勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【214話】 リリアはスナイパー

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リリアはビケットに呼ばれてルーダ港にやってきた。
指定された場所に集合する。
ビケットは港湾の一画にある事務所を借りていた。
リリアが事務所に入るとビケットやブリザをはじめ、十四名の仲間が集っている。
デスクの上に地図が並び荷物の樽や木箱で雑然とした感じがなくもない。
「…ん? …え? ビケット?どうしたのその恰好、転職したの?」リリアはちょっとびっくり、ビケットが商人の恰好をしている。
「俺は今、商人なんだ。以後、作戦中はお互いをコードネームで呼ぶように。リリアはゴーレムだったな、忘れていないな」ビケットが言う。
そうだった、ビケットの作戦にはコードネームがついていたのだ。

ビケットが説明に入る。
「よくぞ集まってくれた我が精鋭たちよ。最近のルーダ港からルーダリア城までの交通事情と強奪事件は皆の知るところだ。まぁ、治安の事は保安部がやるべきことで、金にならない事には興味はない。大小多くの賊がグループ化して荷馬車を襲っているがそのほとんどがパール・ロード東方の森の中を拠点としていてなかなか特定は難しい。しかし、狙い目とばかり賞金首が何人か首領となって仕切っているという確かな情報を得た。Dead or Aliveとして申し分ない。また、犯罪組織を減らせればルーダ港の商工会からもかなりの謝礼が出るうえ、被害の補填に泣く保険ギルドも賞金を出すと言っている。アジトに踏み込んで拉致被害者、行方不明者を発見できればボーナス上積みだ」
ビケットが淡々と説明する。
「そりゃぁ、いいけどよ、ちょっと無理があるんじゃないか?その話を聞いてギルド単位で動いているところもあるようだが、賊の幹部が路上に出てきて襲ってくるわけではないし、潜伏している森は広いし、賊の数も多い、森の中で返り討ちにあっているメンバーも多いぜ。軍隊みたいに大勢雇ったら儲けられないしこの作戦はリスクが高すぎるだろう」オーガのグリモが言う。
「あぁ… それについてはこれから説明する、ここからの話しはくれぐれも他所では口にしないで欲しい」
ビケットは静かに言いながら皆を見回した。
リリアもそれを聞いて頷く。
ビケットが続ける。
「我々は一ヶ月程前から準備を進めてきた。知り合いの商人ギルドに頼み俺とブリザを始め数人が商人となって荷物を買い、出荷する仕事をしてきた。今俺は商人ギルドのお頭ということになっている」
“なるほど”とリリアは思う。猫人のビケットには商人コスプレがしっくりときている。もともと商売に猫人が多いこともあり違和感が無い。ブリザも商人ギルメンの恰好をしている。こちらはちょっと違和感がある。冷酷そうな美人のためか商人コスプレは似合っていないようだ。
「荷物を買い付けながら、高価な商品と武器を出荷すると噂を流している。最近は盗賊側も手口が巧妙化して、町中に手下を潜伏させ予め情報を得て高価な荷物を乗せた馬車を襲ったり、護衛になりすまして行動を筒抜けにして襲っているようだ。我々はこれを逆手に取り、わざと荷物を奪わせアジトまで運ばれたところをサーチ&ファインドの魔法でつきとめる」ビケットが説明する。
「…なるほど… しかし、アジトを叩くのは戦力がいるだろう。騒ぎになれば逃げられるか、周りの別なグループと共闘されるか…」
「勘違いするな。俺達は正義の味方ではない。悪を根絶しようとは思わない。賞金を稼ぐんだ、大掛かりな戦闘をするつもりなどない」ビケット。
「どうやるんだ?」皆ビケットを促す。
「可能な限りスマートにやってもらう。そのためにスナイパーを用意した」ビケットがスナイパーに視線をやった…
「え?… あ、あたし?あたしが狙撃するのね…」リリアが少し驚いて答えた。
一同がリリアを見る…

作戦の概要
作戦名:狂騎士の斧

目的:Dead or Aliveリスト者を複数捕縛、掃討
副目:行方不明者の捜索、拉致被害者を開放
   盗賊を弱体化させる
   以上で街の保安部、家族、商人、保険ギルド等から賞金、礼金を得る

方法
・商人として荷物を買い付け、輸送を行う
・積み荷に高い価値があると街かなで噂を立てる
・積み荷にはロケーションの魔法を付術しておく
・集められたメンバーが商人、馬車手、護衛等に扮し荷馬車を運行する
・街道を外れて支道を村に進み襲われやすい状況を作る
・襲撃されたらわざと負けて荷物を奪われる
 (可能であれば賊を生け捕る)
・サーチ&ファインドの呪文で荷物を追跡しアジトを発見する
・状況の把握と情報収集を行う
・ターゲットを絞りスナイピング等で実行


「それでは役割分担だ」ビケットが地図やボードを見せながら説明する。
ブリザがリリアの責任者となって近隣の村に先回りするようだ。

リリアのお仕事内容
近隣の山林等に潜伏して
・潜伏が気取られないように行動することが大前提
・行先予定の村で付近の地形を早くする
・街道、支道の交通状況、賊の出現情報を把握
・賊が出ても原則的には攻撃禁止
・賊を発見したら可能な限りアジト追跡を行う
・賞金首を見かけたら捕縛、掃討許可
ということのようだ

「わかった、それを必ず毎日ブリザに報告すればよいのね。出来れば夜は村に帰って寝たいけど… あ、日が暮れたら戻っていいのね。そうだよね、がんばったって見えないものね。あと…出来れば、もう一人手伝いが欲しいけど… 木に上がったり、カモフラージュを作ったりするのに一人だと大変だよ。トイレいったりもあるし…」リリアが言う。
「それもそうだな… しかしメンバーは必要最低限だ… ブリザが手伝い… 無理だよな… 現地で村人に頼むのも目立つな…」ビケットが顎に手を当てて言う。
「村のハンターは地形をよく知っているだろうけど… よそ者が狩り姿で山に入るのをあんまり快く思わないよ。ゴブリンの助手でも何でもいいよ。ちょっと荷物を担いで木登りを手伝ったらそれいいけど。森の妖精で森の中では溶け込みやすいし身軽だしちょっと手助けがあったらいいよ」リリア。
「ゴブリンか… 繊細な仕事だから、さすがに… まぁ、急いでどうにかしよう。とにかく明日の朝から出発してくれ」


そんなわけでリリアとブリザは作戦のため翌朝ルーダ港を出発していった。
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