勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【175話】 式からの帰ギルド

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リリア達は馬車でフォート・リングストンベルグ、リングストン砦付近を移動中。
もちろん貴族ギュインターさんの娘さんの結婚式を手伝った後である。
「リングストンの砦はこの辺からが一番良く見えるんだよ。皆さん左手に見えますのがルーダリア王国、難攻不落のフォート・リングストンベルグでございまぁす」
リリアは丘の上を差す。

馬車は地肌の多い丘にゴツゴツとした岩が転がる地帯に入って来ている。
起伏が多く、丘とも谷とも言えない土地に小さな川が筋になって流れている。木々が無いのは砦からの見通しが良いように切られたのだが、度重なる戦で土地が疲弊したせいもあるだろう。
ルーダリア王国内ではトップクラスの大きな砦で城と言われたら納得するような規模だ。
重厚で歴史を感じさせる石の砦、昔ながらの建築で不格好だが今ではそれが風格を出しているように思われる。
観光スポットとは言えないが十分見応えがある風景。

馬車上では…
リリアが護衛席でまるで自分の家でも紹介するかのように生き生きと砦の説明をしている。手綱を持つのはラビ、幌を空けて風通しを良くしてコトロ車掌と護衛の交代役のブラック、気まぐれでたまに手綱を持つネーコとそれを補って手綱を持ってくれるピエンが乗っている。ダカットはリリアの手の中。黙ってじっとしている。もっとも自立行動はできないけど。
リリアはリリアモデルの鎧を着ている。式に出るにあたって見栄えが良い鎧を持って来ていた。会場では誰かに紹介され挨拶をする度に
「あたしリリア、ルーダリア王国の公認勇者しています。これはリアルゴールドとハンズマンが提供してくれたリリアモデルの鎧なの」とかなり宣伝していた。
たしかにこの鎧なら女勇者のイメージにぴったりだ。肩書に弱い貴族は感心していた。
「持ち歩くより着た方が楽ちんね!」とリリアモデル鎧を着て移動している。
今日もだいぶ暑くリリアは胸元にいっぱい汗をかいている。ダカットはリリアの手の中で玉のようになった汗が胸の間に流れていくのを間近で見える。何とも言えない気持ちで黙りこくっている。

「式の準備中ずっと天気が良かったですね。考えてみれば結構その前から天気が続いています。馬車移動中に雨とか嫌ですが、こう暑くなっては、一回通り雨でも降って欲しいですね」コトロも汗を拭う。

「リングストン砦はルーダリアでも歴史のある砦なんだよ。難攻不落の砦。パウロ・コートの街南西側、ルーダ港の北西、ランカシム砦から北側にあって国境が近かったころはこの辺が主戦場でリングストン砦は激戦の中とうとう陥落することなく前線を守り切った砦だって」リリアが得意げに説明している。
「先輩詳しいっすね、トリジョですか?」ブラックが笑う。
「リリアは砦とか大型攻城兵器等にロマンを感じるタイプのようですね。さっきから朽ちた投石機や井闌等を見つけては熱心に眺めていますものね」コトロも笑う。
「今では領土拡大でわずかな見張りを置いているのみですが、当時は兵士千名が入れたとか言います… 千名はどうでしょうか… あの規模なら五百名から八百名と言ったところですか」ピエンが情報をつけたした。
「凄いピョン、上の道は通れないピョン?」大きな麦わら帽子のラビが聞く。
「今でも軍事施設だからね… あんまり近づいたら怒られるよ」リリアが答える。
ネーコは少し顔を出したが「フーン」と言った感じですぐに日陰に引っ込んでしまった。
「この辺は激戦の古戦場が多くて人の魂が残っているせいか、ゴーストやウィルオウェスプの出現も多いんだって。今日泊まる予定の村もウィルオウェスプが度々目撃されるから通称ウィル村って言うんだって。ウィルオウェスプ出るかもよ」リリアが言う。
「別にそんなもの出なくてよいピョン」ラビは苦笑い。


