勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
360 / 519

【181話】 廃村での死闘

しおりを挟む
“GO”のサインでメンバーが廃村に向かって駆け込む。
クリエイトされた狼ファミリアが数匹、班の先頭を切って走り込む。魔法のトラップに引っかかり弾ける様に消し飛んでいく。ファミリアが消えると魔法使いが次々とクリエイトして狼ファミリアが廃村に、路地に飛び込む。
魔法トラップには魔法のクリーチャーで無理やり発動させて解除していく。
リリアが盾を抱えてみると他の班も同じ手法でトラップを解除している。建物の周囲、通路の奥で大きな音、閃光が走る。ファミリアが弾け飛ぶのはビジュアル的には凄いが魔法の創造物なので消えていくだけ。

人の侵入を感知して廃村に配置されたアンデッド、ゴーレムやスケルトン兵等が反撃を開始。
村内に侵入すると戦闘が複雑になり、侵攻の速度が落ちたが物理と魔法のゴリ押しで突き進んでいく。
「エミリ、通路の奥にトラップ、起動して無効化だ!」
「脇道にゴーレムとスケルトンだ!気を付けろ!」
「範囲の魔法の効かない魔法陣の中に入ったぞ!武器を使え!」

リリアの馴染みのない戦闘シーンが展開されていく。
リリアが普段見る戦闘は物理8割、魔法2割といったところ。物理と魔法50:50の戦闘なんて規模で言ったらリリアの弓とペコの魔法の二人対魔物一体規模の戦闘。
リリアが初めて見る大きなギルドの本格大型戦闘。魔法と魔法、物理と物理、魔法と物理が衝突する。
理解していたつもりだが改めてリリアは目を丸くする。

「リリア!ぼーっとしないで!こっちよ!早く!」アリスが建物の陰からリリアを呼ぶ。
「は、はい。わかった」盾を持って一気に通路を突っ切るリリア。
「アリス、背後からスケルトン…」
「リリア、こっち!囲まれ始める前に決着をつけるの!」
アリスに手を引かれるリリア。
「わ、わかった!」
各班、障害を撃破しながら村の中心部に向かって突進する。

「デスロードと兵士団だ!」
「デスマジシャンだ、火力高いぞ!気を付けろ!」
「皆ストップ!トラップ魔法を解除する」
「ヘンリーが負傷!ビビアン!救護班!こっちへ!」
村内はマスマス熾烈になってきた。高次元の戦いだけに負傷も大きい。

「ギョフ!!」リリアは大声をあげた。
ライトニングがリリアの剣に落雷したのだ。失神しかける。
「リリア、剣を鞘に納めて。一般物理のリリアは鉄を露出していてはだめよ」アリスがリリアを回復する。
各班が村の中心に近づいてきて周囲は命令が飛び交い轟音が響く。
アリスはリリアを伴い班員を背後から回復し続けている。前線は激しい回復と消耗戦に突入。
「ウルグスの小屋まで辿り着いたぞ!」
「囲まれている!時間がないぞ!」
「スペシャルチームはスタンバイ!」
「それ以外の班は周囲を防衛しろ!ディフェンスラインを保て」
「数が多いわ!早く!ウルグスを!」
「ドアを吹き飛ばせ!マーガレット!ベル!扉をぶっ飛ばせ!」
ウルグスがいると思われる小屋まで接近した。
直進してきたので残存兵力に囲まれつつある。
「リリア!準備はよい? 合図と共に小屋に突入よ!」アリスが促す。
スペシャルチームとはリリアの班とリリアとともにウルグスと対峙する一部のギルメンだ。
「うわぁ!凄いよ!怖いよ! 魔法がすごい!」リリアは必死に盾に隠れている。
「リリア、大丈夫よ!しっかり!私が手を握るから合図で突入」アリスがリリアを励ます。
「扉が飛んだ! 突入!突入!」
「早くかたをつけろ!守りきれん!!」

「リリア… いくわよ! 立って! 走って!」
アリスの声が遠くコダマする…

リリアは盾を握りなおすとアリスに手を引かれて走り出した。
頭を下げて盾に身を隠して走る。
戸口はあそこ… しかし、延々の距離に見える…
“父さん、母さん、リリアをお守りください。神よ正しき行いの我らに勝機を”
炸裂音が遠のき、周囲で走る閃光が瞬いている。
アリスは片手をかざしクラウドを追い越し様、治癒魔法をかけている。
そのクラウドは腹部を剣で串刺しにされたまま必死にデスロードに抵抗している。
アリスのもう片方の手はリリアの手首をしっかりと握り、緑とも金色とも言えぬ色に光る。治癒をかけ続けている…
音と共にリリアの頬と耳を何かが切り裂いていったがアリスの治癒で立ちどころに治る。

「リリア… 足元!」アリスが何か叫んだ。
アリスが何かを跨ぐ、続いてリリアもジャンプ…
クラウディアが飛ばされて転倒している…

リリアが見ると戸口はもうすぐそこ。
小屋の中にはさらなる脅威が待っているはずだが、今はそれどろこではない。
周囲は既に大乱戦になっていて、地形を利用して戦ってはいるもののもう防衛ラインが保てない事はリリアでもわかる。
全員死に物狂いで奮戦している。

「リリア!ダッシュ!立ち止まるな! ダッシュ!」
リリアが少し振り向くとペコの口が動いているのが見えた。スペシャルチームの数名が後に続いている。

「ビニュ!」リリアは変な声をあげた。
何かの直撃を感じた…
肩に激痛を感じ盾が弾き飛ばされた。
“アリス!!”
リリアが見ると戸口に向かうアリスから大量の血がビー玉の様になって浮いているのが見えた。
リリアの耳ものとかすめて飛び去って行く…

戸口が真っ黒の口を開けている。
「…… アリス!怖いよ! あたし怖いよ!」
リリアは急に恐怖を感じた。得体の知れない恐怖があの闇の中にあるのだ。リリアの想像できない強敵ウルグスがいるはず…
「リリア、お願い!行って!行って!お願―――い!」
アリスが攻撃を受け泳ぐように倒れるとリリアの腕を強く引っ張った!
リリアは弾かれるように戸口に向かう。
「リリア!私達を信じて!時間無いよ!行ってぇぇ!!」
背後でペコの声。
「リリアぁぁぁぁ!頼んだぞおぉぉぉぉぉ!」
皆が後押しする…

アリスは倒れ込みながら渾身の治癒をリリアにかけた。
リリアは黄金に輝く結界をくぐり暗い闇に飛び込む…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...