方は戦争でゾンビ、スケルトン等が増殖中らしい。
そこに夏にかけて植物魔物等も増え、乗じて賊が出没しだした。西の国境付近は軍がいる。
「軍隊が掃除すればいいのよ」リリアが言うと
「戦役指定区域外には魔物や盗賊のために行動しない」と説明された。
ウェスチェスター地区の村が冒険者達の参加を促し、治安回復のボランティアを募ったのだ。
ボランティアだが、国からの助成で撃退スコアシートのポイントは倍になる。
ペコ達に誘われたこともあり、リリアは参加することにした。
「今年は絶対ペコより、スコア稼いでやるから!」リリアの本音はここにあるようだ。
勇者リリア先輩の活動に習ってブラックも参加する。

「フリートで冒険者ギルドに所属していてもルーダリアで活動できるの?」リリアがコトロに聞いた。
「ボランティアは国境を越えて活動できます。成績もつくはずです。が、ルーダリアのスコアがフリートのギルド協会に通用するかは知りません。何かあったらここを仮のギルド活動拠点にしてリリアが保証人になったら良いですよ」コトロが説明する。
「ねぇ、ブラック本人がここに所属したがってるんだから転属させたら?」リリア。
「…… 部屋もいっぱいですし、賃貸を借りたり宿に住みながらやっていけるかわからないですよ。しばらく様子をみたらよいです。 ……基本的にリリアは男冒険者と組むの反対ですし」コトロが転属を拒否。

何だかよくわからないが「先輩!先輩!」とリリアを尊敬しているようだ。リリアは気を良くしている。
「リリアの部屋使う?ブラック」リリアがニコニコしている。
「どこまで能天気なんですか?」
「うゎぁ、リリたん大胆ニャン」
「寿退ギルドも悪くないピョン」
リリアのお気楽発言にその場の全員目を丸くする。
「あは、大丈夫よ。パウリスの腕輪があるし、体が繋がっても心が繋がらなければセーフよ!セーフ!」
リリアはうっふっふと笑いながら手を広げてセーフをしている。
リリアの発送とお気楽加減は完全にアウトである。
「………………」リリアの大胆なアホっぷりに一同絶句。

「俺、自分で何とかするから大丈夫っす!何とかなるっす!」ブラックもニコニコしている。
この二人が一緒で大丈夫だろうか?皆顔を見合わせていた。

まぁ、とにかくボランティアに参加です。
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