式が終わって片づけ等を終えたリリア達は次の日の早朝、つまり今朝早くエリフテン塔を出発した。ブラックは現地解散してリリア達と行動。今乗車中のメンバーが移動メンバー。

「ね、ここから国境の方にいってみようよ。普段用事がない方面だし、景観スポットと国境と所属あやふやな町があって独特な町らしいよ。このメンバーで旅行することは少ないから皆でもうちょっと旅行しようよ」リリアが言い出した。
「… 気持ちはわかります。私もせっかく出てきたので行ってみたいですが… お店もあまり閉めておけません。まぁ、お店は何とかなるとは言え、この馬車はギュインターさんが用意したもので勝手に日にちを伸ばせませんよ。それにリリアとブラックは良いですが、私はバックアップ、ネーコ、ラビ、ピエンは完全に素人です。この先の治安が悪い方に向かわず、帰路の方向で道すがら観光しましょう」コトロが反対する。
とても合理的は内容で特にメンバーの安全面がかかっている、無理は言えない。
「うーん… わかったよ。じゃぁルートを変えて戻ろう」
ってな訳で今のルートで帰ギルドしている。


「ちょっとここで止めていただいて宜しいですか?ここで少し記事にする挿し絵を描かせてください」ピエンが声をかけた。
「休憩がてら止めましょうか」コトロが許可を出す。
砦に兵士が入っていたころは村があったのだろう。リングストン砦をバックに馬防柵などが朽ちて立っている。攻城兵器が放棄されいかにも古戦場跡の風景。
ピエンがメモ等にペンを走らす間、皆お茶タイム。
「ねぇ!古戦場の挿し絵よりこっちを先に完成させてよ!早く完成をみたいわね」
リリアは何かと言えばピエンが描いたリリアがミーナにまたがる絵を眺めてニヤニヤしている。
「勇者っぽいよね!皆で絵にしてもらって良かった!メッチャ記念になる」
完全にお気に入りのようだ。

タイミング的にブラックが入れなかったのが残念…


リリア達はこの後順調にウィル村に到着。
ここからなら頑張れば明日中にルーダ・コートの街につけそうだ。
ウィル村はかつて登録村だったが今では登録村の基準を満たせなくなっている村。人口が増えて格上げはあっても格下げは珍しく微妙な扱いになっているようだ。
戦線が近かった時の名残が、村の周りに堀と馬返しなどが回らされ、集会所になる建物を中心に円形に人家が立てられている。豊かな土地とは言い難く、家畜の飼料等を生産しているようだ。今まさに飼料作りの最中か村内外で枯草等を束にして干してある独特な風景。

ウィル村の夜
物流の流れが少なく小さな宿屋の粗末な料理だったがリリア達は疲れ様パーティーを行った。
今までは仕事中という事もあり、羽目を外せなかったが今日は気兼ねなく大騒ぎできる。
ルーダの風メンバーとブラックで初旅行もできた。
「あたしギルドメンバーで旅したかったんだよねぇ!ブラックも最近別行動だったけど今夜はお疲れ様ぁ!ピエン、ダカットいえぇい!なかなか外で揃わないメンバーだよ!これにオフェリアとペコ、アリスがいたらなぁ… リリアちゃんと愉快な仲間達のオールスターメンバーよ!とにかく乾杯!後輩君!遠慮なくお肉食べてよ!」
リリアを中心にメッチャ盛り上がるメンバー達。

粗末な食堂でとても賑やかな華のある光景、リリアと皆はとても幸せそうに見えた。
ダカットは時々リリアの手の中で時々テーブルに立てかけられながらこの光景を見ていた。

何故か少し切なさを感じた。
「幸せ過ぎるとそんな気持ちになるのか?」ダカットは呟いたが盛り上がるテーブルでその声に気がつく者はいなかった。
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