勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【166話】 山道の衝撃

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ルーダ・コート街を出発して四日目、リリア達の馬車五両編成となっていた。
結構な部隊編成。

昨晩、ギュインターが準備を依頼したエベント企画ギルドのスタッフと最寄りの村で予定通り合流した。
企画ギルドの代表を中心とし、安全面の作戦はリリアが代表となりその村から塔までと、塔に着いてからの進行をミーティング、夜は小さなフェアウェルパーティを行って解散となった。
今朝はそこのスタッフ達の馬車三台とリリア達の二台の馬車、合計五台の馬車で塔を目指し出発。
パーティーリーダーはコトロだが「戦闘等の野外活動に関して言えばリリアに任せても大丈夫のようですから私は黙っていますよ」と信用しているようだ。
リリアの馬車を隊列の先頭に中三台に合流した馬車、殿にブラック達の馬車が続く。
薄暗い中から出発して草原を横切って山道に入る。
今日の工程は大した距離ではないが、荷物を満載して山道を登るのだ。時間はかかる予想。


リリア達はイベント企画のギルドから現地日程を聞かされた。何と言っても企画としては大掛かりなのだ。リリア達が説明された日程は以下の感じ。
・リリア達が現地入り(今日)周囲と塔内の魔物を掃除(党内の魔物は適当に残す)
・二日目 午前中は魔物掃除と周辺の確認
午後からは荷物等の搬入とスタッフ達の準備開始
・三日目 ドラゴンが来塔 リリア達がドラゴンのお世話担当 
     スタッフは準備
・四日目 ギュンターの愛娘、ヒロインが来塔 リリア達がお世話係
・五日目 ヒーロー役の結婚相手の男性と家族、親族、招待客が来塔
     正午からお婿さんが塔のドラゴンを倒しお姫様を救い出しそのまま披露式
・六日目 式の後片付けとお客様を送ってリリア達も解散
(花嫁、花婿、ドラゴン来塔は変動的)
こんな感じらしい

「今日現地入りですから今日は何も出来ないと思いますけど。明日の一日で塔と周辺を掃除って少し無茶じゃないでしょうか… 明後日にはドラゴンが来てしまうなんて時間を詰め過ぎてます」馬車に揺られながらポロンポロンとリュートを奏でていたコトロが呟く。
「しかたないよ、予算を切り詰めたいって言ってたからこの日程でしょ、何とかなるよ。とりあえず塔の中を安全にしておけば文句はないでしょ。説明を聞いたところそんなに大きな塔じゃないしやってみるしかないよ」リリアはあまり気にしていないようだ。
「まぁ、少数精鋭でバイト代は良いから頑張らないといけませんが…」コトロ。
「リリアちゃんに任せなさいって!そんな事よりも山道に入る前に景気の良い曲を弾いてよ、吟遊詩人さん」リリアはホウキのダカットでリュートの真似事をする。
「リリア、時々リュート演奏の真似事しているけど、楽器はさっぱりだろ、なんか下手糞感がバリバリと伝わってくるぞ」ダカットが笑う。
「生意気よね、リリアが弾く真似をしたらダカットがポロンポロン唄いなさいよね」リリアは口を尖らす。


タワー・オブ・エリフテンのある山へと入った。
エリフテン塔の周囲
山と言ってもそれほど山深いわけではなく少し上がると台地のようになっていて丘というか山というのか… 迷う規模の地帯だ。
この地域から南西に下るとリリアが治安活動を行ったメイレル村から紛争地帯になる。
ヘルメの十字路からエリフテン塔に向かう方角は人口が減り物流も少なくなる。
ボットフォードとダニヤ王国山岳と平野の地帯で自然が豊か、ゴブリン達、オーガ、オーク族の村が多くなる。国境を接する国堺の主張が違い紛争は絶えない。
40年程前まではエリフテン塔にはルーダリアの小隊が常駐していたが、戦争での勝利がきっかけに制権地域が大きく広がり今では軍事施設の意味が無くなったので、塔自体は国の管理の下閉鎖状態である。
物流が少ないので賊は少ないが大型魔物が多く治安は良くない。

馬車がゆっくりと道を上がる。
多少荒れてはいるが軍が使っていただけあって道は整備されている。見上げると木々の間から時々塔の頭が見えている。
ちょこちょこと魔物に阻まれるので馬車を守るために隊列を作っている。
前衛として先行するブラック達三名、その後ろに距離を少し開けて弓のリリア、エルフのロメリオ、そして馬車が五台続く。ついでにネーコとラビもリリアと一緒にお散歩がてら歩いている。

リリアはブラック達の背中を見ながら歩く。木陰は涼しくて気持ち良い。ネーコとラビはロメリオとおしゃべりしながら歩く。恐らく散歩がてら馬車を下りてきている理由はロメリオが大きいようだ。
「リリア!リリア!」コトロがリリアを呼んでいる。
リリアは足を止めて馬車と平行。バックアップできる距離ならどこにいてもよい。
「塔の情報収集? したよ… 村も小さかったし聞く相手なんて限られてたよ。村人
が言うには最近だれも全然塔を使っていないし、塔まで上がっていないみたいだよ。おかしな事件も無いし、付近で盗賊の被害も聞かないから変な輩が無断使用している可能性も低そうね。 子供達が?…遊びに行ったら魔物がいたって?… まぁ、長い事誰も使ってなかったらいそうだよね。ってかたいていいるよね… 覚悟しているわよ」
よくありがちなパターンのようだ。
「塔も大きくはないですが、十階建てでそれなりですし特に二階までは面積もあります、それに塔に付随する寄宿舎等の建物なんかも警戒が必要ですよ」コトロが注意する。
「建物は図で見て把握しいるつもりだけど… いってみないと何とも言えないわよね」リリアはコクコクと頷く。
「なぁ、貴族の娘のお世話って男はダメなんだろ?俺は男だけど大丈夫か?」ダカットが心配している。
「意外な事気にしているのね。大丈夫よ、ホウキに男女関係ないはずよ。オスのホウキとかメスのホウキとか聞いたことないでしょ、それに話さなければばれないし… 話さないの得意でしょ。おかげでリリアは変人扱いよ。それともブラック達と一足先に帰っておく?」リリアはうっふっふと笑っている。
「またそれか!最近はがんばって話すようにしるんだぞ」
リリア達がノンビリ歩いている時だった。

“バキッ!”
空気が一瞬動いたかと思ったらリリアの背後で大きな音がした。
「皆、ストップ!木が倒れてきた!馬車止まって!」
リリアが振り返ると自分達が乗っていた馬車の荷台に木が刺さっている。
リリアは馬車に倒木でも当たったのかと思ったのだ。
“ドス!”
続けざまに大きな音がして今度はリリアの前方に枝の大きいのが倒れてきた!というか地面に突き刺さった。
「うわ!」
ネーコ、ラビ、ロメリオがギリギリ避けた。

「違うぞ!リリア!倒木じゃないぞ!ウッドスティンガーだ」
誰かが叫ぶのとリリアの気が付くのが同時だった
「皆、ウッドスティンガーよ、動くと串刺しにされるわ!動かないで!」
この声で全員一斉に動きを止めた。
ネーコ達は避けたその恰好で固まっている。コトロの乗っている馬車の馬たちが驚いて暴れている。

「コトロ!馬を静かにさせて!」
リリアが頭上を見上げながら叫んだ時だった。
“ドス!”
先のとがった木の幹が落ちてきた…
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